ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >ミャンマー軍の航空燃料調達に関与する銀行について
メコン河開発メールニュース2025年7月24日
ミャンマーでは、ミャンマー軍による空爆が続き、子どもを含む民間人が多数犠牲となっています。
2024年6月、ミャンマーの人権状況に関する国連特別報告者は、現在はUABと称するユナイテッド・アマラ・バンクをミャンマー軍に航空燃料を提供する企業に支払いを行う金融機関の一つと特定しました。UABは、クローニー複合企業である IGE Group of Companies とも密接な関係があります。2022年にユーロマネー誌がUABに最優秀銀行を授与したことを批判するプレスリリースで、ミャンマーの団体ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM)は、両者の関係を詳しく説明しています。
日本の企業では、ジェーシービー(JCB)が子会社を通じ、このUABをアクワイアラ(加盟店契約会社)としています。そのため、メコン・ウォッチを含む日本とミャンマーの7団体は、JCBに対し人権デューデリジェンスの実施状況やUABとの関係の見直しについて2025年7月17日付で問い合わせをしました。JCBの回答については返信の有無を含め公表する予定です。
以下、上述のプレスリリースの和訳です。
原典:Justice For Myanmar Press Release “Euromoney Gives Excellence Award to Myanmar Military Linked United Amara Bank,” August 16, 2022
https://www.justiceformyanmar.org/press-releases/euromoney-gives-excellence-award-to-myanmar-military-linked-united-amara-bank
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ユーロマネー誌がミャンマー軍と関係のあるユナイテッド・アマラ・バンクに優秀賞 2022年8月16日
ユーロマネー誌は、ミャンマー軍と関係のあるユナイテッド・アマラ・バンク(UAB)にミャンマーの「最優秀銀行」賞を授与した。同誌は英国を拠点とする銀行・金融メディア会社である。
ユーロマネー誌の姉妹誌であるアジアマネー誌もUABに、ミャンマーにおける「最優秀国内銀行」「ESG面での最優秀銀行」「中小企業のための最優秀銀行」を授与した。
UABは、クローニー複合企業である IGE Group of Companies と関係がある。IGE Group of Companies の核となる実体である International Group of Entrepreneurs Co. Ltd. は2022年2月21日にEUにより制裁を科された。
EUは制裁を科す理由として次のように述べた。「2017年のラカイン州での『掃討作戦』に関連してIGEがミャンマー軍(タッマドー)に財政支援を行い、それを通じてロヒンギャ住民に対する深刻な人権侵害に加担した。IGEはまた、タッマドーやその所有企業と関係のある複数の事業や企業に財政面で参加したことを通じてタッマドーに間接的な財政支援を行った。ゆえにIGEはタッマドーを支えており、タッマドーから利益を得ている」
IGEの所有者はネーアウンで、兄のモーアウンはミャンマー海軍の司令官である。ネーアウンの父親であるアウンタウンは故人だが、前の軍事政権で閣僚を務め、強硬論者として悪名高く、「暴力と抑圧と腐敗を蔓延させた」ことを理由に2014年に米国に制裁を科された。
ウィキリークスによって公開された2008年の米国大使館公電は、ネーアウンと別の兄のピーアウンを「台頭しつつあるクローニー」と呼び、二人が「一家の人脈と、軍事政権との密接な関係とを利用して莫大な資産を築いた」と述べた。
ミャンマーの企業登録によれば、ネーアウンと妻のキンモーニュンは2022年3月8日まで UAB Bank Limited の唯一の所有者だったが、同日、株式をミョーアウン所有の Future Growth Investment Co. Ltd. と、エイエイスウェ所有の Capital Link Investment Co. Ltd. という2つのペーパーカンパニーに譲渡した。
Future Growth Investment と Capital Link Investment はどちらも2022年3月1日に設立された。
ミョーアウンとエイエイスウェは、これら二社以外にミャンマーで現在登記されている、あるいは過去に登記されていた企業の取締役の一覧には掲載されていない。ミョーアウンは、ネーアウンのいとこで陸軍大佐でもある人物と同一の可能性がある。ミョーアウン大佐は、2016年にシャン州北部で拘束されていた村人5人の殺害に関与して軍法会議にかけられ、またIGEの子会社の経営者であると報告されていた。
会社の提出書類によれば、ネーアウンはEUがIGEを制裁対象に指定してから4日後の2月25日にUABの取締役会を離れた。それまで、ネーアウンはUABの会長を務めていた。
EUがIGEに制裁を科した直後にUABが再編されたことは、UABとIGEとネーアウンとが互いに関係がないように見せかけて制裁を逃れる試みであるように見える。
UABは、共通の取締役を通じてIGE グループと結びついたままである。もっとも重要なのはIGEグループのCEOであるタンウィンスウェで、彼は所有権再編後もUABの取締役を務めている。タンウィンスウェとネーアウンは、EUに制裁を科された International Group of Entrepreneurs Co. Ltd. の取締役で、2人のほかに取締役はいない。
UABのまた別の取締役であるタンジンは今でも、UABのインフラ開発子会社である Future Creator Group Construction の取締役の一人であり、2022年初めまでは IGE Land の取締役でもあった。
ミョーアウンとエイエイスウェは代理株主で、ネーアウンがUABの支配権を保持している可能性が高い。ネーアウンの支配はIGEを通して行使される可能性があり、その場合はUABもEUの制裁の対象となる。
またアジアマネー誌は、KBZグループのグループ企業でクローニー銀行であるKBZにもCSR賞を授与した。KBZは、英国・米国・EUの制裁対象である軍所有企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)と関係がある。KBZは、その慈善事業部門である Brighter Future Foundation を通じ、2017年のロヒンギャに対するジェノサイドの支援のためミャンマー軍に多額の寄付を行った。
国連のミャンマーに関する独立事実調査団は、KBZが人道に対する罪に直接かつ重大な貢献をしたことについて刑事捜査が行われるべきだと勧告した。
ジャスティス・フォー・ミャンマーのヤダナーマウンは次のように述べる。「その事実を隠そうとする試みがあったが、UABは明らかにネーアウンのIGEグループと関係がある。IGEグループは、ミャンマー軍とその所有企業との取引から莫大な富を築いた大規模企業であり、ミャンマー軍の組織的な腐敗から利益を得て、戦争犯罪人の懐を肥やしている」
「IGEがロヒンギャのジェノサイドに関与し、人殺しをする軍と経済関係を持っていることは、最近のEUによる制裁対象指定も含めて十分に認められている」
「ユーロマネー誌がUABに『ミャンマー最優秀銀行』を授与したことは許しがたいことである。そのような授与は、EUが制裁を科している企業と深い関係を持つ銀行の評判ロンダリングになる」
「政治囚支援協会によれば、ミャンマー軍による未遂クーデター以降、軍政は2,100人以上を殺害し、1万5,000人以上を逮捕した」
「軍政による国際犯罪は、軍政にその恐怖作戦の費用を賄う資金源を提供するIGEやKBZ、その他のクローニー企業によって可能になっている」
「ユーロマネー誌とアジアマネー誌は責任ある行動をとり、UABとKBZに授与した賞をただちに取り消すべきである」
(翻訳・文責:メコン・ウォッチ)