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メコン下流本流ダム>サイヤブリダムの行方(その2)〜MRCの調査が本流ダム建設決定の10年延期

メコン河開発メールニュース2011年4月15日

来週にも建設の決定が下されるかも知れない、メコン河下流本流に位置するラオス・サイヤブリダムですが、実はメコン河委員会(MRC)は、この案件も含めた12カ所の下流本流ダムについて、漁業資源や環境に及ぼす影響を総合的に検証する「戦略的環境評価(Strategic Environmental Assessment:SEA)」を委託・実施しています。

そして、この戦略的環境評価(SEA)は、「メコン河のような複雑な河川生態系でのリスクの規模や付加逆性が不明である以上、本流ダムに関する決定を10年間延期し、自然界の営みへの理解を深めるために必要な条件が醸成し、管理・規制手続きが有効に機能していることを確認する調査を3年ごとに実施すべきである」といった非常に重要な趣旨の提言を行っています。

(※)戦略的環境評価の内容については、こちらのサイトで日本語によるまとめをご覧下さい。

この提言は、もちろんサイヤブリダムも視野に入れています。

メコン河本流でのダム建設が流域全体にもたらす環境・社会影響の甚大さ、とりわけ漁業と関連産業への打撃、そして影響緩和の困難さは、MRCも含めた各方面での調査・研究・証言によってこれまでにも十分明らかされている点ですが、この段階で、MRC自身の委託調査によっていま一度確認されたことになります。

サイヤブリダムの建設を見送ることが最も賢明な選択肢と言えます。

以下は、戦略的環境評価の討議草案の内容が明らかになった際の現地報道です。

サイヤブリダムに関するメコン・ウォッチのサイトもあわせてご覧下さい。

MRC報告書、「メコン河本流ダムは影響による損害の方が甚大」

『ザ・ネーション』【1】
2010年7月2日
Chularat Saengpassa/Pongphon Sarnsamak記者

メコン河委員会(MRC)が最近作成した調査報告書で、メコン河本流下流域に計画されている12カ所のダムが、下流のラオス、タイ、カンボジアに暮らす 200万人あまりの人びとに深刻な影響をもたらすことが明らかになった。

「メコン河本流での水力発電に関するMRC戦略的影響評価(SEA):影響調査と討議草案」と題したこの報告書は、本流ダム計画の影響を検証するために開かれた地域協議会の場で公表された。【2】

報告書は、12カ所のダム計画が実行された場合、下流3カ国に暮らす貧困層に被害が及ぶことを示した。こうした人びとは農村地帯の河川沿いに住み、現金収入を得るために農業をはじめとする天然資源に依存度の高い生活を送っている。

報告書によると、ラオスでは、パクベン、ルアンパバーン、サイヤブリ、パクライ、ラートスア、ドンサホン、タコーといったダムが計画されており、タイとラオスの国境には、サナカーン、パクチョム、バーングムの3カ所のダム、また、カンボジアでは、ストゥントレン、サンボーの2カ所でダム建設が予定されている。【3】

報告書は、タイ・ラオス国境のパクチョムダムおよびバーングムダムがそれぞれ、ルーイ県の住民588,189人とウボンラチャタニ県の住民413,140人に影響を及ぼすことを明らかにした。また、これらのダムが、タイ・ラオス間の国境線を変えてしまう可能性もあるとした。

さらに報告書は、メコン河下流におけるダム建設計画が、湿地帯・生態系・経済にも被害をもたらし、湿地帯への損害は年間で2億2,400万バーツ(約6億 7,000万円)に上ると述べている。

報告書では、ダムが12カ所に建設されれば、メコン河の55%の部分で自然な流れがなくなってしまうとしている。ダムによってメコン河は巨大な貯水湖に変貌し、自然に形成された小島や砂州は破壊され、熱帯の淡水魚をはじめとする水棲生物の繁殖も妨害される。ダムの影響は40以上もある支流にも及ぶ。

昨日、タイのPrasarn Marukpitak上院議員は、MRC会合の席でタイの代表団がダム計画に対して反対の声を上げたと語った。

Prasarn議員は、メコン地域の価値・開発・影響を調査する上院小委員会の委員長を務めている。MRC会合には、ラオス、ベトナム、カンボジアからの代表団も出席していた。

「ダムでも発電はできるが、その他にも、あてにできる代替エネルギー源がいくつかある。メコン河の流れは自然のままがいい。人間が妨げるべきではない」とPrasarn議員は述べた。

同議員は、ほどなく小委員会で、政府に対して本流ダム計画への見解を提出し、何らかの行動を求めるかどうか決定を下すと語った。

また、同議員によると、タイ・ラオス両国は、タイがサマック・スンタラウェート首相の政権であった時に、バーングムダム建設のための覚書に署名している。
しかしながら、市民社会から強い反対の声が上がり、タイ側では計画を進めることができなかった。

「ラオス側での建設はすでに始まっている」とPrasarn議員は語った。

【訳注】
【1】記事の原文(英語)は、以下のサイトで閲覧可能
http://www.nationmultimedia.com/home/2010/07/02/national/Mekong-dam-projects-will-cost-more-in-damages-says-30132829.html
【2】SEA最終報告書(英語)および関連文書(英語と加盟国公用語)は、以下のサイトで閲覧可能
http://www.mrcmekong.org/ish/SEA.htm
最終報告書の公開を告げるMRCの報道発表(非公式日本語訳)は、以下のサイトで閲覧可能
http://www.mekongwatch.org/PDF/SEA-MRCrelease(20101015).pdf
【3】本流ダムの数を11カ所とする報道もあるが、これは、新たに提案されたコーンの滝付近のタコーダムを含めるか否かによる。

(文責 メコン・ウォッチ、翻訳 神崎尚美)

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