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ラオス・ダム決壊から4年、届かない救済とダムへの新たな不安

メコン河開発メールニュース2022年8月2日


メコン河の支流、ラオスとカンボジアを流れるセコン川水系に建設中のセピアン・セナムノイ水力発電ダム(以下XPXNN)の補助ダムDが、2018年7月23日に決壊してから4年が経過しました。

この事故により、下流のアッタプー県サナームサイ郡の19村が浸水、うち6村が水とともに流れてきた膨大な土砂によって壊滅状態となりました。メコン・ウォッチが現地から入手したラオス・アッタプー県の2018年7月31日の報告によると、6村の被害者は1,611世帯7,095名、また同年10月のビエンチャン・タイムスの報道では、農地に被害を受けるなどした住民は14,440名に上っています。甚大な被害を受けた上記6村では71名が死亡し、まだご遺体が見つからない方もいます。被災者のほとんどが家と家財、全ての財産を失い、避難所生活を強いられてきました。また、水はカンボジアまで達し、多くの被害を出しています。

事故後の状況については、こちらをご参照ください。
セピアン・セナムノイ水力発電ダム
http://www.mekongwatch.org/report/laos/laos_xepian-xenamnoy.html


事故から4年に際し、国連の人権特別報告者ら人権の専門家は7月22日付でプレスリリースを発表しました。


Lao dam disaster: UN experts decry lack of progress for survivors four years on
(ラオスのダム事故: 国連専門家、4年を経ても被災者救済に進展なしと非難 2022/7/22)
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2022/07/lao-dam-disaster-un-experts-decry-lack-progress-survivors-four-years

このリリースで専門家は、「多くの人がまだ生活に適さない仮設住宅に住むのみならず、ラオス政府や関連企業が約束した補償は遅延、減額、あるいは全く提供されていないなど、被災者は恒久的な解決策の見通しが立たないままになっている」と指摘、ラオス政府と企業に説明を求めています。また、ラオス国内で人権擁護者が逮捕されていることにも触れ、政府に対して苦情を訴えることが政治的リスクとなり、被害の救済が進みにくい社会状況についても指摘しています。

更に恐ろしいことに、複数ある補助ダムのうち決壊したダム以外の2つも崩壊の危険を有すると警告しています。

国連の専門家の指摘に関連し、その具体的な状況はラジオ・フリー・アジアの報道から伺うことができます。報道によれば、700軒建設予定の移転住宅が2021年に完成予定だったものの、未だに目標数に達せず、住民から不満が出ているとのことです。この移転住宅建設は新型コロナ感染拡大の影響を受け更に遅れており、2025年までずれ込む模様です。また住民が失った資産の補償も、一部は支払いが終わっていない状況といいます。更に、取材を受けた現地のNGOは、提供されている被災者向け農業支援が住民の利益になっておらず、仕事を探して村を離れる若者が多い、とも話し、被災住民が事故後から一貫して困難な状況に置かれていることを伝えています。

Four years after Laos’ worst dam catastrophe, survivors still live in limb
(ラオス最悪のダム大災害から4年、不安定な状態におかれる生存者 2022/7/23)
https://www.rfa.org/english/news/laos/pnpc-4-07232022091740.html

 

XPXNNは韓国企業、タイ企業、ラオス国営企業の共同出資によって進められてきたBOT(build-operate-transfer)事業で、企業が32年間建設・操業した後、ラオス政府に移管されます。発電能力は410メガワット、電力の大部分をタイに輸出するもので、既に商業運転が始まっています。

関連企業:
合弁会社:Xe-Pian Xe-Namnoy Power Company (PNPC)

PNPC出資企業:
SK建設 (韓国)
韓国西部電力(KOWEPO・韓国)
Ratchaburi Electricity Generating Holding (RATCH・タイ)
Lao Holding State Enterprise (LHSE・ラオス)

事業にはタイの銀行団が融資を行なっていますが、そのうちアユタヤ銀行は三菱UFJフィナンシャル・グループの銀行です。つまり、事業には日本の資本も関与していることになります。これら企業と資金提供者は、被災住民の救済をラオス政府に丸投げせず、積極的に関与する責任があります。しかし、それは十分果たされてきたとは言えません。

7月中旬、ラオスでは、別の水系にある建設中のナムトゥン1ダムの堤体の横に漏水が起きている、とSNSに投稿され拡散、本流メコン河を挟んだ対岸タイ側で大きく報道されました。タイの政府機関は、ナムトゥン1ダムの放水によってメコン河流域が洪水に見舞われることはないと説明していますが、SNS上では市民から強い懸念が示されていました。

ナムトゥン1ダムにはタイのElectricity Generating Public Company Limited (EGCO社)が出資していいます。同社は、ダムは国際水準で建設されており異常はなく、拡散したような水の流出はダムが貯水を始めた際に見られる一般的な現象だ、と説明しています。

ナムトゥン1ダム漏水、EGCOはダムの構造に問題はないと指摘
(ターンセタキット・タイ語 2022/7/18)
https://www.thansettakij.com/general-news/533048

気候変動対策のクリーンなエネルギーとして水力発電は注目されていますが、大型の水力発電ダムは川の生態系に大きな負の影響を与えてきました。それに加えてメコン河流域では、地域住民の間でダムの安全性への不安も大きくなっています。このEGCO社には、日本の東京電力と中部電力が出資するJERAと三菱商事、九州電力が経営参画しています。

(文責:メコン・ウォッチ)

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