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ラオス・ダム>大きな被害をもたらすナムグム川流域のダム開発

メコン河開発メールニュース2008年2月4日

1月22日、ビエンチャンで、ナムグム3水力発電事業の累積影響評価の成果を報告するワークショップが開催されました。

現在、ナムグム川流域には、ナムグム2・3・5、ナムリック1・2、ナムバーク1・2といった水力発電ダムが、建設・計画されています。これらの新たなダム計画によって、住民移転、漁業などの流域住民の生計手段の喪失、魚の回遊ルートの遮断や水生生物の生息地の破壊といった、多くの環境社会影響が懸念されています。

尚、この累積影響評価には、アジア開発銀行(ADB)の日本特別基金(JSP)が使われていますが、すでに多くの計画が着工・承認されている中で、その提言の実効性には疑問が持たれています。

以下、タイのNation紙のレポートの翻訳です。

多大な被害をもたらすラオスのナムグム川流域のダム開発:レポート

社会環境影響についての報告書によれば、ラオスのナムグム川流域に計画されている一連のダム事業は、広大な面積を水没させ、魚の回遊ルートを遮断することよって、数万人の人々の生活に深刻な影響を与えることになる。

The Nation紙、2008年1月23日
Supalak G Khundee記者

アジア開発銀行(ADB)の支援を受けて、Vattenfall Power Consultant社がまとめた報告書が、昨日(1月22日)、ラオスの首都のビエンチャンの会合で発表された。ADBはナムグム3水力発電事業に融資を行うことになっている(【訳注1】)。

ラオス政府は、主に隣国のタイに輸出する電力を発電するため、ビエンチャン県のナムグム川流域に、いくつものダム建設を計画している(【訳注2】)。

これらの計画には、現在建設中のナムグム2ダム、調査が実施されているナムグム3ダムなどが含まれ、ナムグム5ダム、ナムリックダム、ナムバークダムは、準備段階である。

この調査は、水力発電と灌漑開発に関する3つのシナリオを検討したもので、調査によれば、一連の事業によって、魚の回遊ルートが遮断され、河川の生物の生息域が破壊され、水質が影響を受ける。特に、水生の生態系には深刻な影響が見られた。

報告書の要約によれば、ナムグム2ダム、ナムリックダムが建設されれば、今あるナムグム1ダムの貯水池の水質は大きな影響を受け、重要な回遊ルートが遮断されることになる。

「メコン河との間の現在の回遊ルートは、ナムグム川流域で唯一残されている、自然のままの水路であり、Pangasids(ナマズの仲間)やCyprinids(コイ科の魚)など、重要な種の回遊ルートになっている。ナムリック川は、3万人以上の人々の生活を支え、そのうち多くの人々は漁業に強く依存した生活を送っている」と報告書に書かれている。

本紙が見たところ、報告書には、「代替手段をほとんど持たない自給自足の農民、貧しい人々、土地のない人々、民族やその他の点で社会的に弱い立場にあるグループなどは、居住地域や漁業に影響が生じることで、もっとも深刻な打撃を受けると見られる。また、大方の予想では、ナムグム2ダムの新しい貯水池における貯水池漁業の可能性は月並みか、それ以下だと見られている」とある。

ラオスでは、水力発電セクターの開発が急速に進んでいる。政府はナムグム川流域の一連のプロジェクトによって、2020年までに1,800〜2,100メガワットの電力を発電できると見積もっている。

ラオスは、これらのプロジェクトが、貧困削減のための収入を生み出すことを期待しているのである。

しかし、水力発電事業が貧困削減計画を台無しにしてしまうことも考えられる。ダムから得られる利益を影響住民とシェアするための、歳入管理や法的な強制力を持つ契約などがなければなおさらである。

「水力発電開発が地方の貧しい人々にどのような影響を与えるのかは、公の利益分配のメカニズムを通じて、水力発電事業が生み出す収益を、影響住民が直接得られるように保証する具体的なメカニズムを実現できるかどうかによるところが大きい」と報告書にある。

環境活動家によれば、政府の計画と運営方法は、透明性に欠け、事業によって影響を受けるであろう人々がきちんと参加できるようにはなっていない。

インターナショナル・リバーズ(【訳注3】)のラオス・プログラムの代表であるShannon Lawrence氏によれば、「個々のプロジェクトの社会環境影響や累積的な環境社会影響が十分に評価される前に、水力発電事業を進めるという決定はされてしまっている」。

「連携が取られていない開発や、貧弱な流域管理は、投資家にも地域住民にも大きなリスクをもたらす」と彼女は言う。

タイの投資企業には、Ch Karnchang,、Ratchaburi社、Bangkok Expressway社、GMS社が名前を連ねていて、これらの企業はナムグム2ダムやナムグム3ダムの株式も保有している。

 

【訳注1】 実際にはADBが支援を行っているのはナムグム3水力発電事業の累積影響評価、モニタリング・プログラムの実施、キャパシティ・ビルディング等の技術協力であり、現在のところ、ダム建設事業への融資には関わっていない。

【訳注2】 ナムグム川の流域は、ビエンチャン県、ビエンチャン特市、シェンクワン県、ルアンパバーン県、ボリカムサイ県にまたがる。

【訳注3】 アメリカに本部を置く環境団体。

(文責・翻訳 東智美/メコン・ウォッチ)

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