メニューを飛ばして本文へ移動。

    English site

[メコン・ウォッチ]

ホーム | お問い合わせ | メールニュース登録 | ご支援のお願い


イベント | メコン河とは? | 活動紹介 | 追跡事業一覧 | 資料・出版物 | ギャラリー | メコン・ウォッチについて

ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>落成式、そして今度は移転地が水没

カンボジア・セサン下流2>落成式、そして今度は移転地が水没

メコン河開発メールニュース2017年11月9日


7月から試運転が行われてきたカンボジア最大のダム、セサン下流2ダム。9月25日にはフンセン首相主宰で落成式が行われました。首相はこの式典のスピーチで、ある外交官に数年前、漁業への影響を理由にこのダムを止めるよう促されたことに触れ、冗談めいて「私は驚いた。どうやらカンボジアの魚は木に登り、山も越えられるらしいな。この国の魚はトンレサップ湖とメコン河にしかいない。セサン川には棲んでいない。ダムの建設後は[川に]もっと魚を放流すればいいだけだ」と語ったようです。【1】

しかし、これまでもお伝えしているように、メコン河流域の魚は、本流と支流、トンレサップ湖の間を回遊しており、ダムが建設されたセサン川は、魚の重要な産卵・生育場となっています。カンボジアとメコン河下流域全体に甚大な影響が出ることは必至です。 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20160328_01.html

移転を迫られていたクバールロミア村とスレコー村では、まだ多数の世帯が移転を拒み続けています。しかし、村はダムの貯水により暮らせる状態ではありません。まだ浸水していない近隣の場所や親せき宅に移動し、ボートでもとの村の様子を見に来るという生活のようです。

一方、移転に応じた人もいますが、あろうことか、移転地が水没するという事態が起きています。「プノンペンポスト」の記事【2】を和訳しお伝えします。

セサン住民の移転地が水没

2017年11月2日
Phnom Penh Post
Phak Seangly記者
(追加情報Andrew Nachemson記者)

水没(ダムの貯水)により立ち退かされた住民のための、下流セサン2ダムに近い場所にある移転地それ自体が、水没に直面している。15ヘクタールの作物が駄目になり、新しく造られたばかりの道路300メートルが水浸しになった。

9月に運転を始めたダムにより影響を受けた、ストゥントレン州スレコー村の数百の住民は、セサン下流2水力発電会社(Hydro Power Lower Sesan 2 Co Ltd)による補償を受け入れ移転地に移動した。

スレコーコミューン長Siek Mekong氏によると、もとのスレコー村の浸水は、現在、村の屋根の上まで達しているが、企業が政府の支援を受けて提供した新たな移転地も浸水しているという。

Mekong氏によると、新たな集落のコメやカシューナッツといった作物が、すでに2週間ほど水に浸っており、完全に駄目になってしまったという。

「水は腰の高さ」だと彼は説明した。Mekong氏はまた、新設した道路が1メートルほどの水に沈んでおり、村人たちが使えないでいるという。中にはボートに頼っている人もいるそうだ。

コミューン当局は状況の一次調査報告書をまとめたが、州の報道官および鉱山エネルギー省の州長官は、昨日、コメントを拒否した。

「田んぼが水没してしまった。人びとはお金も時間も失った。企業の専門家たちはその能力(水没地を予測する能力)がない、十分に専門的ではないのではないかと思う」とMekong氏は述べ、村人たちは市場価格に基づいた補償を企業に求めていると加えた。

セサン下流2水力発電会社は、中国ハイドロランチャン国際エネルギー社(Hydrolancang International Energy)、ベトナム企業のEVNI(EVN International)、大物実業家Kith Meng氏率いるカンボジアのロイヤルグループ(Royal Group)の合弁だ。事業は当初から議論の的となっており、専門家はダムが魚類の生息地と毎年の氾濫サイクルに壊滅的な影響を及ぼすと警告し、人権団体は数千人もの先住民族を彼らの先祖代々の土地から強制立ち退きさせることを慨嘆していた。

企業の代表Chhay Meng氏は、作物の水没について認識していたと言い、状況を調査していると述べた。Meng氏は、割り当てられた区画を拡張し、「浸水被害をとても受けやすい」水路の近くの土地まで広げた村人たちのせいだとした。しかしながらMeng氏は、企業は影響を受けた世帯に新たな農地区画を提供する補償を考えているとした。彼はこれ以上のコメントは拒んだ。

州政府は、今はダムの貯水池となった場所に住んでいたすべての住民に対し補償パッケージを提示しており、それは世帯あたり6,000ドルもしくは新しい建設済み家屋付の土地5ヘクタールというものだ。移転先の場所は問わない。この2つのどちらかの選択を多くの住民が受け入れる中、570世帯のうちおよそ60世帯がいかなる取引も拒否した。

彼らは家財や個人所有物のほとんどを親せき宅や高い場所に移動したが、家が完全に水没した状況でも、定期的に村を訪問している。

今はもうNGO登録から外れた団体 Mother Natureの、Alejandro Gonzalez-Davidson代表は、移転地の状況は「悪夢の始まりだ」と述べた。

Mother Natureは、スレコー村住民と移転前に緊密に活動していたが、代表いわく、多くの住民は「移転地が全く受け入れがたい」ために移転を拒んでいたという。

「デュー・デリジェンス(適切な配慮)も本当の協議もなかったはずだ」と代表は続け、「状況は更に悪化するばかりだろう」と加えた。

【1】プノンペンポスト記事(2017年9月26日)
Sesan dam goes online, while PM dismisses environmental concerns
http://www.phnompenhpost.com/national/sesan-dam-goes-online-while-pm-dismisses-environmental-concerns
【2】原文(英語)
Relocation site for Sesan villagers flooded
http://www.phnompenhpost.com/national/relocation-site-sesan-villagers-flooded

(文責・翻訳/メコン・ウォッチ)

このページの先頭へ

サイトマップ
特定非営利活動法人 メコン・ウォッチ
〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F(地図
電話:03-3832-5034 Fax:03-3832-5039 
info@mekongwatch.org
© Mekong Watch. All rights reserved.