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パクムンダム>長引く乾季の影響

メコン河開発メールニュース2010年8月22日

東北タイを流れるメコン河の支流ムン川に世界銀行の支援で建設され、甚大な漁業被害を引き起こし続けてきたパクムンダム。メコン・ウォッチの木口由香は、このパクムンダムの影響地に、1999年から通い続けています。メコン河開発メールニュースでは、この問題の経緯と最近の現地情報について5回にわたってお届けします。

パクムンダムについてはこちらをご覧ください

第1回:長引く乾季の影響

頻繁に干ばつに見舞われている、というイメージが強い東北タイですが、年間降雨量はウボンラチャタニ県で約1500ミリ。これは東京などとほぼ同じ量です。日本と異なるのは、雨のほとんどが5月から9月の間に降ることでしょう。降雨量の差は、乾季と雨季で同じ場所に全く違う環境を作り出します。植物や動物、特に魚はこの環境に合わせた生態をもっており、そこで暮らす人々もそういった自然 資源を季節ごとに使って代々暮らしてきました。

8月は雨季の真っ盛りです。普通なら、毎日のように数時間スコールが降っていますが、今年は全く様相が違いました。6月に現地を訪問した際、村人は手持無沙汰な様子で村にいました。雨季の始まりが遅れ田植えができなかったのです。
その状況が8月初旬まで続きました。60代、70代の人びとが口をそろえて、「生まれて初めて見る天候だ」と話していました。7月下旬に訪問したタイ北部、ラオス中部、南部でも同じ状況でした。

パクムンダムのあるウボンラチャタニ県では7月末、ようやくまとまった雨が降り始め、8月になって田植えが始まっていますが、通常、終わっているはずの作業を今から始めることになります。

東北タイやラオスではデルタ地帯と異なり、河川は低いところを流れています。 水田を灌漑するには電力ポンプなどの補助が必要で、費用がかかるので普及していません。また、東北タイとラオスの一部には地下に巨大な岩塩層があります。灌漑によって岩塩が地表に上がってくる塩害のリスクも非常に高いのです。この ような事情から水田はほとんど天水田(雨水のみで耕作する水田)で、人々は低いところ、高いところに別々のコメを作ることで、稲の生育期間や成熟時期をずらし、洪水や水不足のリスクを平均化する知恵と技術を培ってきました。しかし、 今年は水の届くところに生育期間の短い品種しか作れません。今後の降雨次第ですが、年末、非常なコメ不足が発生する恐れがあります。

パクムンダムの影響地の一部であるピブンマンサハン郡では、コメを売るために作っている人はほとんどおらず、自家消費やバンコクに出稼ぎに出ている親戚に分けるため稲作をしています。村人の現金収入は農業ではなく漁業です。しかし、 パクムンダムの影響地では、今年、人々が待ち望んでいた雨季の始めの魚の回遊も見込めません。

政府が約束したパクムンダムの水門開放が行われていないからです。

ダムよりも約30キロ上流にあるドンサムラーン村のタンボン行政機構議員のパリワットさんは、「自分は昨日、たまたま魚がとれて300バーツ(約800円、バンコクでの最低賃金は約200バーツ)稼いだが、今年の漁業シーズンで稼いだ、と言 える人はほとんどいない。雨季の始まりも遅れたため、今ごろ田植えをしている。田植えの人手も足りず、直播にしているところもある(※)。今年は天候の不順でコメの収穫も予想がつかず、多くの村人が本当に苦労することだろう」と話していました。

異常気象で自給用のコメの収穫が見込めず、政府による水門開放の約束が反故にされ収入源の漁業もできない中、ダムの影響下で暮らす人々は苦境に立たされています。

(※)この地域では、直播にすると雑草が増える。水の管理がうまくいかないと田植えをした場合と比べ収量が大幅に落ちるので、通常は田植えをする。田植えの時期は出稼ぎに出ている人たちの多くが手伝いに村に帰るが、今年は雨季が大幅にずれたため人手が確保できなかった世帯が多い様子だった。

(文責:木口由香/メコン・ウォッチ)

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