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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ラオスの水力発電ダム(2)>奪われる土地とセカタムダム

 ラオス水力発電ダム(2)>奪われる土地とセカタムダム

メコン河開発メールニュース2010年12月21日

メコン河開発メールニュースでは、「東南アジアのバッテリー」を目指すラオスの水力発電開発について、現地情報を交え最近の状況を5回にわたってご紹介しています。第2回は、関西電力の進めるセカタムダムの被影響地の状況です。

第2回:奪われる土地とセカタムダム

今年、ラオス南部チャンパサック県にあるボロベン高原を訪ねました。高原と言われるだけあって、標高が高く涼しい気候を利用したキャベツなどの野菜、コーヒーの栽培など農業の盛んな場所です。ここには、メコン河支流の支流が数多く流れています。開けた農園地帯から更に道を上がっていくと、豊かな森や滝などの美しい景観が広がる場所も見られます。豊かなのは表土だけではなく、高原の地中には、アルミニウムの原料となるボーキサイトが眠っているとみられています。また、ここには日本企業が関係する2つのダム計画があります。

その一つセカタムダムは、関西電力株式会社の水力発電事業です。発電能力60.8メガワット、年間発生電力量380GWh、ダム建設が計画されているセカタム川は、ボロベン高原からセナムノイ川、セコン川を経てメコン河に流れ込む清流です。実施可能性調査にはODAも使われています。同社は、経済産業省の「平成17年(2005年)度開発途上国民活事業環境整備支援事業」を受け、調査を行いました。2007年第1四半期まで環境影響評価(EIA)を実施し、2007年末には建設が始まる予定でしたが、着工には至っていません。

これまでの経緯についてはこちらをご覧ください。

ダムの影響を受けるA村には、約600人が暮らしています。村人は自給用の水田での稲作と、現金収入獲得のためのコーヒー栽培で暮らしています。セカタム川での魚とりも日々の暮らしにとって重要です。村人はニャフン族という少数民族です。今は独自の民族衣装などは身に着けておらず、低地のラオ 人と見分けはつきませんが、独自の言語を持ち、他の民族との婚姻関係を持つ世帯はあまり多くない、ということです。この村は、セカタムダム建設に よって水田を全て失うことになります。まだダム建設開始についての話はないそうですが、補償の話は2−3年前から村に届いています。ある村人は、表紙も事業の説明もない補償レートの表を持っていました。表は、土地と果樹、コーヒーの木などの補償レートが一覧となっている簡素なものです。

A村は移住する必要はないのですが、近隣に他に水田適地はないので、現在耕作している水田が水没すれば、実質的には稲作が不可能となり生活が立ち行かなくなります。村の代表は、「企業は1ヘクタールあたり2千万キープ(現在のレートで約2,500ドル)の補償を提示しています。でも、村人の気持ちとしては、金銭ではなく一生使える土地がほしいと思っています。お金はすぐなくなってしまいますが、土地は何世代にもわたって使えるからです」と困惑した様子で話してくれました。

ダムが建設されれば、A村の人々がここで暮らしていくことは不可能です。周辺はプランテーション開発などが進み、次々と企業に土地が分配されている 状況で、村人はたとえ金銭で補償を得ても代替地を手に入れることができないからです。もはや、この地域で余っている土地はないと言っても過言ではありません。

慣れ親しんだ土地を離れ移転することになれば、生活再建への懸念に加え、民族の独自性もますます失われる恐れがあります。

注)情報提供者が不当な圧力を受けないよう、訪問時期と地名は伏せさせていただきました。

(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)

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