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ビルマ・ダウェイ経済特区>現地グループ、深刻な環境社会・人権問題等を伴うダウェイ事業への日本の関与に警鐘

メコン河開発メールニュース2015年7月7日

7月4日に東京で開催された「第7回日本・メコン地域諸国首脳会談」のなかで、日本、ビルマ、タイの3ヶ国が「ダウェー経済特別区プロジェクトの開発のための協力に関する意図表明覚書(MoI)」に署名したとのニュースが大きく報じられました。完成すれば東南アジア最大の工業地帯となるビルマ南部のダウェイ経済特別区(SEZ)(20,451ヘクタール)開発へ日本政府がいよいよ正式に参加を表明したことで、ビジネス機会の増加など、日本企業の期待も高まっているようです。

しかし、同SEZ事業については、以前から、現地市民グループによって、多くの深刻な環境社会・人権問題が指摘され、この4月には、現段階での同SEZ事業への関与を控えるよう要求するレターも日本政府・国際協力機構(JICA)に対して提出されていました(和訳は後段をご覧下さい)。

現地グループによれば、20〜36村の約4,384〜7,807世帯(22,000〜43,000人)が同事業の直接影響を受けると言われていますが、2008年からタイ企業が主体となり事業が進められてきたなか、強制的な土地収用や生計手段の喪失、不十分な移転・補償措置、適切な情報公開や協議の欠如などによって、すでに多くの住民が苦しい生活を強いられています。2013年には資金調達の失敗から同企業が撤退しましたが、それ以降も問題は未解決のままであり、現地グループは、タイ・ビルマ両国政府、また、同事業への参加に関心を示してきた日本政府等に対し、まず、これまでに起きた環境社会・人権侵害の問題解決を図ることが先決であると訴えてきました。

※同SEZ事業に伴い、コミュニティーが抱えてきた問題・懸念については、こちらのビデオにまとめられています。ぜひご覧下さい。
「Dawei, Lost in Development(ダウェイ、開発で失われたもの)」
(17分、2014年制作、英語版(日本語字幕付))
https://www.youtube.com/watch?v=TA3lix1P5R4

今回、3ヶ国が署名した「意図表明覚書(MoI)」では、今後、日本がJICA、もしくは、国際協力銀行(JBIC)等を通じて、事業主体に出資参加すること、また、道路連結事業のための事前事業化調査を実施することなどが確認されるとともに、環境社会配慮に関しても、「国際基準に即し、適切な措置を講じていく」ことが明記されています。

しかし、日本の官民が先行して進めてきたヤンゴン近郊のティラワSEZで、国際基準やJICAガイドラインに沿った適切な移転・補償措置がとられず、結果として、移転住民の生活が悪化している問題を見てもわかるとおり、ダウェイSEZでの既存、および、将来の移転・補償問題を国際基準に即した形で解決していくのは、非常に困難な道のりになるであろうことは想像に難くありません。

日本の政府・企業は、ダウェイSEZ開発事業に参加を表明した今、将来だけでなく、既存の問題の解決にも責任ある立場となったことを自覚し、早期の段階から、相手国政府だけでなく、現地住民・グループの懸念・意見にもしっかりと耳を傾け、しかるべき対応をとっていく必要があります。

以下、現地グループDDA(ダウェイ開発連合)が4月27日付で日本政府・JICAに対し、同SEZ事業の環境社会・人権問題、および、経済・政治的リスクについて警告を発したレター「懸案であるミャンマー・ダウェイ経済特別区事業への日本の関与停止要求について」を和訳でご紹介します。

現地グループDDA(ダウェイ開発連合)から日本政府・JICAへのレター
(2015年4月27日付)(原文は英語。その和訳)

外務大臣 岸田 文雄 様
国際協力機構 理事長 田中 明彦 様

CC:
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
経済産業大臣 宮沢 洋一 様
国際協力銀行 代表取締役総裁 渡辺 博史 様
日本貿易振興機構 理事長 石毛 博行 様

2015年4月27日

懸案であるミャンマー・ダウェイ経済特別区事業への日本の関与停止要求について


私たち、ダウェイ開発連合(Dawei Development Association:DDA)は、2013年5月25日にも最初のレターを貴職に提出しましたが、国際協力機構(JICA)がミャンマー・タニンダーリ地区のダウェイ経済特別区(SEZ)事業に関連する道路連結事業(メコン国際幹線道路連結強化事業の一部として)に関与するという最近の報道を非常に懸念しています。ダウェイにおけるこれらの開発事業は、すでに深刻な社会環境影響や人権侵害を近隣のコミュニティーに引き起こしてきました。また、これらの事業は、日本にとっても経済的・政治的リスクを伴うものです。私たちは、JICA、および、あらゆる潜在的な日本のステークホルダーが、このような問題を孕んでいる事業に現時点で参加しないよう要求するとともに、以下に詳述する既存の問題やリスクが適切に解決され、地元コミュニティーへのさらなる負の影響を回避、もしくは、軽減するための計画がしっかり策定されるまで、JICAが関与を控えるよう要求します。

DDAはこれまでにダウェイ地域での広範囲にわたる調査を実施しており、ダウェイSEZやJICAが支援を予定している道路連結事業を含む関連事業によって、20から36村の住民が直接的な影響を受けると予測しています。【1】 ダウェイSEZ事業の直接的な影響を受ける20村での私たちの量的・質的調査の結果では、事前に何ら情報を提供されることもなく、コミュニティーが重要な生計手段である農地や天然資源を失っていることが明らかになりました。影響を受ける村人との意味ある協議は行われておらず、補償手続きには大変不備がありました。【2】

さらに、ダウェイSEZの開発主体はこれまで、強制退去、十分な食住への権利、そして、先住民族の権利に関する国際、地域、国内レベルの関連法規、基準、その他の責任を守ってきませんでした。もし、JICAがダウェイSEZに関連した道路連結事業やその他の事業に関与するならば、JICAはまず、こうした問題への取り組みが十分になされるよう確保しなければなりません。

しかし、JICAはミャンマー政府の不十分なガバナンスやマネージメント能力に鑑み、こうした問題に取り組むことの難しさを認識しなくてはなりません。ヤンゴン近郊のティラワSEZでは、第1期事業で300人近くの住民が移転させられ、次期以降、さらに4,000人が移転をさせられることになりますが、国内法規や国際基準だけでなく、JICA環境社会配慮ガイドラインにも違反しているとして、同SEZへの出資を巡り、JICAはすでに非難を浴びてきました。そして、同事業では、JICAの異議申立手続の下、住民が初めてJICAに異議申立てをする結果に至りました。JICAはまた、ミャンマー南東部地域総合開発計画プロジェクトに関して、地元、および、地域の市民社会グループから非難を受けています。【3】 JICAのダウェイSEZ、および、関連事業への関与は、この増え続けているリストに新たな事例が加わるという意味で、悪しき決定と言えるでしょう。

JICAはまた、地元コミュニティーが道路封鎖 【4】 や環境影響評価プロセスを通じて反対の意を示す【5】  など、ダウェイSEZ事業への地元の強い反対があることを考慮しなくてはなりません。JICAは、JICA自身のミャンマーにおける、そして、国際的な評判について考えるべきです。

JICAの同事業への現段階での関与は、深刻な経済的リスクも伴います。ダウェイSEZ事業は2013年11月以降、資金難により失速しています。ミャンマー、および、タイ両政府は、イタリアン・タイ開発社(ITD)から事業開発権を取りあげ、同事業の開発を進めるため、特別目的事業体(SPV)であるダウェイSEZ開発社を両国の折半出資で設立しました。こうしたダウェイSEZの前段階における資金調達の問題を鑑みると、JICAのダウェイ事業への関与は、日本の納税者が費用負担を強いられることになるという点で、経済的リスクを伴う投資です。

ダウェイSEZ、および、関連事業への投資はまた、現在、和平交渉が不安定であることから、政治的リスクもあります。というのは、道路連結事業地はカレン民族同盟(KNU)の支配地域下にあるからです。【6】 実際、道路連結の建設は、土砂の増加に伴う河川の汚染、また、農地・プランテーションの破壊など、生計手段や環境に関する懸念から、KNUによってすでに数度止められています。【7】

JICAが考慮すべき政治的リスクのもう一つは、今年後半に行なわれるミャンマーでの総選挙です。新政権は、異なる政策や関心を持つ可能性があります。例えば、2010年選挙以前の軍事政権が署名したミッソンダム事業は、現政権によって中止されました。同様に、2010年選挙の10日前に付与されたITDへの開発権も、2013年11月にITDから取り上げられました。さらに、2010年選挙は、選挙権剥奪や有権者への脅迫、また、不正を多く伴うものでした。数十年のなかで、たった2回目となる今年の選挙が、自由かつ公正なものになるかは不明です。私たちはまた、この選挙の結果、投資にとって困難な政治状況になるかもしれない2つの可能性を考えています。一つは、選挙が適切に行なわれなかった場合、強い政治運動が起こり、結果として、軍によるクーデターに行き着く可能性です。二つ目は、軍の支持を受ける連邦団結発展党(USDP)が選挙で勝てない場合、ミャンマーでの不安定な状況が増大する可能性です。これらの可能性を考えれば、選挙に非常に近いこの時期にJICAがこのような懸案である事業に関与することは、大変なリスクです。

私たちは、JICAが、ダウェイSEZ、および、関連事業への関与に伴う政治的・経済的リスクを真剣に、かつ、重く受け止めるよう期待します。JICAが最終的に、出資や融資、あるいは、調査であっても、何らかの関与を決定するのであれば、JICAは、同事業によって引き起こされた環境社会影響や人権侵害について責任を果たさなくてはなりません。したがって、私たちは、問題やリスクが適切に解消されるまで、JICAがダウェイ事業へのいかなる関与も控えるよう要請します。

以上、ご配慮いただけますようお願いするとともに、ご回答をお待ちしております。


ダウェイ開発連合(Dawei Development Association)



【1】ダウェイSEZ、および、関連事業による地元コミュニティーへの影響について、より詳細な情報は、 http://www.ddamyanmar.com/?p=811 の”Voices From the Ground: Concerns Over the Dawei Special Economic Zone and Related Projects(調査報告書「現場からの声:ダウェイ経済特別区および関連事業に関する懸念」” を参照のこと。
【2】上述の調査報告書36〜50ページを参照
【3】カレン環境社会アクション・ネットワーク等による「国際協力機構(JICA)の南東ビルマ/ミャンマー開発計画案に対する批評」を参照
http://www.kesan.asia/index.php/resources/publications-media/reports/viewdownload/4/152 )。
また、リン・フジマツ氏とアレックス・ムーディー氏による「日本がミャンマーで犯す過ち」(ウォール・ストリート・ジャーナル 2015年1月7日付)を参照
http://www.wsj.com/articles/rin-fujimatsu-and-alex-moodie-japans-misadventures-in-burma-1420566359
(英語))。
【4】http://www.irrawaddy.org/burma/thai-burma-road-link-blocked-dawei-protesters.html
【5】http://karennews.org/2013/05/thai-surveyors-fail-to-gain-villagers-trust.html/
【6】http://karennews.org/2011/10/burma-army-sends-reinforcements-to-secure-tavoy-kanchanaburi-road-construction.html/
【7】http://www2.irrawaddy.org/article.php?art_id=22767

 

(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)

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