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【公開質問状】タイ・マプタプット工業団地をめぐるジェトロ現地事務所の発言について 

2010年3月16日

タイ・マプタプット工業団地産業公害に関する日本貿易機構(JETRO)現地事務所の発言をめぐり、住民グループが日本側がタイ政府に凍結解除の圧力をかけているとして反発、日本大使館宛ての書簡を提出したことについては、3月10日付メールニュースでお伝えした通りです。

JETROは高い水準の環境社会配慮ガイドラインを有しており、この策定プロセスにメコン・ウォッチも参加してきました。
http://www.jetro.go.jp/disclosure/environment/

同ガイドラインでは、貿易・投資促進事業における環境社会配慮の基本方針が盛り込まれ、JETRO自身の事業、企業の取り組みの支援の二つの側面から、現地における人権や社会配慮などを確保していくことをうたっています。

このような背景を踏まえ、メコン・ウォッチは本日、JETRO理事長宛てに、現地事務所発言の真意を問う質問状を発出しました。


2010年3月16日

日本貿易振興機構 理事長
林 康夫 殿

タイ・マプタプット工業団地をめぐる貴機構現地事務所の発言について

拝啓 時下益々ご清祥のこととお慶び致します。日頃より私どもの活動につきご理解ご協力を頂きありがとうございます。メコン流域における環境および開発の問題に関して現地の市民社会とともに活動を行っており、かつ貴機構の環境社会配慮政策に関心を有している日本のNGOとしての立場から書簡を提出させて頂きます。

昨年、タイのマプタプット工業団地の産業公害に関して、タイ憲法にのっとって新規事業を凍結するとの司法判断が下されました(注1)。その後、タイの複数のメディアが、日本貿易振興機構(JETRO)の現地事務所などがタイ政府に対して、「マプタプットの問題を早期に解決しなければ日本の投資がタイから逃げて行きかねない」と発言していると報道しています(注2)。被害住民たちは、こうした発言がタイ政府に凍結解除を要求する不要な圧力となり、根本的な問題解決にとって有益ではないと反発し、日本大使館宛ての書簡を提出しています(日本語訳添付)。

この問題の根底には、急激な工業化にともない悪化の一途をたどる東部ラヨン県マプタプット村と近隣一帯の環境汚染問題があります。住民たちは十数年前から大気や水汚染による環境・健康被害を訴えてきました。住民の視点からすれば、昨年の判決は、司法がようやく自分たちの主張に耳を傾けてくれたことを意味し、政府がこの問題に対して徹底的に取り組むことを切実に希望しています。

私たちは、貴機構の環境社会配慮ガイドライン策定プロセスに参加し、貴機構が質の高い強固なガイドラインを採択されたことを高く評価しております。同ガイドラインの精神に照らせば、タイ政府に対してマプタプット工業団地の汚染問題の徹底的な解決を求め、そのために協力するというのが貴機構の果たす役割ではないかと思料するだけに、報道が事実であれば、貴機構現地事務所の発言は、日本企業の利益すら代弁しておらず(注3)、不適切ではないかと考えております。

このような背景を踏まえ、@前述の貴現地事務所のご発言の真意、Aマプタプット工業団地の公害問題の解決に向けて、現環境社会配慮ガイドラインに照らした貴機構のご見解――についてお伺い致したく、公開の書面にて照会させて頂きます。ご回答をいただければ幸いです。

敬具

特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ
代表理事 土井 利幸
〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル2F
Tel: 03-3832-5034, Fax: 03-3832-5039
E-mail: info@mekongwatch.org

cc:ジェトロ総務部 環境社会配慮審査役殿
ジェトロ環境社会配慮諮問委員会 委員各位

 

(注1)2009年9月29日、タイ・中央行政裁判所が東部にあるマプタプット石油化学工業団地で76件の新規事業(投資総額120億ドル)を凍結する仮処分を下しています。タイ憲法(2006年改定)67条2項は、地元住民に多大な影響を与える開発事業に対して、環境影響評価(EIA)、健康影響評価(HIA)、公聴会、独立専門機関による意見表明の機会を経ない事業実施を禁じていますが、76事業はこうした手続きを踏んでいないと判断されました。その後、タイ政府や事業者の訴えで、一部事業の凍結は解除されたものの、依然50件以上の事業が処分を受けたままで、タイ政府は67条2項を実施する法整備を急いでいます。

(注2)JETRO山田宗範ASEAN・南アジア担当主席が、「タイ政府がマプタプット危機を2、3ヶ月以内に解決しなければ信頼に傷がつくだろう」などと発言したと報じられております(地元英字紙『バンコクポスト』2010年1月7日付「Jetro seeks quick resolution」など)。

(注3)企業が長期的な経済活動を行うためにも、政府が産業公害を克服するために徹底的な取り組むことは不可欠であると考えるためです。

添付:在タイ日本大使館宛 東部住民連合要請書簡(2010年2月18日付)和訳


 質問状の内容のPDF版はこちらから参照できます。

 


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