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サルウィン川ダム>タイのクーデター後も進む計画【賛同署名募集】 

メコン河開発メールニュース2007年2月23日

メコン・ウォッチの松本です。

メコン河と並ぶ東南アジアの国際河川サルウィン川に、ビルマ・タイが共同して 進めているダム開発についての最近の動きです。

前回のメールニュース(2006年11月11日付)では、タクシン前政権が始めたタイ 国外でのエネルギー開発事業の必要性について調査が始まり、サルウィン川ダム 開発に関しても、ピヤサワット・エネルギー大臣がこれを見直す発言をしたとお知らせしました。その後の動きをメコン・ウォッチの秋元由紀がまとめました。

なお、タイや現地で活動するNGO連合体『サルウィン・ウォッチ』は、ダム開発 が進んでいる状況を受け、2007年2月28日を国際行動日と決めました。ビルマ人 活動家らが中心となり、タイに対しサルウィン川ダム開発への協力をやめるよう 求める抗議行動や集会、署名運動が日本を含め世界各地で開かれる予定です。日 本でも、ビルマ市民フォーラムが、タイ政府への国際賛同署名を求めています。 賛同受付の締め切りは2月26日となっていますので、是非以下のサイトで詳細を ご覧下さい。

署名への協力のお願い(ビルマ情報ネットワーク)

また、サルウィン川ダム開発の問題点につきましては メコン・ウォッチのサルウィン川開発のページをご参照下さい。


2006年9月19日にクーデターが発生、10月初めにスラユット暫定内閣が発足した。

暫定政権はタクシン色を一掃するため、タクシン政権の政策の見直しと人事の大 幅刷新を行った。その一環としてタクシン政権が開始したタイ国外での開発事業 の調査も始めた。

暫定内閣のエネルギー大臣に就任したピヤサワット氏は、国家エネルギー政策を 大幅に転換する意向を示し、サルウィン川での水力開発を先送りにして代わりに ラオスからの電力購入の拡大をめざしていくと述べた。氏の発言どおり、12月18 日にタイ政府はラオス政府と覚書を交わし、ラオスから購入する予定の電力を従 来の3000メガワットから5000メガワットに増やした。

ダム建設が計画されているサルウィン川上の4地点はカレンなどの民族が多く住 む地域にある。ビルマ軍政は住民に対して村の焼き討ち、略奪、強かん、殺人、 強制移住、強制労働などの人権侵害を行っているため、地域からは数十万人の難 民や国内避難民が出ている。ダム計画地周辺では既にビルマ軍部隊が増強されて おり、開発が進めば住民はダムによって家や農地などの生活基盤を失うだけでな く、ビルマ軍によって侵害行為を受け、一帯からさらに多くの難民や国内避難民 が出ることが懸念される。しかしピヤサワット氏がビルマでの水力開発を見直す ことを示唆した背景に、周辺住民に及ぶ悪影響についての懸念があったとは考え にくい。

ピヤサワット氏は1994年から2000年までエネルギー省の前身である国家エネルギー 政策局(NEPO)の局長を務めた。局長時代、ビルマ沖の天然ガス田からタイにガ スを輸送するヤダナ・パイプラインの建設を強力に支持した過去がある。カレン やモンなどの民族が住むビルマ南部を横切る同パイプラインの建設に関しては、 警備を担当したビルマ軍部隊が周辺住民を強制的に移住させ、部隊の警備作業な どのための労働を強制するなどすさまじい人権侵害を起こした。ピヤサワット氏 は当時、エネルギー源として天然ガスがもっとも望ましいとし、反対運動を押し 切ってパイプライン建設を実行させた。

また、タイに電力を輸出する目的でラオスで建設・計画中のダムについても、住 民の移転や生活手段の喪失など多くの懸念点が指摘されている。以上のことから、 ピヤサワット氏がサルウィン川ダム開発を見合わせる発言をしたのは、ビルマの 政治状況やダム開発よる周辺住民や環境への悪影響を考えてのことではなかった はずだ。

サルウィン川でのダム建設計画が振り出しに戻ったのではないかという憶測が飛 び交っていた頃、タイ発電公社(EGAT)は2006年11月1日にチュラロンコン大学 の環境研究所と契約を結び、同研究所にサルウィン川のハッジー地点の環境社会 影響評価(EIA)の実施を委託していた。EIAの実施期間は11月1日から15か月で、 EGATによれば、EIAは天然資源環境政策計画局が水力開発事業に関して要件とす る内容を含むことになっており、EIAが導く結論や提案する対策を考慮した上で さらなる施工可能性調査が行われることになる。

また同11月17日にはEGAT理事会がEGATインターナショナルの設立を承認。EGATイ ンターナショナルは海外での電源開発を実施するためのEGATの民間の子会社で、 ハッジーダム建設にも関与すると見られている。さらに11月末にスラユット首相 がビルマを訪問した際にはピヤサワット大臣も同行し、ビルマ側とハッジー地点 の開発での協力の続行や天然ガス開発について話し合った。最近では2月20日に はタイの発電大手、ラチャブリ・エレクトリシティ・ホールディング(RATCH) のナロン社長が「EGATが望むなら、ハッジーダムにも投資する用意がある」と発 言している。

ハッジー周辺ではビルマ軍が増強され、タイ国境からハッジーまでの道路建設も 始まっている模様だ。2007年1月には測量技師らが現地で調査をしたという報道 もあった。これらの状況から、サルウィン川に計画されている4つのダムのうち、 少なくともハッジーダム建設の準備はタイでの政変後も進んでいることがわかる。

【参考資料】

- “Unplugging Thailand, Myanmar energy deals,” アジア・タイムズ、2006 年11月13日

- “Thailand ready to pursue Myanmar energy investment,” MCOT News, 2006年11月23日

-EGATからLiving River Siam(タイのNGO)への手紙(2006年12月25日付)

-“Surveying resumes at Hutgyi site,” ミャンマー・タイムズ、2007年2月7日

-“Energy Company Moves Ahead on Burma Dam Projects,”イラワディ、2007年2月22日

【これまでの動き】

- 2005年5月:EGATとビルマ電力省が覚書に署名、サルウィン川などの5か所で共同で水力発電を行うことに合意

- 2005年12月:サルウィン川のハッジー地点を最優先で開発するMOAに署名、2007年末に建設開始をめざすとする

- 2006年6月: EGATが中国のシノハイドロと覚書に調印、ハッジー地点の共同開発を約束

- 2006年11月:EGATがハッジー地点についてのEIAを委託

- 2007年2月28日:サルウィン川ダムに反対する国際行動日

 

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