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トゥンヒンブンダム

プロジェクト名
トゥンヒンブン水力発電プロジェクト(Theun-Hinboun Hydropower Project)
所在地
ラオス中部・ボリカムサイ県およびカンムアン県
実施機関
トゥンヒンブン電力会社(THPC)。ラオス電力会社(60%)、ノルディック電力会社(ノルウェー、20%)、MDX社(タイ、20%)による合弁企業。
資金供与
アジア開発銀行(ADB)から6000万ドル、ノルウェー政府、民間企業の投資および銀行融資
状況
1998年より操業中。現在、THPCは2010年までに、発電量を現在の210メガワットから250メガワットに拡張する計画について調査を実施中。

トゥンヒンブン水力発電プロジェクトとは

トゥンヒンブンダムは、ベトナム国境からラオスに流れるナムトゥン川の中流域に建設され、1998年から操業している出力210メガワットの水力発電専用ダムです。電気のほとんどは隣国のタイに輸出されています。ラオス国営電力公社も出資した国際的な企業体が開発主体となった民活方式(BOT)のダムで、日本が最大資金供与国となっている国際開発金融機関であるアジア開発銀行(ADB)が6000万ドルを援助しました。
このダムは大きな貯水池を形成しない「流れ込み方式」で、発電後の水はヒンブン川という別の河川に転流され、ナムトゥン川下流には毎秒2トンの水しか流れない設計になっています。タイやノルウェーのNGOは、着工前から、流量が激減するナムトゥン川下流の漁業への影響や、増水するヒンブン川の農業への影響等をADBに指摘していました。

環境影響評価をめぐる矛盾

ナムトゥン川やヒンブン川の水量の劇的な変化による環境影響や漁業への影響が指摘されてきたのにもかかわらず、ノルウェーのコンサルタント会社のノラッド社が自国のODAで実施した環境影響評価では、影響はほとんどないと結論づけたのです。これをもとにADBは融資を決定しました。一方、この環境影響評価報告書が、ODAを供与したノルウェーで問題になり、政府は調査のやり直しを決め、ノルプラン社という別のコンサルタントを雇いました。しかし、ADBは、ノルウェー政府の決定を無視して事業を始めたため、ダム建設を進めながら、一方で環境影響評価のやり直しが行なわれる異常事態となったのです。
ノルプラン社による環境影響評価報告書は、ノラッド社の分析を完全に否定し、深刻な漁業被害、農業被害、住民移転の恐れを指摘しました。しかしADBは、環境社会影響は起きないという先のノラッド報告書を尊重して、事業を計画通り進めました。この間、タイ、ノルウェー、アメリカ、それに日本のNGOなどが、ADBに対して、ノルプラン報告書に基づいた対応策を講じるよう何度も求めましたが、全く考慮されませんでした。

NGOの調査で問題が明らかに

ダム完成直後の99年3月に、ラオスで長年活動してきたアメリカ人NGOスタッフが、ダム周辺の村々で無許可の実地調査を行ない、深刻な漁業被害や川岸の畑の被害などを確認して、ラオス出国後アメリカで報告書にまとめて公表しました 。ADBは、すぐに現地調査を行ないましたが、「アメリカ人NGOスタッフに何を話したか覚えていない」という村長の声を紹介して、これはNGOによるでっち上げだと反論したのです。その後、何回かミッションを送ったADBは99年末に出した評価報告書 で、ようやくNGOスタッフが指摘した問題のほとんどを認め、「環境に優しいダム」と宣伝されてきた事業は、一転して53村2万人に影響を与える問題プロジェクトとなったのです。

未だに解決されない環境社会影響

ダムの完成後、水が転流されるヒンブン川やその支流では、洪水被害が深刻化しています。ダムの完成までは、長くても15〜20日程度だった洪水が、最近では20〜30日も続くようになりました。洪水によって、漁獲量の激減、川岸の野菜畑の損失、交通への影響などが起きるようになりました。現在でも多くの環境社会影響が未解決のまま残されています。

○ ナムハイ川の河岸浸食とヒンブン川の土砂堆積
発電後の水は、ナムハイ川を通って、ヒンブン川に放流されます。このナムハイ川では、水の勢いが増したことで川岸の土砂が大量に削られています。ダムの完成後、川の地形は劇的にしてしまいました。
 一方、ナムハイ川の川岸から削られた土砂は、ヒンブン川に流れ込み、川底に堆積するようになりました。それによって、ヒンブン川だけでなく、支流のナムパテン川やナムパカン川などで、水の流れが妨げられるようになり、ダム建設前に比べて、洪水の規模が大きく、期間も長引くようになりました。

○ 農業への影響
ヒンブン川やその支流沿いの村では、ダムの完成後、洪水の期間が長くなったことで、雨季の水田耕作を続けることが難しくなっています。多くの村人が、水田耕作を放棄し、禁止されている高地での焼畑耕作に移行しなければならない状況が生まれています。

○ 漁業への影響
ナムトゥン川の下流のナムカディン川やナムハイ川やヒンブン川の下流では、ダムの完成後、漁獲量が30〜90%も減少していると報告されています。

○ 健康被害
洪水の期間が長引くようになったため、周囲の村の衛生環境が非常に悪化するようになりました。洪水の間、人や家畜の排泄物が適切に処理されずに、村の中や周辺に溜まった水の中に漂ったままになってしまうことが原因です。ヒンブン川沿いのパクヴェン村では、洪水の間、汚水の中を歩かなくてはいけなくなるため、足に発疹が出るなどの健康被害が報告されています。

○ 家畜への影響
 同じパクヴェン村では、水牛や豚などの家畜が病気で大量に死亡したという被害も報告されています。実施企業のTHPCは、洪水と家畜の病気は関係ないと主張していますが、洪水被害の深刻化が、家畜の衛生環境や栄養状態に悪影響を与え、病気の原因になっているという可能性は否定できません。

○ 不十分な補償策
 ダムの被害は、THPCが見積もった被影響住民の数よりも、多くの人々に及んでいます。当初の見積もりでは、増水の影響を受けるとされ、補償の対象となっていたのはヒンブン川沿いの村だけした。しかし、最近の調査で、トゥンヒンブンダムの操業以来、ヒンブン川の支流のナムパテン川やナムパカン川の周りでも、洪水被害が深刻化するようになっています。この地域では、多くの村人が水田耕作ができなくなるなどの被害を受けていますが、こうした損失に対する補償は全く行われていません。

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