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 メコン下流本流ダム>危機に直面した河の恵みと人びとの暮らし(2)形骸化するメコン協約と共同資源管理の枠組み

メコン河開発メールニュース2012年12月7日

メコン河流域内外からの批判を無視して強行されるラオス・サイヤブリダム計画ですが、悪影響は自然・社会環境にとどまらず、メコン河の共同利用・管理の枠組みにまで及びます。ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムが1995年に署名し、メコン河委員会(MRC)発足の基盤となったメコン協約(Mekong Agreement)のことです。【1】以下では、この点を指摘した『サウスチャイナ・モーニングポスト』紙の社説(原文英語)を日本語訳で紹介します。

もっとも同紙の社説は、MRCとメコン協約を褒めすぎているきらいがあります。一例をあげれば、1990年代後半以来、メコン河の大支流であるセサン川において、ベトナム政府が上流に建設したダムの影響が下流カンボジアに住む先住少数民族の生命や生活に甚大な被害を及ぼすことが明らかになった際にも、MRCは有効な協議や解決を主導できてきませんでした。【2】その経験を教訓化しなかった点に、今回の混乱の原因の一部があると云えるでしょう。

つまり、求められているのは、ラオス政府による計画再考ばかりでなく、MRCのアクション、およびアクションを通じた自らの存在意義の主張です。同時に、MRCを財政面で支え、MRCに発言力を持つ援助国政府と国際機関(「開発パートナー」と呼ばれ、日本政府もその一員)の対応も求められています。

なお、メコン・ウォッチでは、来週12月14日(金)・15日(土)、メコン河流域各国からゲストを招き、こうした問題点を報告・議論します。詳しくは以下をご覧の上、ぜひご参加下さい。

>> 14日の案内はこちら
>> 15日の案内はこちら

ラオス政府、メコン河ダム建設で何十年もの地域協力を反故に

サウスチャイナ・モーニングポスト紙社説【3】
2012年11月17日

カンボジア、ラオス、タイ、ベトナムがメコン河の共同利用に合意したことは、国際連合から長い間にわたって資源管理の輝かしい例として歓迎されてきた。55年にわたって四ヶ国は、立場の違いを横に置いて、メコン河の水資源や魚類の開発利用について協力・協議することができた。しかし、ラオス政府は自己の利益に負け、協約および隣国や環境団体の意見を無視し、ダムの起工式を行った。ラオスは一瞬にしてこれまでの成果を台無しにすると同時に、地域協力、何千万人もの人びと、希少種生物といったものを脅かすことになった。

ラオス北部のサイヤブリダムは、結局のところタイとの合同事業である。タイの民間が建設し、タイが電力の95%を購入する。2010年に準備工事が始まって以来、カンボジアとベトナムの両国は、ラオスに対して影響調査を実施するよう要請した。メコン河委員会(MRC)での協議を通じて四ヶ国は昨年12月、サイヤブリダムばかりでなく、計画中の10ヶ所のダムの影響をより大がかりに調査することで合意した。この合意は、MRCの設立を決め、大規模開発に関する(加盟国の)合意を義務付ける1995年の協約に沿った内容だった。

(2011年12月の合意には)十分な根拠があった。6,000万人の人びとがメコン河を水源、食料源、交通手段として直接的に活用している。メコン河は世界最大の淡水漁場で生物多様性においてはアマゾンに次ぐ。【4】ダムが建設されれば、希少種の生物は絶滅の危機に瀕し、魚類は打撃を受け、カンボジアやベトナムに米作をもたらす栄養分の流れも阻害される。

メコン河流域諸国は、何十年にもわたって河川管理における合意形成の重要性を理解してきた。ダムが被害をもたらすため、建設前に十全な影響評価と完全な合意が必要であるとの認識もあった。ラオス政府は合意なしに前進することで、下流の人びとの懸念の声を蹴散らし、計画中の他のダムに関して、考えうる限りで最悪の先例を作ったことになる。自らの振る舞いを再考し、計画を中止することでのみ、失われたものを回復できる可能性がある。

訳注
【1】正式名称は、”Agreement on the Cooperation for the Sustainable Development of the Mekong River”。原文(英語)は以下で閲覧可能
http://www.mrcmekong.org/assets/Publications/agreements/agreement-Apr95.pdf
【2】この問題は依然として未解決のままである。詳細は「セサン川・セコン川・スレポック川(3S)ダム開発」を参照
【3】英語原文は、”Laos risking decades of co-operation with Mekong dam project”, 17 November, 2012, SCMP Editorial, South China Morning Post。以下で閲覧可能。
http://www.scmp.com/comment/insight-opinion/article/1084347/laos-risking-decades-co-operation-mekong-dam-project
【4】より正確には、魚類の多様性であると思われる。

(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)

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