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メコン本流ダム>本日、タイ最高裁が買電契約の是非を判断

メコン河開発メールニュース2015年12月25日

ラオス国内で建設が進むサイヤブリ・ダム[1]。現地のメディアは「52%完成」と報じていますが[2]、このままでは、メコン河での魚類の回遊や栄養分の流れへの影響は必至です。

サイヤブリ・ダムは、タイの企業が建設し、タイの銀行が融資し、タイが電力を輸入するという、21世紀に入ってから顕著な新興国の経済力の高まりを象徴する開発事業です。

そのタイで、2012年、電力を購入する契約は憲法に違反するとして、タイの住民が訴訟を起こしました[3]。本日12月25日、最高行政裁判所が判決を下します。

さらに、判決に先立ち、タイの市民団体が、サイヤブリ・ダムの過ちをくり返さないために、タイ資本の海外での活動を規制する法制度の整備をタイ政府に呼びかける声明を発しました。以下に、日本語訳で紹介します。

メコン河流域開発では、タイをはじめ、中国・韓国・マレーシア・ベトナムといった経済新興国の資本が大きな影響を及ぼすようになりました。一方で、世界銀行・アジア開発銀行(ADB)・日本政府/民間といった従来のプレイヤーも開発援助・投資を継続しており、サイヤブリ・ダムにおいては、サイヤブリ電力会社に12.5%を出資するタイ電力会社(EGCO)に、東京電力と三菱商事が子会社を通じて出資し、役員を4名送り込むといった複雑な様相を呈しています[4]。

こうした中で、タイの市民団体が、自国の政府に海外投資を監視・規制する法制度の整備を呼びかける動きに、今後とも注目したいと思います。

市民団体、サイヤブリ訴訟判決を前に、海外投資の規制を要請
海外投資を監視するタイNGOによる声明

2015年12月22日

[タイ・バンコク] 海外投資の動きを監視するタイの市民団体は、政府に対して、タイの海外投資事業による環境・社会被害を防ぎ、国家の評判を守る目的で、法制度や監視機関を整備するよう呼びかけた。

「タイ国内で住民の反対にあい、法律の要件を満たさない大規模事業が、タイの事業者の手によって、カンボジア・ラオス・ミャンマーといった法制度の脆弱な近隣諸国で実施されています」と、NGO「心と教育の運動」(Spirit Education Movement)のAreewan Sombunwatthanakun氏は指摘した。

この要請は、12月25日にタイ行政裁判所が下す判決に先立って発せられたもので、サイヤブリ・ダム(総工費35億ドル)の電力の95%を買う契約を結んだ政府系のタイ電力公社(EGAT)をはじめ五つの政府機関を相手取って、メコン河沿いに住む住民たちが訴えを起こしている。サイヤブリ・ダムは、タイの民間が隣国ラオスで進めている事業である。

住民の訴えは内外で大きな注目を集めた。というのも、漁業への被害、水流や堆砂の変化、下流での河岸浸食といった、流域住民の生計を脅かす懸念を浮き彫りにしたからだ。メコン河流域には6,000万人以上の人びとが住み、食料確保や生存のために河川の資源に依存している。サイヤブリ・ダムの影響調査は不十分で、国境を越える環境影響調査(EIA)は実施されていない。タイや近隣国の影響住民は、懸念を伝えて、利害や権利を守る場や協議を持つ権利を侵害されている。

この事業は、建設を請負うチョー・カンチャーン社をはじめタイの企業が進めている。資金提供はタイの六つの大手銀行によって行われており、それらは、サイアム商業(SCB)、カシコン、バンコク、クルンタイ、TISCO、そして輸出入銀行(EXIM)である。

「現在のタイには、無責任な海外投資や金融を規制する法律がありません。さらに、近隣諸国の法制度が投資事業に対して脆弱なことは周知の事実で、アセアンも投資の環境・社会基準を定めた地域レベルの枠組みを整備できないでいます」と、Community Resource Centre のSor Rattanmanee Polkla法律担当は語った。「ミャンマーやカンボジアを例にとれば、依然としてEIAの法的枠組みを完備しておらず、ラオスも加えた三か国では、大規模事業のEIAを精査するだけの行政能力がありません」。

「タイ政府にとっては、タイからの投資を監視する法律や制度を整備することで、流域で最善の方策を進めるリーダーとなる好機です」と、International RiversのPai Deetes氏は述べた。

本件に関する連絡先
Areewan Sombunwatthanakun(Spirit Education Movement)
Pai Deetes(International Rivers)
Sor Rattanmanee Polkla(Legal Coordinator/Community Resource Centre)

<サイヤブリ・ダム買電契約無効訴訟のこれまで>[5]
2011年
 -10月 EGAT、サイヤブリ電力会社と、サイヤブリ・ダムの電力の95%を購入する契約を結ぶ。他の四つのタイ政府機関の承認に基づいたもの。
2012年
 -8月7日 チェンライ県からウボンラチャタニ県にまたがる北・東北タイ8県のメコン河沿いの住民37名から成る原告団、EGAT・国家エネルギー政策評議会・内閣など五つの政府機関を相手取って、行政裁判所に買電契約の無効を主張する訴訟を起こす。訴状によると、買電契約の承認はタイ憲法および1995年のメコン河協約に違反する。すなわち、タイ憲法が定めた、国境を越える環境・健康影響の評価およびタイ住民との協議を経ずに承認された。
2013年
 -2月 行政裁、司法権の及ぶ範囲ではないとして住民の訴えをしりぞける。
 -3月 原告団、タイ最高行政裁判所に控訴
 -2014年
 -6月24日 最高行政裁、訴訟を受理。裁判所によれば、「タイ住民は、健康・衛生・福祉・生活の質を損なうことのない環境で普段の生活を継続して営むことができるように、環境や自然資源の持続可能で均衡の取れた管理・維持・保全・活用に参加する権利を有する」。
 -10月17日 原告団、最高行政裁に、判決まで建設工事を差止めるよう訴えを起こす。
2015年
 -7月24日 原告団、行政最高裁に最終証拠を提出
 -11月30日 第一回聴聞会を開催
 -12月25日 最高行政裁の判決(予定)

訳注
[1]サイヤブリ・ダムについては、http://www.mekongwatch.org/report/tb/Xayaburi.html
[2]『ビエンチャンタイムズ』(2015年12月18日)の報道http://www.vientianetimes.org.la/FreeContent/FreeConten_German.htm
[3]メコン河開発メールニュース(2012年7月12日)http://www.mekongwatch.org/resource/news/20120712_01.html
[4]EGCO理事http://www.egco.com/en/corporate_governance_board_of_directors.asp
[5]一部、編集した。

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)

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