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 メコン下流本流ダム>サイヤブリダムをめぐる諸問題(その7)〜スウェーデンとフィンランド政府も計画には慎重な姿勢

メコン河開発メールニュース2011年12月5日

12月7日(明後日)に開催されるメコン河委員会(MRC)評議会で、MRC加盟国(ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム)によって、メコン河下流本流ダム第一号のラオス・サイヤブリダムに対する判断が下されようとしていますが、MRCを財政支援するドナー国政府・開発機関の意向も注目されるところです。

米国はすでに昨年10月、ヒラリー・クリントン国務長官が下流本流ダム計画延期への支持を表明しており、先頃11月29日にも、上院外交委員会が計画延期を呼びかける決議を採択したところです【1】。世界銀行も、昨年10月、下流本流ダム計画の延期に賛同する声明を発しています【2】。

以下では、スウェーデンとフィンランド両国がラオス政府に対して、隣国の懸念への配慮を含めた慎重な対応を求めているとの報道(原文英語)を日本語訳で紹介します。

MRCのドナー国には日本政府も名前を連ねており、今回のMRC会合には外務省の代表が出席します。会合に臨む外務省に対して、メコン・ウォッチでは12月1日、玄葉光一郎外務大臣宛に「日本政府は下流本流ダム計画、特にサイヤブリダム計画の延期を関係国に働きかけるべきだ」との趣旨の要請書を提出しました。要請書原文はこちらで閲覧可能ですので、是非あわせてご一読下さい。

スウェーデンとフィンランドはメコン河のダム計画に反対

ScandAsia
2011年9月21日

内陸国ラオスが、隣国との協議を待たずに、数カ月も前に問題のダムの建設を始めようとしていることが明らかになってきた。

自らが署名した国際協定にもかかわらず、甚大な環境社会影響への懸念もものともせず、ラオス政府は、メコン河下流本流に問題の多いダムを建設する決意を固めているようだ。

支援国政府は、ダム計画の命運は隣国政府の閣僚の意向次第で、隣国政府の懸念を無視するわけにはいかないと主張している。

専門家の所見は、ダム建設をめぐる協議手続きを一方的に終結する先取り行為が、ラオス自身も署名している地域協定に違反する点を強調している。

9月9日、ラオス政府は反対する隣国政府をなだめる設計変更を加えた上で、総工費38億ドルのメコン河本流サイヤブリダムの建設を年内に着工する予定であるとブルームバーグが報じた。

ラオス・エネルギー鉱山省電力局のウィラポン・ウィラウォン(ViraphonhViravong)局長の9月9日の発言を引用する形でブルームバーグが報じたところによると、ラオス政府は、下流のコメ生産と漁獲高に打撃を与えるとの懸念を払拭する目的で5月に実施したサイヤブリダムの調査をすでに完了した。

「加盟国に説明して、安心してもらいたいと思っています」とウィラポン局長はブルームバーグに語った。「それでもまだ非常に否定的な態度なら、当然のことながら、この件にさらに時間をかけるつもりです」。

ブルームバーグの報道によれば、ラオス政府は、フィンランドに本社を置くPoyryグループが実施した事業評価をベトナム政府に提示し、タイ・カンボジア政府関係者とも個別会合を設定し、協議する予定である。ラオス政府はすぐにでも計画実施の判断を下せる立場にあるとのことである。

しかし、メコン河委員会(MRC)のLe Duc Trungベトナム国内委員会委員長は、サイヤブリダムをめぐる最近の動きを承知していないと語っている。MRCはメコン河流域の自然資源の活用を調整する目的で設立された政府間機関である。

「この件についてはラオス政府からなんらの情報も受取っていない」とチュン委員長は週刊タン・ニエン紙に語った。

Poyry社が実施した事業評価の結果は未公表のままである。

「Poyry社はサイヤブリダム計画の現時点での工学的設計が基準を満たしているかどうかの調査を(ラオス政府から)委託された」とPyory社は週刊タン・ニエン紙に送付した声明で述べている。

この声明によると「Poyry社の評価には実行可能性調査や環境・社会影響評価は含まれておらず、結果の公表が可能かどうかは委託者が判断する」。

強い反対

ラオス北部に計画されているサイヤブリダムは、ダム高810メートル、発電量1,260メガワットで、推進側は環境にやさしいエネルギーに向けた大きな前進だと喧伝しているが、反対派からはそうした主張は不適当だと一蹴されている。

人口約600万人、国内総生産(GDP)56億ドルのラオスは、今後10年間で世界最貧国の一つという汚名を返上するべく、現金収入の道を水力発電に求める積極策に出ている。

しかし環境保全団体は、魚類の回遊を妨げるサイヤブリダムが数多くの魚類を絶滅させる可能性があるとしている。また、下流の広大な米作地帯が東南アジア最長を誇るメコン河によって受ける栄養土の供給を断たれてしまうとも云われている。

ベトナム、カンボジア、タイ政府はサイヤブリダム計画に強く異を唱え、ラオス政府に対して、中止しないまでも計画の実施を延期するように求めている。ベトナム政府に至っては、メコン河下流本流に計画されている11地点のダムすべてを10年間凍結するよう要請している。メコン河はチベット高原を源流としているが、ビルマ(ミャンマー)、タイ、カンボジアも貫流している。

4月、ラオス政府は、今年暮れに開催される閣僚級会合での加盟国の承認を待つことで計画の一端停止に合意したものと考えられている。

ラオスを経済支援する先進国政府もこの内陸国に対して約束を守るよう求めている。

「ラオスは主権国家です。しかしながら、ラオスと外交関係を保つスウェーデンとしては、ラオス政府が最終決定を下す前に、サイヤブリダムがラオス国内および近隣国にもたらす環境社会上の影響を考慮するよう助言しています」と駐バンコク・スウェーデン大使館のアンナマリア・オルトープ(Anna-MariaOltorp)開発協力部部長は語った。

「フィンランドは、ラオス政府がMRC加盟国への公約を守ることを支援国政府が期待している点を引き続き強調します」とフィンランド外務省のサンナ・プルクキーネン(Sanna Pulkkinen)メコンプログラム担当は述べた。

オルトープ部長はさらに、今年11月に開催されるMRC評議会の場でサイヤブリダム計画についての判断が下されるだろうと述べた。【3】

出来レース?

ラオス政府は、サイヤブリダム計画をめぐる意思決定手続き、つまり協議段階はすでに完了し、事業者であるチョーカンチャーン社(市場価値規模でタイ国内第三位の建設会社)も主な初期工事を進めることができると主張している。

サイヤブリダムが発電する電力の95%は、タイ発電公社(EGAT)が購入することになっている。

ラオス政府の見解は、MRCと支援国政府の双方から強い口調で反駁されている。

「フィンランド政府は(協議が)依然として継続中だと考えています」とプルクキーネン担当は述べた。「加盟国から追加情報の要請が出ていますし、サイヤブリダム計画は今年暮れの閣僚級会合で協議することになります」。

米国を拠点とし、サイヤブリダム計画をおそらくもっとも厳しく批判している環境NGOインターナショナル・リバーズ(IR)は8月初旬の記者発表で、サイヤブリダムの建設現場を訪問したところ、進入道路と作業員宿舎の建設が着々と進行しているのを目撃したと語っている。

「7月23日、サイヤブリダム建設予定地を訪問したところ、バンタラン(BanTalan)村付近に、少なくとも数百人の作業員が滞在する本格的な作業員宿舎が建設されていることが分かりました」とIRは発表している。「ダムに通じる進入道路も建設中で、土地の一部は所有者への補償を済ますことなく更地になっていました」。

4月にも、サイヤブリダム建設予定地に向かう道路がすでに完成し、建設現場からすでに移転させられた人もいるとの報道があった。

5月、ラオスのウィラポン局長は週刊タン・ニエンに宛てた電子メールで、道路の改修は一般住民が使うからということで、県政府から要請があったとしている。

ウィラポン局長は、「現時点では計画がどうなるか分からないわけで、地元住民の役に立とうというのは事業者の判断です」とも書いている。

メコン河流域国政府は1995年のメコン協定によって、ダムを建設する前に政府間で協議することを義務付けられているが、各国には拒否権がなく、外交ルートを通して相当の圧力がかかるにしても、最終的な決定権はラオス政府が握っている。

IRは、MRCと加盟国政府に対して、米国のPerkins Coie法律事務所が作成した専門家所見を提出したとしているが、この所見によると、「メコン協定下では、メコン河の生態系の均衡を脅かし、あるいはメコン河に依存する人びとの必要性を損なうようないかなる決定も一方的には下すことができない」。

「ラオス政府が隣国に協議を尽くすことを許さず、不十分なままで(協議)手続きを一方的に打ち切る行為はメコン協定に反しており、すなわち国際法違反なのです」とIRは述べている。

【注】
英語原文は以下のサイトで閲覧可能
http://www.scandasia.com/viewNews.php?coun_code=fi&news_id=9499

【1】米国上院外交委決議(2011年11月29日)を参照

【2】世界銀行の声明(2010年10月22日)を参照

【3】その後MRC評議会は延期となり、関連会合とともに12月7日から9日までカンボジアのシェムリアップで開催される。

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