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環境と人々の生活のために:メディアプロジェクトについて

 

ラオスのテレビ放送


メコン・ウォッチはラオスの地方テレビ局に対し、環境に関するドキュメンタリーの制作支援を行っています。テレビ局と仕事というとさぞや大事業と思われるかもしれませんが、ラオスでのこの活動は大変小さく地道なものです。
ラオスの全17県には、国立テレビ局の出先機関として各県にテレビ局が設置されており、中央から放送を中継するとともに、独自の放送枠も持っています。しかし、ほとんどの県TV局は予算と人材の不足から、独自の番組制作は非常に少ない状況です。また、放送電波の届く範囲は県内20-80%でしかないうえ、一般のラオスの人たちが見ているのはニュースや政府広報が主な自国の国営放送ではなく、娯楽性の高い隣国のテレビ番組、ラオス語と言語的に近いタイ語の放送です。人々がニュース以外の自国の放送を見る機会はほとんどない、というのがラオスの現状と言っていいでしょう。また最近では、ベトナム語や中国語の衛星放送も一般家庭で簡単に受信できるようになっています。

 

事業の始まり


この事業のパートナーであるコーディネーターのPさんはラオス国立テレビ局記者を経てNPO活動に入り、農村開発のための映像制作を担当し、各地に赴いて技術指導を行っていました。メコン・ウォッチは2000年にこの事業に協力していましたが、彼が家庭の事情で所属していた団体を離れたため、後任がおらず事業を中断していました。Pさんはフリーランスで仕事をしていましたが、かつて一緒に仕事をした県TV局のスタッフたちが、意欲があるのに思うように制作ができない現状を変えたいと常に気にかけていたそうです。Pさんはたまたま参加したセミナーで、メコン・ウォッチのメンバーと交流のある日本人の友人と再会、新しいプロジェクトの構想を話しました。その方がメコン・ウォッチに彼の熱意を伝える長いメールを書いてくれたことで、彼の消息と次の活動計画を温めていることが分かったのです。

 

カメラの無いテレビ局



ラオスの放送局

事業計画をたて助成金を獲得し、本格的に活動を開始したのは2004年、中南部の4県が参加して事業が始まりました。当初、参加者は研修中に年4−5本の制作を行うという計画を立てましたが、私たちはそんなに順調にはいかないだろうと予想していました。研修と指導は行うとはいえ、実際に取材をして制作する人はラオスの公務員である局のスタッフ。しかし、この国では公務員が生活に十分な給与を国から受け取っていません。多くの人が副業をするか、農業との兼業で生計を立てており、本業であるはずの公務員の仕事をする時間は限られています。その上、基本的にどの県も機材と人材は圧倒的に不足しています。プロジェクト再開時、コーディネーターのためにビデオカメラを1台購入する予定だったものが、ビデオカメラの無い県まであったため、急きょタイで中古カメラを数台購入して提供しました。

初年度は1県あたり1年1作品を目指して活動を始めたところ、事態は予想外の展開となっていきました。開始から数か月で最初の作品が出来上がっていったのを皮切りに、制作は順調に進んでいきました。
しかし、撮影は予算的にも時間的にも下見ができないことが多く、これ以上そぎ落とすところがない程ぎりぎりの状況で進んでいます。事前リサーチはスタッフの個人的な知見を用いるか、電話取材ですませます。公共の交通機関も少ないラオスでは移動も困難。車両のある局は少なく、バイクを二人乗りして取材に行くこともあります。雨季には村に入る道が冠水することもしばしばです。


車が通れるか歩いて確認

そんな中、今まで制作した映像は、「ブン・バーン・ハオ(私たちの郷を見る)」というタイトルのもと、各県で放送されています。現在まで約60本の作品のストックが出来上がりました。放送日はそれぞれの県で異なりますが、週1,2回放送されています。ただ、このペースで放送すると当然数が足りません。各県で映像を交換していますが、再放送を繰り返しており、局にはしばしば新しい番組が見たいという視聴者の投書が届いるそうです。

 

ラオスの抱える環境問題とは?


人により理解の程度に差があるとはいえ、日本では環境問題といえば公害が一番身近なものではないでしょうか。また、地球温暖化のような大きな現象も関心の高い環境問題になってきました。ラオスの場合、環境に関する問題は、自然資源とその持続的な利用という課題が身近な問題です。人口の8割が農村で暮らし、自然の恵みに頼る自給自足に近い生活のため、ラオスの人々にとって環境が変わることは、入手できる食物の変化と直結しています。
中南部4県の制作した作品でよく取り上げられるテーマは、水棲生物や植物、そして嗜好品として人気の高い昆虫の過剰採取の問題です。元来、村落では自分たちの食べる分だけを取ってくれば事足りましたが、最近の現金経済の浸透と道路の改良で、人々はより遠くの市場へアクセスできるようになり、よりたくさん自然資源を利用する必要に迫られています。これが、もともとあった持続的な資源利用を崩しています。人々が便利な生活を求め活発な経済活動をし、また将来のために子供たちを学校に行かせることが、資源の枯渇につながっているのです。ある村人は「市場は『満腹』することを知らない」と言っていましたが、まさに現状を言い当てています。
しかし、このような状況を改善するための有効な規制や管理は、地域の人たちの中から生まれなければ意味を持ちません。そこで制作した作品では、具体的な解決策を示すのではなく、問題を提起し地域の人たちに「このままでいいのですか?」と呼びかけるスタイルが多くなっています。上からの押し付けや禁止ではなく、まずは人々に考えてもらいたという思いからです。
一方で、ダムや鉱山の開発事業による影響も、ラオスの中での大きな環境問題となってきています。しかし、その表現には大きな制約がかかります。私たちの活動でも、ダム建設による川の汚濁の問題を取り上げたことがありますが、内容でダム開発の是非には言及していません。国の政策に批判的と取れるような意見を表明することは、タブー視されているからです。
しかし、ラオス国内でも徐々に、急激な開発に対する懸念の声や環境破壊への危惧が広がっています。ラオスがより良く発展していくために、こういった問題を国内で議論して解決していけるようなる必要があると私たちは考えます。そのためにはまず、情報を正しく伝えることが重要です。正負の面を併せ持った情報発信が正当に評価されれば、環境問題により積極的に取り組める気運が生まれ、ラオスにとってどの事業が本当に必要な開発なのか、ということが冷静に議論できるようになると期待しています。

 

「高い関心」と難しい評価


この事業は環境問題がテーマですが、地域の名産品などを通して問題を扱う映像が多くあります。ラオスの人たちは、自国の情報をテレビから知ることは非常に少ないのです。自国を知るという面からも、映像に対する関心は高いためだと言います。一部の県では、隣国タイの視聴者からも感想が届けられています。しかし、県テレビ局のスタッフも、自分の身の回りの人たちからの反応で視聴者の意見を知る程度で、どのくらいの数の人たちが番組を視聴しているか、ということが分かりません。視聴率の調査はもちろんなく、電波が届いている範囲が正確に調査されているわけでもないので、それを推測することすら難しいのです。
外部からの資金提供を受け新しく事業を開拓するためには、一定水準の客観的な指標は不可欠です。このままではいけないという声はラオス側にもあり、中部のサワンナケート県では、携帯電話のショートメッセージを利用した視聴者からの声を受ける事業を企画していました。しかし、局長が病に倒れ事業を進めるタイミングを逸し、未だに実現できていません。他にも、学校などを対象とした社会調査も検討課題として挙がっています。ですが、どの企画も実現するまではもう少し時間がかかりそうです。

 

放送と配布の組み合わせで成果を広める


様々な制約から、ラオスの放送は全国でみることはできません。電波が届かない遠隔地にいる人にこそ映像を見てもらいたいと考え、コーディネーターと相談し、2008年から教育機関や遠隔地で事業を行っているNGOにビデオCDの形で映像を提供しています。このビデオCDは教材としての引き合いもあります。現在、情報文化省の子供文化センター(日本の児童館のような施設)などで、子供たち向けに上映もされています。

また、ラオスが多民族国家であることに配慮し、映像の一部を少数民族の言語に翻訳しています。2008年には、アカ語、モン語などに翻訳しました。北部山岳地で暮らすアカ族は、女性はもちろん、男性でもラオス語の読み書きができる人が非常に少ないのです。そのため、外部から得られる情報も非常に限られています。ここで、エイズ予防活動をするNGOからの要請で、保健衛生に関する短い広報映像も合わせて数本作成し、スタッフが村を訪問する際、発電機とテレビを持ち込み村で上映しています。


映像を見る子供たち


村での上映風景


村での上映風景


村での上映風景

 

新たな参加者への支援


2006年北部のボーケオ県とルアンナムター県が新たに参加6県で制作を行いましたが、2007年に日本経団連自然保護基金からの支援が終わったことを機に、6県への直接支援は行っていません。参加各県は既に一定水準の作品を制作する技術を獲得した、と判断しています。現在はコーディネーターがある県と制作を行い、完成した映像を他県にも配布する形に事業を変更しています。制作は実地研修も兼ねています。2009年は新たにルアンパバン県が制作に参加、イオン環境財団の支援を受けメコン河での川海苔採取と上流(中国)のダム開発の影響についての映像を制作しました。ルアンパバンは町ごと世界遺産となった場所で、観光地として発展を続けています。しかし、急激に増える観光客に対応できず、ゲストハウスやレストランからの排水がメコン河を汚染しているという問題が顕著になってきました。同県TV局ではこの事業への参加をきっかけに、引き続きこのように県内で起きている新しい問題を提起していく方針です。

 

継続への課題


直接的な支援が終わってからも、中南部の4県と北部の2県では番組枠を残し放送が続いています。最近、映像の提供だけを受け、放送を始める県もあります。しかし、前述のように予算や人的支援の不足で新規の制作は多い県で年に3,4本、少ないところでは1本という状況が続いています。
今後、この立ち上がった小さな芽を育てていけるのか、課題は山積しています。まず、カウンターパートが公務員であるため、せっかく技術を身につけたスタッフが人事異動で別の部署に移ってしまうことがあります。また最近、民間企業からの広告という形で制作支援の打診がありますが、そのほとんどが清涼飲料水とビールの販売会社。番組の性質上、現金収入の少ない農村の人々の消費をあおるようなものとはしたくないというジレンマにぶつかり、簡単に広告を受けることもできません。テレビ局の予算が増える兆しもまだないようです。
メコン・ウォッチも、制作を継続的に支援できるよう募金活動を始めました。必要額が集まるには程遠い状況ですが、ラオス側が安定した制作を行えるようになるまで、工夫しながら支援を継続していく予定です。

 

>>オンライン寄付サイトGiveOneのご協力をいただいています

>>今まで制作した作品

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