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メコン下流本流ダム>メコン河委員会CEOインタビュー

メコン河開発メールニュース2008年12月9日

メコン河下流域で、本流にダムを建設する計画が現実味を帯びてきました。流域の資源の持続的な管理と発展を目的に結成された国家間委員会であるメコン河委員会(MRC)は、2008年9月にこのテーマで初めての討議を開きました。MRCの新しいCEOのジェレミー・バード氏はここでダム開発による魚類への影響が真剣に議論されたと評価していますが、この席に流域住民が招かれることはありませんでした。また、石油価格の高騰などで水力発電ダムへの需要は強くなるだろうということを、MRCが肯定的にとらえていることが伝えられています。以下は、この問題についてIPS通信の記者によるバード氏のインタビュー記事の翻訳です。

質疑応答:石油価格高騰でよみがえったダムへの関心
メコン河委員会ジェレミー・バードCEOインタビュー

Marwaan Macan-Markar記者
(IPS発9月30日ビエンチャン)
原文:http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=44066

東南アジア最大の河川に点在する、連続した巨大ダム建設の青写真を具体化するために今月末に当地で開かれた初めての協議で、メコン河流域に住む漁師の将来についての不安が表面化した。

何人かの魚の専門家は、計画されている8つのダムがラオスやカンボジアを流れるメコン河下流域に悪影響を与え、それによって「魚の回遊への疎外」が引き起こされる可能性を警告している。その影響は10億ドルの経済損失をもたらし、さらにメコン下流域に暮らしている6,000万人の貴重な栄養源に影響を及ぼす。

チベット高原から始まり、中国南方部を抜け、ビルマ(ミャンマー)、タイ、ラオス、カンボジアそしてベトナムを通過する全長4,880キロメートルのメコン河では毎年およそ50種類もの商業的価値のある魚が遡上、降下している。

このような問題では、ダムの開発者たちによって解決が図られるべきだとメコン河委員会(MRC)のCEOであるジェレミー・バード氏は語る。メコン河委員会はタイ、ラオス、カンボジア、ベトナムをメンバーに含む地域的な組織でありメコン河下流域の管理に対し使命を持つ。6ヶ月前からメコン河委員会の指揮をとっているバード氏はIPSのインタビューで、メコン河流域の国々が新たなダム建設に興味を示すことを歓迎していることを明らかにした。

IPS:4年前はメコン河本流下流域へのダム建設の話題は全くと言っていいほどありませんでした。しかしながら、最近になってそこにはラオスとカンボジアにそれぞれ8つと2つのダムを建設する計画も堰を切ったような関心が集まっています。
なぜこのような急激な変化が起こったのでしょうか?

ジェレミー・バード氏(以下JB):メコン河本流域へのダム建設計画は1950年代から話し合われていますが、移転者を出すことへの不安からそのような巨大なダムは建設されませんでした。1990年半ば、メコン河委員会の前身組織であるメコン事務局は、多数の可能性のあるダム建設プロジェクトを検討していました、それらはより小規模なダムでした。しかしながら、1997年のアジア金融危機や特にタイでの(電力)需要減少の影響でそれらの計画は実行されませんでした。だが、今なぜダム建設の関心が関係者の間で高まっているのか。それにはいくつかの理由があります。まず石油やガソリン価格の高騰があり、一方で地球温暖化による再生可能技術として水力発電へ世界的に幅広い関心が寄せられていることがあります。また、中国、マレーシア、タイから資金調達が可能なことも一因となっています。

IPS:誰がこれらの計画を運営し、誰の利益になるのでしょうか?

JB:流域地域全体が電気需要の増加を実感しています。ベトナムでの毎年の電気需要伸び率は15%から16%に上ります。タイも同様で、ラオスで発電された大量の電気がタイに送られています。さらにここラオスでも、消費は比較的少ないですが、国内での鉱業の発展により大量のエネルギーが必要になることが考えられるでしょう。

IPS:それは私たちが知っているメコン河が、ダム建設後全く別の姿になることを意味しているのでしょうか?

JB:ダム建設の計画は現段階ではただの計画にすぎません。それらの実施に至ってはまだ承認を得ていません。取りかかるにはもっと調査することがたくさんありますし、1995年の合意(本流ダムの建設にはメコン河委員会メンバー全4カ国の承認を得なければならない)の下、さらに協議する必要があります。それに、この段階でいくつの計画が実行に移されるかを明言することは困難です。いかに
も、ダムは河川の進路を変化させます。川の流れ、堆積パターンを変化させ、さらに魚の回遊に影響を与えます。それらのいくつかについては影響を軽減できるでしょう。しかしながら、その他ではもっと複合的な解決策を要求されますし、同様に社会的な影響も発生します。

IPS:現段階での調査ではメコン河流域漁民の毎年の経済的価値は30億USドルとされています。漁から恩恵を受けている人々はかなりの数存在し、彼らは川沿いに住む貧困層です。しかしながら、ダムによって利益を得るのは選ばれた一部の人々となるでしょう。あなた方は今ここに、漁業かダムかという二者択一の状況を生み出しています。それによって経済的最貧困層の人々が失うものはダム建設関係者の想像をはるかに超えて高いという危険性があるのではないでしょうか?

JB:それは、問題に対する対処がなされない場合の話で、今や誰もが問題解決を議論しています。今回の会議の重要性の一つは、魚の回遊の問題が議論の中心となったことだと思います。私たちはこの問題について数え切れないほどの発表や質問を耳にしました。思うに、その問題はダム開発者でさえ承認しています。何よりもまずそれらの影響を回避することを目標に最大限の努力をするでしょう。
万が一回避が不可能な場合はそれらを最小限に抑え、影響をできる限り軽減させます。 そうした努力を行う中で、他の概念である利益の分配についても議論されていると思います。あなたの質問にあった二者択一の概念には勝者と敗者がつきまといます。私は、どんなときにも人々が現状を維持できるような、双方が満足できる結果が得られるとは思っていません。しかしながら、勝ち負けが出るような状況は避けることができるでしょう。

IPS:1994年にタイにパクムンダムが建設された後に起きたような問題を今回のダム計画で生み出してしまう可能性もあります。中でももっとも際立った問題は、魚の回遊が妨げられ、メコン流域最大の支流域で生活していた9,500世帯に影響を及ぼしたことである。このような問題についてどう考えているのでしょうか?
世界ダム委員会でさえこの問題について報告書で注意を促し、そのようなダムは建設されるべきではなかったと言っています。

JB:あのプロジェクトや、他の数多くのダム建設事業の結果、回遊魚の重要性や回遊魚が人びとの生計に及ぼす影響について、私たちの理解はずいぶんと深まりました。私が思うに、現在われわれが持っている知識のレベルは当時プロジェクトが計画された頃よりも、ずっとずっと良くなっていますし、計画過程での公開討論の水準も高くなっています。

IPS:今回は、メコン河本流の水力発電開発に関する最初の協議会であり、あなたは政府関係者から、ダムや魚の専門家、果てはダム推進者といった高名な人びとを招待しましたが、議論されているような苛酷な変化に今まさに直面している、川沿いで生活している地元の住民たちが招かれていないのは、なぜなのでしょう?

JB:私は現段階で、今回のように、英語を使い、さらになじみのない環境の中で行われるような会議については、地元の人びとが直接関わらないからといって、問題だとは考えていません。もし今回の会合に住民を招いていたら、住民の直接参加という手続きにいくばくかの正当性を与えるために、うわべだけを取り繕うやり方を採用したと非難されていたことでしょう。私たちにとって重要なことは、地元の人びとの懸念や問題を理解することであり、それにはいろいろな手段があります。そうした目的のために、村落レベルでの協議会などたくさんの機会を持つつもりです。

(翻訳 内山智晴/メコン・ウォッチインターン、文責 木口由香/メコン・ウォッチ)

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