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パクムンダム>現地報告:困窮する影響住民

メコン河開発メールニュース2008年2月24日

2007年6月15日に、メコン河開発メールニュースで、「タイ・パクムンダム、政権代われど問題変わらず」としてお伝えした、パクムンダム現地の状況です。

 住民の強い運動で年間4ヶ月の水門開放が行われている同ダムは、昨年タイの政治的な混乱のあおりを受け、本来決められた5月初旬ではなく、8月12日に開放されました。これは5月から6月に見られる回遊魚のムン川への遡上(そじょう:魚が川をさかのぼること)を完全に逸したものでした。パクムンダムの一番の問題点は、支流ムン川と本流メコン河の魚の移動を妨げ、流域の漁業資源に大きな影響を与えた点です。ムン川下流域では今年になっても、ダムが通年で閉鎖されていた時と同様な不漁が続いています。

 以下は調査で現地を訪れた際の報告です。

 なおパクムンダムのこれまでの経緯については、 パクムンダムを ご一読下さい。

現地報告:困窮するパクムンダム影響住民

2008年2月24日

 2008年2月、ムン川の河口に位置するダン村とターペー村では、昨年と比較して20%ほどの漁獲しかないといいます。一日の収入は100バーツ(400円弱)、破れた網の修繕や船のエンジンのガソリン代を引くと手元に残る額はわずかなもので、多くの人が漁に出ることをあきらめています。村の近くの観光地で「メコンの魚」と看板を出している店が扱っているのはラオスやカンボジアから密輸されている冷凍の魚かタイ国内から来る養殖魚やエビです。両村とも、岩盤の広がる地域に位置し、耕作適地はわずかしかありません。ターペー村では多くの住民がサトウキビ刈の出稼ぎで他県に出ています。その収入も一日200−300バーツというものですが、家族で出かければ多少の蓄えを作ることが出来るといいます。

 村に残っているプッターさんは、農地を持っておらず、漁一本で生活してきました。今年はその彼も船を片付け、周囲の森の中を一日中歩き回って木に巣を作る赤蟻(ツムギアリ)のサナギを採っています。この蟻は、嗜好品として市場で取引されるからです。一日の収入は120−130バーツにしかなりませんが、投資をしなくてすむために漁よりも利益があるといいます。今年は特に森に入って採取をする人が多く、非常にたくさんいるこの蟻すら採りつくしてしまうかもしれないと人々は心配しています。

 「この蟻は養殖できますよ。でも、私のように土地のない村人はそれすら出来ない。木を植える場所がありませんからね。中学生の息子も漁が好きで、放っておくと一晩中川に出て行ってしまいます。しかし、私の時代のように漁で生きていくのはリスクが高すぎる。いつ魚が獲れなくなるか分かりませんから。将来をだめにしてほしくないので、彼には、『お願いだから学校に行ってくれ』と言っています。」

 彼のように土地という別の資源や転職するための学歴、出稼ぎに耐えられるだけの体力・年齢、こういった要素に欠ける人は、不安定であっても川や森の資源に依存して生活せざるを得ません。この状態から家族が抜けるのは、子供たちが成人し都市でよい給与を得られる仕事に着くことが必要です。しかし、不安定な収入から保護者が教育費の負担に耐えられず、進学を断念する子も少なくありません。ダムによる貧困は次世代にも影響しているのです。

(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)

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