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ヤンゴン市内都市開発(通称Y Complex事業)

プロジェクト名
ヤンゴン市内都市開発(通称Y Complex事業)
概要
Y Complex事業(仮称。以下Y コンプレックス)は、ミャンマーの最大都市ヤンゴンの一等地である軍事博物館の跡地に、大規模複合不動産を建設・運営する開発事業。ミャンマーでの新投資法(2016年10月施行)による第一号案件で、敷地面積16,007.89u、総延床面積92,627.91uに、事務所、店舗、ホテル(261室)、サービスアパート(136室)、駐車場が作られる。2018年8月に着工、2021年の開業予定で建設されている。

ファクトシートはこちら

関連企業
・事業会社 Yコンプレックス社(Y Complex Company Limited)(ミャンマー法人)
Yコンプレックス社の出資者:
80% : Yangon Museum Development Pte. Ltd.(YMD)(シンガポール法人)
YMDは、東京建物株式会社(以下、東京建物)、株式会社フジタ(ダイワハウス工業子会社。以下、フジタ)、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が共同で設立した企業
20% : Yangon Technical and Trading Company Limited(YTT)(ミャンマー法人)
YTTは、ミャンマー法人Ayeyar Hinthar社(アヤヒンター)の子会社
開発・運営会社
設計・施工:株式会社フジタ
プロパティマネジメント・業務受託会社:Tokyo Tatemono Asia Pte. Ltd(シンガポール法人。東京建物の海外子会社)
ホテル・サービスアパート運営会社:株式会社ホテルオークラ(以下、ホテルオークラ)
資金供与先
総事業費は約3億3,250万米ドル(約377億円)の予定で、うち約8割を日本の公的資金や民間が出資するとされている。
・公的資金の関与
国際協力銀行(JBIC):YMDとの間で融資金額約47百万米ドル(2018年12月のレートで約51.7億円)を限度とする貸付契約を2018年12月18日に締結。
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN):YMDに約49.4 百万米ドル(約56 億円)の出資及び約41.8 百万米ドル(約47 億円)の債務保証を決定し2017年7月28日に国土交通省から許可をうける。
・民間銀行
三井住友銀行、みずほ銀行が、JBICと協調融資。協調融資総額は144百万米ドル(JBIC融資約47百万米ドルを含む)
事業の問題点

Yコンプレックスの事業地はかつてジュビリーホールという歴史的な建築物だったが、軍政時代に取り壊され軍事博物館になっていた。事業の環境アセスメント報告書(EIA)に添付された賃貸借契約書には、この土地をミャンマー国軍が所有していると明記されている。また、契約書のパラグラフ5の(f)には、土地の賃料の支払い先として、“Defense Account No. MD 010424”が指定されている。この口座の実質的管理者は不明だが、賃貸借契約書の内容から、YTT社からミャンマー陸軍の兵站総局に対し、事業地の地代が支払われていると考えられる。

このEIA(2019)は、アヤヒンター社のホームページで公開されている。
Environmental Impact Assessment Y COMPLEX PROJECT Dagon Township. YANGON. July 2019.

EIAの4章、4.1 Pre-Project Situation で、YTT社が国防省から土地を借りていることが明記されている。また、土地の賃貸契約は、YTT社のU Ar Yu 氏と、Colonel Aung Min Thein (Officer No. Army 17642), Vice Quarter Master General, Office of the Quartermaster General Commander-in-Chief (Army)との間で交わされている。

EIAには、スコーピング時のステークホルダーミーティングの議事録が掲載されている。参加したジャーナリストからは、およそ4.55億円(2020年12月レートで換算)の利益は軍と国、どちらが得るのか、との質問があったが、企業側が回答した形跡が見られない。

また、ネットメディアのミャンマー・ナウは、2020年5月21日の記事で、YTTの関係者が、同社は年間218万ドル(2020年12月のレートで約2.27億円)の賃料を支払っているが、この賃料は兵站総局に支払っているにも関わらず、軍ではなく政府の一般予算に入っていると確信していると語った、と報じた。だが、ミャンマー・ナウは、2019年度の国防予算にも政府の一般予算にも、その賃料の明確な記載を見つけることができなかった、としている。
Myanmar Japan-backed luxury hotel and office complex will enrich military, says rights group


ミャンマー国軍は過去、民主化運動への弾圧だけでなく、少数民族居住地域における女性への性暴力を含む数多くの人権侵害に関与している。現在も一部少数民族支配地域で軍事作戦を継続し、それに民間人が巻き込まれていることが報じられている。

シャン州北部でも軍事衝突
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20201015_01.html

2021年2月1日の国軍によるクーデター以降、紛争は更に激化し、新たに難民や国内避難民が発生する事態となっている。

実はこういった暴力は、民政化後も続いていた。一般によく知られているのは、2017年8月に特に激化したラカイン州のロヒンギャ・ムスリムの住民に対する、国軍の関与が強く疑われる非人道的行為の発生である。これに関し、2020年1月、国際司法裁判所はミャンマー政府に、集団殺害を防止し、証拠保存措置を講じるよう求める暫定措置命令を出していた。
International Court of Justice, 2020年1月23日Press release
https://www.icj-cij.org/en/case/178

 

このラカイン州の問題については、国連人権理事会の指名した国際的な独立調査団が2018年に出した報告書で、ミャンマー国軍が行った残虐行為は「戦争犯罪と人道に対する罪の両方に匹敵する」と強く非難されている。
“Myanmar: UN Fact-Finding Mission releases its full account of massive violations by military in Rakhine, Kachin and Shan States,” September 18, 2018.
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/Pages/NewsDetail.aspx?NewsID=23575&LangID=E

また、国軍は国家予算以外にビジネスからの収入を多く持つ。同調査団は、2019年8月も報告書を発表し、同国に投資をする海外の企業に対し、国軍とつながるビジネスから手を引くことを提言している。
UN Fact-Finding Mission on Myanmar exposes military business ties, calls for targeted sanctions and arms embargoes. August 5, 2019.
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=24868&LangID=E

国際社会がこのように資金の流れを問題にするのは、ミャンマー国軍が「民政化」後も文民統制を受けていなかったからである。2020年6月10日のミャンマー・ナウの報道は、現行のミャンマーの法において、国防省が国の会計監査の対象外となる問題を指摘している。
Myanmar NOW、2020年6月10日、Junta-drafted law keeps auditor general from investigating military finances
https://myanmar-now.org/en/news/junta-drafted-law-keeps-auditor-general-from-investigating-military-finances

指摘の通り、The Union Auditor General Lawの39条の規定は、国防省には適用されないと明記されている。つまり、ミャンマーの公的な監査機関は、国防予算を監査する権限がない。この根拠になるとみられるのが、2008年に制定されたミャンマーの現行憲法である。憲法20条bには、「軍の全ての業務の管理および裁定において、軍務は独立する権利を有する」、と定めがあり、軍の行動は外部からの監視を受けない体制となっている。
http://www.myanmar-law-library.org/IMG/pdf/constitution_de_2008.pdf

・JBICの情報公開の問題と日本政府の責任

JBICは、2020年6月のメコン・ウォッチの問い合わせに対し、参画企業の商業上の秘密を理由に、事業主体の賃料の支払い者、支払い先を公表しなかった。一方で、その時点で既に複数のオンライン上に公開されていたEIAでは、前述の契約書が添付されていた。JBICは、商業上の秘密を理由に秘匿することで、自ら定めた「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」の情報公開の努力義務を怠っていたと考えられる。JBICはその後、事業者のHPにEIAが公開されたことで、2021年2月には、この契約書の内容を認め、3月に公言している。
第75回財務省・NGO定期協議(2021年3月5日開催)
http://jacses.org/1025/

JBICも企業も、この賃料は国庫に納められたと主張している。だが、これが国防予算に組み入れられていた場合、軍事転用を確認するのは困難であったと考えられる。仮に同国政府、あるいは国軍から軍事的な用途への使用はないと説明があったとしても、軍事行動以外の予算が補填され、同国軍の資金の自由度を増すことに繋がるからである。2017年に人道危機が発生し、国際的な批判を受けている同国に対し、2018年に国軍を裨益する可能性の高い事業に公的資金の提供を決定したJBICと日本政府の責任は重い。また、国土交通省が管轄するJOINは、これまで市民社会の問いに対し、公に意味のある回答を行なったことはない。

・国連の「ビジネスと人権」指導原則に反する投資

Justice for Myanmarは、(1)日本のJBICやJOINという公的機関と民間企業・銀行が、賃料という形で同国軍に直接資金を提供していること、(2) Y Complexを利用する海外の旅行者やビジネスパーソンが、人権侵害を続けている軍に資金が提供されると知らずにここを利用すること、また、(3)関連企業の多くが東京証券取引所に上場していることから、それら企業の株主が、Y Complexが作り出す国軍の犯罪行為をバックアップする国際的な資金網に巻き込まれることになる、と問題視している。
https://www.justiceformyanmar.org/stories/y-complex

ビジネスと人権リソースセンターは、アヤヒンター、 JOIN、東京建物、フジタ、ホテルオークラ、みずほ銀行、三井住友銀行にJustice for Myanmar の指摘を伝え、各企業に回答を求めた。しかし、各企業の回答は、主にミャンマーの法規の遵守を示すのみで(アヤヒンターは2020年12月25日時点で、無回答)、指摘に対する明確な取り組みを回答した企業はない。
ミャンマー現在国連の大量虐殺罪に直面しているビルマ軍が所有する土地でハイエンドの商業開発を進める日本企業

国連ビジネスと人権に関する指導原則では、企業の責任として、「自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処する」そして、「たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める」ことが求められている。

Yコンプレックスに参画する企業はクーデター以降、関係者の安全確保のためとし、建設を中止し、土地の賃料の支払いも行なっていないとしている。

東京建物お知らせ (2021/5/31)
https://pdf.irpocket.com/C8804/M6bm/QyTP/bR2I.pdf
フジタお知らせ (2021/7/21)
https://www.fujita.co.jp/information/ミャンマー国ヤンゴン市における事業について.pdf
衆議院 第204回国会 財務金融委員会 第12号(令和3年4月20日)議事録
https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009520420210420012.htm

だが、事業を継続すれば、国軍が実効支配を強めている中、賃料の支払いが国軍を利することは避けられない。

提言
・日本政府への提言
・ 日本政府(財務省と国土交通省)は本事業の融資資金がミャンマー政府のどの予算に組み込まれているかの回答を、ミャンマーの関係機関に求め、明らかにする努力を続けるべきである。また、JOIN の出資を取り下げ、かつ JBIC の融資を停止すべきである。
・日本企業への提言
・ 東京建物、フジタは本事業と国軍との経済的関係を絶つべきである。それが不可能な場合、事業から撤退すべきである。
・ ホテルオークラは、自社の SDGs への取り組みに照らし参画を再検討すべきである。
・ みずほ銀行、三井住友銀行は、自らの人権方針に照らし、融資を停止するなど、必要な措置を取るべきである。

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