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Date:  Mon, 01 Nov 2004 09:53:44 +0900
From:  Satoru Matsumoto <satoru-m@msi.biglobe.ne.jp>
Subject:  [MekongWatch]メコン電力網>タイ産業界は反対
To:  news@mekongwatch.org
Message-Id:  <20041031011134.CAF6.SATORU-M@msi.biglobe.ne.jp>
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メコン・ウォッチの松本です。

メコン河流域国では、アジア開発銀行(ADB)が中心となって、電力と道路のネッ
トワーク作りが進められています。電力網の整備では、通常はADBが支援できな
い軍事政権下でのビルマ(ミャンマー)や、中国雲南省のメコン河本流ダムも含
まれます。

メコン地域や国際的なNGOは、電力網整備が前提としている各国のダムによる環
境社会被害ついて、ADBが全く頓着していないことを批判してきました。

一方で経済的な面からの批判もあります。以下はFT誌の今年初めの記事ですが、
重要な問題提起をしていると思います。

メコン・ウォッチボランティアの栗林健太さんの翻訳です。

****************

国際経済:アジアのエネルギー共有案はコストにつぶされる
ファイナンシャル・タイムズ誌
2004年2月5日

ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟する10か国すべてを結ぶ電力供給網を作る
という壮大な計画は、少なくとも今後10−20年間は、物理的にもまた象徴として
も事実上無くなった。

この地域でのエネルギー供給量を増やす必要があることについて疑うものは誰も
いない。しかし、地域の専門家は長距離の電力輸送は工業化がさらに進まない限
り財政的に実現できないと言う。

地元の計画者たちは、西洋式の広い地域を結ぶ供給網でのエネルギー売買を支持
している。そのための2020年に向けての基本計画は昨年完成した。しかし今年は
断片的ないくつかのプロジェクトが進められるにすぎない。

このゆっくりとした進展状況は強い希望的な見通しを表している、そう述べるの
はジャカルタに本拠地を置くASEANエネルギーセンターのコーディネーターの
Tjarinto S. Tjaroko氏である。

「2020年、いやたぶん2050年にはASEANは『ヨーロッパ的なネットワーク』のよ
うになり始めるだろう。残念ながら私はそれまで生きてはいないだろうが」と
Tjaroko氏は語った。

もし書類や会議、それに政府側の発表で計るならば、ASEAN電力網建設の趨勢は
過去10年間に強まったといえる。この構想の支持者たちは、各国が発電力を共有
できれば、発電所建設はより少ない数になり、電力供給はよりしっかりと保証さ
れ、そして各国におけるエネルギーの潜在性をより容易に開発することができる
と言う。

公式な見通しに関しては定期的に概要が説明され、たとえば、ラオスやミャンマー
(ビルマ)の水力発電がマレーシアに売却される一方で、ベトナムがタイの電力
消費のピーク時電力を補充することを示している。

マレーシアのDatuk Amar Leo Moggieエネルギー大臣は、昨年のASEANエネルギー
担当大臣会合において、ASEANグループがこの計画に向けて「一つにまとまって
おり(United)そして焦点を絞っている(Focused)」ことを示すために、電力
網ネットワーク作りを加速しなければならない、と述べた。

しかし、長距離の電力輸送はコストが高くなる。「発電所を新たに1つ建設する
ほうがはるかに安価なのに、どうして500メガワット(原文まま)の送電線をク
アラルンプールからバンコクに通す必要があるのか?」とMullis Capitalのエネ
ルギー専門家Mark Hutchison氏は疑問を投げかけた。

電力網は先進諸国でも徐々に進められていく傾向がある。より大きい規模の経済
を持つアメリカでさえ、長距離送電に伴う電力ロスと輸送コストによって、たと
えばコロラドの水力発電の電力をボストンには送り込めない、とHutchison氏は
言う。

電力網推進者の一人タイ発電公社のSitthiporn Ratanopas総裁は ASEAN各国は異
なった発展段階にあるので、互いのキャパシティを分かち合うべきだと主張する。

「タイの電力需要のピークは、工場やオフィスがフル稼働する午後2時、一方ベ
トナムのピークは人々が家で夕飯の支度をする午後8時である。お互いに助け合っ
て、お金を節約できる」とSitthiporn総裁は最近の講演の中で言及した。

この種の議論がタイの製造業者を不安にするとタイ産業連合エネルギー委
員会のChen Namchaisiri会長は話す。

「我々には信頼できる電力システムがある。タイ産業連合のメンバーにとっては、
なぜ高価な送電網を、信頼性の低い電力システムを持つ国々と作らねばならない
のか理解できない」と語った。

「産業連合のメンバーは、電力共有論に納得していない。なぜなら、ベトナムの
ような国々もいずれ工業化すれば、我々と同じような電力利用(時間帯の)傾向
を示すだろう」と続けた。直接売り手と買い手が契約する場合を除いては、電力
網建設に向けての政治的な情熱だけで、目下経済的な現実を打ち破ることはでき
ない、とタイで活動するエネルギー専門家Neil Semple氏は言う。

「莫大な資金のかかる巨大な送電網と、タイによる隣国ラオスからの水力発電電
力の輸入のような純粋に商業的観点から行われているプロジェクトは区別して考
えている」とSemple氏は話す。

そのほかで現在行われている「商業的」な送電網は、マレーシアとシンガポール
間、マレーシアとタイ間がある。ただし、後者はわずかにタイの電力の3パーセ
ントを補うに過ぎない。このような送電網は更に形成されるだろう。しかし、そ
れは、国営の垂直統合された巨大エネルギー公社間でのことだ。こうした巨大公
社は、生来本国市場を守っているのである。あるシンガポール人電力会社マネー
ジャーはそう述べた。

「この類いの大冒険を考え付くのは、壮大な計画を愛し、そして厳しい商業的な
責任にさらされる必要がない技術者たちなのだ」と彼は述べた。

「ヨーロッパにはもっと自由で、透明性が高く、そしてもっと商業的なエネルギー
市場がある。ASEANはそこからは程遠い」と先のシンガポール人マネージャーは
そう付け加えた。

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