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 ベトナム・スレポック4A>カンボジア住民がNEXIへEIAのカンボジア語公開を求める

メコン河開発メールニュース2012年11月5日

10月26日、カンボジア北東部ラタナキリ州の住民組織ネットワーク「セサン・スレポック・セコン川保全ネットワーク(3SPN)」は、日本貿易保険(NEXI)に対し、ベトナム国内に建設されるスレポック4Aダムに対する懸念を伝える書簡を提出しました。
同ダムは、ベトナムからカンボジア北東部に流れるメコン河の支流スレポック川の、ベトナム領内に建設される予定です。三井住友銀行が約64億円の融資を決定し、NEXIが海外事業資金貸付保険(注:日本企業が外国法人または外国政府に対して事業資金貸付を行った場合、貸付金等の回収ができなくなったことにより受けた損失をてん補する保険)を引き受けています。
カンボジア北東部では、1990年代初めのヤリ滝ダム建設以降、ベトナムの水力発電ダムの運転で、カンボジア側住民が洪水や漁業資源の減少、水質悪化による疾病などの被害を受けています。

>>セサン・スレポック・セコン川の状況はこちら
>> スレポック4Aダムについてはこちら

NEXIは環境社会配慮ガイドラインで、環境や地域住民に強い影響を及ぼすと懸念される事業に関し、事前に環境アセスメント報告書(EIA)などの公開を自らに課しています。しかし、このダムはベトナムで行われる事業であるため、EIAはベトナム語版のみが公開されています。書簡は、上流ベトナム領内のダム開発により、下流カンボジアの住民が長年にわたり影響を受けてきたこと、自分たちも本事業のステークホルダーであることを訴え、EIAのカンボジア語または英語による公開、事業がカンボジア側にどのような配慮をしているか、その説明を求めています。

以下に日本語訳(原文英語)をご紹介します。
書簡原文はこちら


独立行政法人 日本貿易保険
理事長 鈴木 隆史様

件名:ベトナム/スレポック4A水力発電所(64MW)建設プロジェクトに関する懸念

3S川保全ネットワーク(3SPN)は、カンボジア北東部のセサン川、スレポック川沿いに暮らす、上流ベトナムの水力発電ダム建設と運転の影響を受けている約64,000人を代表する住民組織ネットワークです。スレポック4A水力発電ダムのステークホルダーとして、このプロジェクトにかかわる私たちの懸念点をお伝えし、さらなる情報をいただきたいと思います。
1996年以降、ベトナム領内のセサン川上流域の水力発電ダムの建設や運転により、カンボジアの住民は、洪水の頻発、漁業資源の減少、異常な水位の変動、水質の悪化などの被害を受けています。10年以上にわたり、深刻な被害を受けているにもかかわらず、ベトナム国内の開発事業に関する情報提供や現地協議は一切行われていません。スレポック川に次々と計画され建設される7つの水力発電ダム事業は、環境社会影響に関する現地協議の実施や説明責任をほとんど果たしておらず、下流へセサン川同様の悪影響を及ぼしています。
カンボジア政府やベトナム政府にこれらの問題を伝えておりますが、未だ状況は改善しておりません。

発電能力64MWのスレポック4Aダムが建設されるスレポック川は、ベトナム中部高原に源を発し、カンボジアのモンドルキリ州、ラタナキリ州、ストゥントレン州を流れる国際河川です。カンボジア領内の川沿い21か村には約1万1,000人が生活しています。スレポック川流域でもセサン川と同様、ベトナムのダムの放水による不定期な水位の変動や不自然な洪水で、家の流失、家畜の溺死、農作物や財産破壊、船や漁具の流失などの被害を被っています。また、2006年と2009年には過去に見られなかった大洪水が発生しました。

我々はVietnam Investment Review(2012年3月16日付)(注1)の報道で、ブオンドン水力発電合弁会社(Buon Don Hydropower Joint Stock Company)によってベトナム領内に建設されるスレポック4A水力発電ダムに対し、NEXIが6420万ドルの海外事業資金貸付保険(貸付金債権等)の引き受けを決定されたことを知りました。日本の三井住友銀行(SMBC)が資金を援助し、本プロジェクトの主要な資金源となっています。私たちは、このダムがベトナムの上流にある他のダム同様に、カンボジアの住民に悪影響を与えることを懸念しています。このダムのステークホルダーとして、私たちはNEXIにEIAのカンボジア語および英語での公開を求めます。
さらに、以下の点についてNEXIからのご回答をお願いする次第です。

1..スレポック4AダムのEIAでは、事業者はダム下流のカンボジアの住民と環境への影響に対しどのような調査をしたか。

2.このダムとスレポック川の既存ダムによる累積的環境影響は、それらの越境する影響を考慮して調査されたのか。

3..国際的実施基準は、影響を受ける全地域での協議の実施を求めているが、事業者およびNEXIはプロジェクトの建設が進む前にカンボジア領内での協議実施についてどのような計画をしているのか。

4..このダムによるカンボジア下流域への影響について、どのような緩和策や補償が提案されているのか。この解決策と補償計画についてカンボジア語と英語での公開をお願いしたい。

5.このダムは、ベトナムとカンボジア国境から数キロの位置に建設されると理解している。事業者は、発電時の放水に関して下流カンボジアにどのように通知する予定なのか。

6.スレポック4Aダムの上流にあるスレポック4ダムは、水位調整のためのダムであると理解している。この水位調整ダムの建設は、上流の既存ダムからの放水の影響を緩和するため、2007年1月にカンボジア住人に対して建設が約束された(注2)。事業者は、スレポック4Aからの放水をどのように緩和する計画なのか。下流カンボジアの人びとに対する更なる被害を避けるための水位調整についてはどのような調査がされたのか。私たち自身が結果を検証できるようにその調査の写しを送付していただきたい。

7.気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局のスレポック4A水力発電プロジェクトのクリーン開発メカニズム(CDM)申請 によると、本プロジェクト自体は採算性がなく、CDMクレジットが発行されなかった場合、プロジェクトはそれ以上進められない(PDD 12ページ参照)。これを受けて、本プロジェクトが引き起こしうる下流への影響に加え、このプロジェクトは支払責任を負うことができ、下流域でのすべての影響は緩和され補償されると判断するためにNEXIはどのような調査を行ったのかを伺いたい。

スレポック4A事業が下流に与える影響について、私たちが懸念する点をご説明しました。本プロジェクトは、ベトナムとカンボジア両国のプロジェクト影響住民に対する透明性や協議実施、説明責任といった国際的実施基準を満たしていないため、結論として、私たちはNEXIに対し、本プロジェクトへの保険引受を再考していただくことを要望します。

最後までお読みいただきありがとうございます。他に必要な情報がありましたら、お知らせください。回答をお待ちしております。

Meach Mean
3SPN コーディネーター
カンボジア ラタナキリ州 バンルン
携帯:+855 (0)11 758 970
Email:mean@3spn.org

写し
H.E. Bun Hean, セサン・スレポック川を管理するカンボジア・ベトナム共同委員会カンボジア代表、カンボジア・ベトナム・ラオス・タイ国境ダムおよび運河の調整に関する常設委員会委員長、カンボジア水資源・気象省、技術責任者 カンボジア、プノンペン

Dr. Cao Quoc Hung, セサン・スレポック川を管理するカンボジア・ベトナム共同委員会ベトナム代表、ベトナム工商省国際協力局長 ベトナム、ハノイ

Mr. Nguyen Xuan Phuong, ブオンドン水力発電合弁会社取締役 ベトナムダクラク省

Mr.Hoang Van Ninh、EVNファイナンス取締役社長 ベトナム、ハノイ

國部 毅代表取締役、三井住友銀行(SMBC) 日本、東京

Mr. Flavio Gomes、ビューローベリタス認証ホールディングス社、 スレポック4A CDM検証プロセス運営組織 フランス、ヌイイ=シェル=セーヌ

Mr. Michael Wiener、 ペレニア株式会社事業本部長、スレポック4A CDM検証プロセス参加者 オーストラリア、ノースシドニー

 

(注1)記事の原文(英語)は以下のサイトで閲覧可能
http://www.vir.com.vn/news/top-news/japanese-bank-funds-hydropower-plant-project-in-dak-lak.html
(注2)Stakeholder Meeting on EIA Report on Cambodian Part of Srepok River Due to Hydropower Development in Viet Nam. 2007年1月12日プノンペンで開催

(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)

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