ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >ミャンマーの港湾事業に関し、官民ファンドJOINの回答
メコン河開発メールニュース2025年6月6日
メコン・ウォッチを含む日本とミャンマーの7つの市民社会団体(*1)は、2025年3月19日に、上組、住友商事、豊田通商、また政府が出資する官民ファンドである海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、経済産業省所管の日本貿易保険(NEXI)に対し、ティラワ多目的国際ターミナル事業への関与について懸念を表明し、ミャンマー軍が起こした未遂クーデター後に適切な人権デューデリジェンスを実施したかを問う書簡を送付しました。JOIN以外からは、回答期日の4月18日までに回答がありました。
この事業で上組は、ミャンマー港湾公社から運営権を取得したのち、JOIN、住友商事、豊田通商による合弁企業STJ Thilawa Terminal Co., Ltd. およびミャンマー企業である K Efficient Logistics Consortium Company Limited と共にティラワ多目的国際ターミナル社(TMIT)を設立し、TMITが2019年5月よりターミナルを運営してきました(*2)。 K Efficient Logistics Consortium Company Limited は、エバー・フロー・リバー(EFR)グループに含まれます。
クローニー(政商)企業であるエバー・フロー・リバー(EFR)グループは、米国、英国、EU、カナダ、オーストラリアに制裁を科されているミャンマー軍所有企業、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)との関係が証明されています(*3)。国連のミャンマーに関する独立事実調査団(FFM)は、いかなる企業もMEHLやその関連会社に関与するべきではないと勧告しています。
私たちへの回答で、上組、住友商事、豊田通商は、ティラワ多目的国際ターミナル事業から撤退し、精算手続きを始めたと明らかにしています。これら3社はまた、人権を保護し、撤退に際する従業員の転職などの支援を含めて従業員の安全を確保するための措置を講じたとも主張していました。しかし、ティラワ多目的国際ターミナル事業において付保を行ったNEXIは、この事業を「負の環境影響が最小限か、または全くない」ものに分類したこと、したがって環境レビューを実施しなかったことを回答しています。
JOINから期日までに実質的な回答がありませんでしたが、私たちが以下の、
【プレスリリース】制裁対象のミャンマー軍所有企業と関係する日本の企業、政府貿易保険機関、官民投資ファンドはミャンマーの港湾事業から責任ある撤退を (企業・NEXIからの回答のリンクを含む)を5月14日に公表した後に、5月16日付で、企業3社と同様の回答を送付してきました。
これまで、市民グループからの問合せに対しJOINが具体的な回答をしてこなかったことと比べると、一定の進歩と言えるかもしれません。
しかし、この回答でJOINは、事業からの撤退が、OECD多国籍企業行動指針や国連ビジネスと人権に関する指導原則を含む国際的な人権基準を満たしているかについての詳細を明らかにしていません。 また、事業に関与する全社に共通することですが、この事業の資産がどのように処理されるかや、コンセッション契約解除に伴う違約金の支払いによりミャンマー軍政が利益を得るのか、また事業からの今後の収入がミャンマー軍と関係のある事業体に流れるのをどう防ぐのかについては、なんら説明をしていません。
私たちは引き続き、JOINおよび関係企業に対し、人権保護義務を果たす形でティラワ多目的国際ターミナル事業から完全に透明で責任ある撤退を行い、ミャンマー軍政にいかなる金銭的利益も与えないと確約することを求めます。
メコン・ウォッチはこれまで、JOINに関して所管する国土交通省への情報開示請求など、様々な働きかけを行っています。詳しくは以下をご覧ください。
官民ファンドJOIN事業の環境社会配慮情報の不開示取り消しを求め、国土交通省を提訴(第1回)
第2回
第3回
第4回
第5回
(*1)アーユス仏教国際協力ネットワーク、アジア太平洋資料センター(PARC)、国際環境NGO FoE Japan、ジャスティス・フォー・ミャンマー、日本国際ボランティアセンター(JVC)、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、メコン・ウォッチの7団体。
(*2)https://www.kamigumi.co.jp/english/news/2019/000193.html
(*3)https://www.justiceformyanmar.org/stories/who-profits-from-a-coup-the-power-and-greed-of-senior-general-min-aung-hlaing
(文責:メコン・ウォッチ)