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国軍の政商、日本企業の事業にも関係

メコン河開発メールニュース2022年10月20日

 

ミャンマーからは海外企業の撤退が続いています。9月には、カタールの通信会社であるオレドーのミャンマー事業がシンガポール企業に売却されるという報道がありましたが、ミャンマーの『イラワディ』誌は、売却先企業の実際の所有者に注目し報道しています。

同誌の記事によると、ゾーウィンシェイン氏というミャンマー国軍に近い政商が、通信事業の実質的な事業の所有者になるとのことです。同氏は、アヤヒンター(エーヤーヒンター)・ホールディングス社も所有していますが、この会社は、 Yコンプレックス事業(ヤンゴン市内での複合不動産開発・運営事業)で、ミャンマー国軍が所有する事業用地を借り、土地の賃貸借契約を結んでいるヤンゴン・テクニカル・アンド・トレーディング社(YTT社)の親会社です。

Yコンプレックス事業は、東京建物株式会社、株式会社フジタ(ダイワハウス工業子会社)、官民ファンドの株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がYTT社と共同出資で進めている事業ですが、ミャンマーで2021年2月にクーデターが起きる前から、土地の賃料が国軍に渡っているのではないかと問題視されていました。

記事では、アヤヒンター・グループと国軍との人や企業関係の近さを、さまざまな事例を上げ説明しています。また、「経済が後退している昨今、これほど大規模なテレコム事業に投資するのは非常にリスクが高い。表向き、公式にはアヤヒンターが買ったのであっても、裏に他の投資者がいるかもしれない」との他企業の会長の発言を紹介しています。 Yコンプレックス事業においては、同グループが国軍の代理会社として機能している、と指摘しています。

Military Crony Linked to New Ownership of Ooredoo’s Myanmar Unit
https://www.irrawaddy.com/news/burma/military-crony-linked-to-new-ownership-of-ooredoos-myanmar-unit.html


以下にその記事を和訳でご紹介します。

***
国軍の政商がオレドーのミャンマー事業を事実上所有
『イラワディ』 HEIN HTOO ZAN 記者
2022年9月12日

カタールの通信会社であるオレドーのミャンマー事業は、ゾーウィンシェインという政商に事実上所有されることになった。ゾーウィンシェインは、2011年から16年初めまでミャンマーを統治していたテインセイン率いる国軍の代理政府で大臣を務めていた将軍の養子である。

オレドー・グループは9月8日、ミャンマーでの通信事業をナイン・コミュニケーションズ社(Nine Communications Pte. Ltd.)に5億7600万ドルの企業価値で売却すると発表した。

ナイン・コミュニケーションズはリンク・ファミリー・オフィス社(Link Family Office)とニャンウィンが所有する企業で、シンガポールを拠点とする。

リンク・ファミリー・オフィスの詳細は不明だが、投資企業管理局のデータによれば、ニャンウィンはミャンマーに拠点を置くホライズン・テレコム・インターナショナル社(Horizon Telecom International Company Limited)の取締役である。同社のほか2人の取締役はネネフルワンモーとイェミャッソーである。

ネネフルワンモーはアヤヒンター・コンストラクション社(Ayeyar Hinthar Construction Co. Ltd)の取締役社長で、イェミャッソーはホライズン・テレコムの社長だったことがあり、A銀行(A Bank)の取締役社長でもある。

A銀行とアヤヒンター・コンストラクション社のウェブサイトによれば、両社はゾーウィンシェインが所有するアヤヒンター・ホールディングス社(Ayeyar Hinthar Holdings Company Limited)の事業である。

ゾーウィンシェインはソーマウンの養子である。ソーマウンはテインセイン率いる国軍の代理政府で重要な大統領府付大臣の1人だった。退役した少将であり、元法務総監でもある。

テインセイン政権は2016年に国民民主連盟(NLD)が率いる文民政府に引き継がれた。ソーマウンは2019年に他の退役将軍らと共に国民政治民主党(DNP)を設立し、2020年の総選挙に出た。ソーマウンは以前の軍事政権指導者であるタンシュエの側近の1人で、2008年憲法を起草した国軍委員会の委員でもあった。

ゾーウィンシェインと氏が所有する複合企業に詳しい実業界の仲間によれば、アヤヒンター・グループの資本は主にテインセイン政権で副大統領だった元将軍のティハトゥラ・ティンアウンミンウーから来ていた。2006年の設立時には、同グループはティンアウンミンウーの息子で元大尉のナインリンウーの資産だと広く報じられた。ミャンマー連邦商工会議所連盟の執行委員がこのことを確認した。ナインリンウーと妻のフニンイーモンは、英国の金融制裁対象リストに掲載されている。

2011年に準文民政権が生まれていわゆる民政移管が始まると、民間セクターの透明性が推進され、アヤヒンター・グループはアヤヒンター・ホールディングスになった。同社はゾーウィンシェインが所有し経営する複合企業として知られている。

このような混沌とした時期に、ゾーウィンシェインが所有する複合企業が5億ドルをかけてオレドーのような通信会社を買収することができるのを不思議に思い、背景に未知の、あるいは隠れた投資者がいるのかもしれないと疑うミャンマーの主要な実業家もいる。

「経済が後退している昨今、これほど大規模なテレコム事業に投資するのは非常にリスクが高い。表向き、公式にはアヤヒンターが買ったのであっても、裏に他の投資者がいるかもしれない」と、ミャンマーの自動車産業の企業グループの会長を務めるビジネスマンは述べた。

アヤヒンター・グループはミャンマー国軍との複数の事業に関与している。悪名高い事業の1つはヤンゴンのYコンプレックス事業で、同グループは国軍の代理会社として機能している。

Yコンプレックスはミャンマー国軍所有の土地に建設されており、ジャスティス・フォー・ミャンマーが一般公開した土地賃貸借契約によれば、賃料は代行会社[訳注:アヤヒンターの子会社であるYTT社]を通じて兵站局に渡る。

軍事政権がクーデターに対する抗議者を弾圧するために実力行使を続けるなか、フランスのエネルギー大手であるEDFは2021年3月20日、人権侵害についての懸念を理由にミャンマーのシャン州での15億ドル以上相当の水力発電事業を停止した。

EDFは人権団体に対し、下請業者の活動も含めてシュエリ第三水力発電所の建設を停止したと伝えた。EDFが建設を率いる同発電所は、設置出力が671メガワットで、日本の企業[訳注:丸紅]と、ミャンマーのアヤヒンターと共同で進められていた。

「今、ミャンマー市民には選択の余地がまったくない。この国にいる事業者はどれも軍事政権が所有しているか、いまだに全面的または事実上軍事政権に管理されていて、今は私たちのプライバシー権を守ろうとする事業者もいないから」と、デジタルフリーダムを求めて活動する詩人であり活動家でもある女性は述べた。

(翻訳:メコン・ウォッチ)

 

参考

メコン・ウォッチのYコンプレックスのページ
http://www.mekongwatch.org/report/burma/ycomplex.html

ロイター「焦点:日本の官民連合、ミャンマーで不動産開発 土地賃料が国防省に」(2021年3月25日)
https://jp.reuters.com/article/myanmar-politics-japan-idJPKBN2BH0ZT

AFP「丸紅などの企業連合、ミャンマーのダム事業中断『人権尊重』が再開条件」(2021年3月22日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3338011

(文責 メコン・ウォッチ)

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