ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ミャンマー >ミャンマー中部大地震、企業寄付の行き先には注意を、と市民グループ
メコン河開発メールニュース2025年4月28日
3月28日にミャンマー中部で大地震が発生してから、1カ月となります。1000kmにも及ぶザガイン断層が動いたことによる今回の大地震は、広範な被害をもたらしました。
2021年2月にクーデターで実権を握ろうとしたミャンマー軍は、人々の抵抗によりその支配地域を失い、今や軍の支配下にあるのは国土の2割程度と見られています。劣勢に立たされたミャンマー軍は、紛争地帯だけでなく、民主派勢力や少数民族抵抗勢力の支配地域に空爆を繰り返してきました。信じがたいことですが、それは以下に紹介しているように、今回の災害の中でも続けられています。
ミャンマー中部での地震発生、軍が阻む救援活動 メコン開発メールニュース(2025年4月3日)
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20250403_01.html
今回の地震に対し、日本から多くの支援がミャンマーに寄せられています。しかし、支援にはミャンマー特有の問題があることに注意が必要です。以前から知られているように、ミャンマー軍は援助を自分たちの都合のいいように利用するからです。
ミャンマーの活動家グループ、ジャスティス・フォー・ミャンマーは国内外の企業を通した寄付が軍を利することを懸念し「軍政やクローニーへの寄付は、地震による被害を悪化させるだけである」とし警告を発しています。以下に、そのプレスリリース「地震後、企業が少なくとも5,580万ドルをミャンマー軍政に寄付 残虐行為の資金となるおそれ」の翻訳を紹介します。
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「地震後、企業が少なくとも5,580万ドルをミャンマー軍政に寄付 残虐行為の資金となるおそれ」
ジャスティス・フォー・ミャンマー プレスリリース 2025年4月12日
ミャンマーで起きた地震による被災者の救援を目的として企業から寄付された少なくとも5,580万ドルが、実際には、今も続く国際犯罪と広範な苦難に関してミャンマーの軍政を助けている可能性がある、とジャスティス・フォー・ミャンマーは警告する。
マグニチュード7.7の大地震がミャンマーと近隣諸国を襲った後、軍政は多国籍企業やミャンマーのクローニー(政商)から寄付を募っている。
寄付をした多国籍企業には、日本の大手小売チェーンであるイオンのほか、中国の複合企業であるCITICグループや中国石油天然気集団公司(CNPC)が含まれる。いずれも軍が支配するルートを通じて寄付を行った。
「イオン1%クラブ」は4月2日に、軍政支配下にある東京のミャンマー大使館に1,000万円(7万ドル)相当の支援物資を寄付した。 イオンはミャンマーで複数の事業を行っており、企業登録情報によればそれらの事業は今も進行中である。
物議を醸すミャンマー・中国間の石油・ガスパイプラインを運営するCNPCは4月8日に、軍政が支配するマンダレー管区域政府に5万ドルを 寄付した。
もっとも多額の寄付は、4月1日に軍政が開催し 軍政のメディアで宣伝された式典 で、ミャンマーのクローニーらが行ったものである。ミャンマーのクローニー企業や業界団体は、現金で1,040億チャット(軍政の参考レートによれば4,970万ドル)に加え、124億チャット(590万ドル)相当の物資を、ミンアウンフラインを含む軍政高官に直接渡した。
ジャスティス・フォー・ミャンマーの調査によれば、寄付を行ったクローニーには、KBZ銀行のジンリンアウン、シュエタウン・グループのアウンゾーナイン、IGEのネーアウン、マックス・グループのゾーゾー、CB銀行のキンマウンエイ、アウンミントゥー・グループのフラミョー、スーパー・セブン・スターズ・グループのミンゾーテインが含まれる。10億チャット(47万6,000ドル)を寄付した武器ブローカーのトゥー・グループが投稿した画像によれば、寄付者たちは国家統治評議会のレターヘッドとミンアウンフラインの署名の入った証書を受け取ったようである。
軍政と関係のあるミャンマー商工会議所連合会(UMFCCI)も、ミャンマー石油貿易協会、ミャンマー食用油業協会、ミャンマー米穀協会など同様に軍政と関係のある業界団体と共に、軍政の国家災害管理委員会に現金と物資を寄付した。同委員会の委員長は、ミャンマー軍を率いる戦争犯罪人のソーウィンである。
軍政トップのミンアウンフラインと序列二位のソーウィンは、国際刑事裁判所の捜査の対象となっている。またアルゼンチンの連邦刑事裁判所は、ロヒンギャに対する犯罪について二人に逮捕状を出している。
軍政は民間の金融機関や国有のミャンマー経済銀行を利用して資金を集めている。日本では、軍政はミャンマーでも操業する日本の多国籍銀行である三菱UFJ銀行の口座を通じて 直接の寄付を集めている。
ミャンマーでは、KBZやCB、アヤ、そしてヨマ・ストラテジック・ホールディングス所有のウェーブ・マネーなどの民間金融機関も、軍政への一般からの寄付を集めている。
地震によって広範な破壊がもたらされたにもかかわらず、ミャンマー軍は残酷な空爆を続け、人道面の大惨事を悪化させている。軍が4月2日に宣言した停戦は翌日に破られ、軍政は致命的な攻撃を 再開した。
国民統一政府(NUG)の人権省によれば、3月28日の地震以降、4月9日までに92回の空爆や砲撃が行われ、それによって72人の民間人が死亡した。これらの攻撃の多くは、地震の影響を受けているマンダレー管区域やザガイン管区域で行われた。
ミャンマー軍が人道支援を武器化していることが報道によって裏付けられている。軍は、災害支援者や医療従事者を攻撃の標的にしたり 監視 したりし、 報道や 通信に厳しい制限を課し続ける一方で、自らの利益のために救援活動を 妨害し、物資を 没収し、不当に利用している。
今回の自然災害は、すでに非常に深刻だったミャンマーの危機を悪化させている。ミャンマーでは軍による2021年2月の未遂クーデター以降、 350万人 以上が避難を強いられている。
4年以上前から、ミャンマー各地の前線で活動する人道支援者や医療従事者は、ミャンマー軍の支配下にない地域においても、命懸けで不可欠な支援を提供してきた。ジャスティス・フォー・ミャンマーを含む260以上の市民社会団体は、軍政を通さず、NUGや民族抵抗組織(ERO)や市民社会のネットワークと連携し、コミュニティ主導の団体や前線の支援者を通じて援助を届けるよう、国際社会に求めてきた。
このような状況にもかかわらず、企業は軍政への寄付を続けている。軍政がこの自然災害を利用して国際犯罪による作戦を強化する中、軍政やクローニーへの寄付は、地震による被害を悪化させるだけである。
企業は、国際犯罪に加担したり関係したりしないようにデューデリジェンスを行わなければならない。軍政への寄付は、それが不注意によるものであろうと、政権に取り入って商業的利益を得ようとする意図的な試みであろうと、人道に対する罪や戦争犯罪に加担する危険がある。
NUG によれば、4月7日現在、地震による死者は3,550人を超え、4,689人以上が負傷している。
ジャスティス・フォー・ミャンマーは企業に対し、「害を与えない」ことを含む人道原則に沿って、ミャンマーの人びとの意思と人間性を尊重する人道的方法を支持するよう求める。
ジャスティス・フォー・ミャンマーのスポークスパーソンであるヤダナーマウンは次のように述べる。
企業には、その寄付が重大な国際犯罪を犯している軍政を支援しないようにする法的、道義的責任がある。
ミャンマーのクローニーは長年、ロヒンギャのジェノサイドが起きた際も含めて、「援助」の名目で軍に資金を提供し、軍政による残虐行為に加担してきた。今や多国籍企業もこれに加わり、殺人的なミャンマー軍に支援と正当性を与えている。企業の動向は注目されており、軍政による犯罪を手助けしたことが判明すれば、責任を問われなければならない。
ミャンマーの人びとは、テロリスト的なミャンマー軍政によって引き起こされ、先月の壊滅的な地震によってさらに悪化した複数の危機に苦しんでいる。この地震も、今では軍政によって政治的、軍事的利益のために利用されている。
人びとは、今回の地震や、軍による攻撃の継続、そして軍による違法な未遂クーデターが引き起こした経済危機の影響が増大していることに対して、援助を切実に必要としている。
国際社会は、援助をもっとも必要としている人びとに、戦争犯罪や人道に対する罪を犯している側ではなく、信頼され、責任能力があり、独立した現地のアクターを通じて援助が届くよう、緊急に行動しなければならない。
(翻訳・文責:メコン・ウォッチ)