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ベトナム・アーヴォンダム>JBICは融資を断念

メコン河開発メールニュース 2007年2月2日

日本の国際協力銀行(JBIC)は、住友商事が発電機を受注して建設が進められているベトナム中部クアンナム省のアーヴォン水力発電ダム事業への融資を断念しました。

これは先週木曜日(2007年1月25日)、JBICがメコン・ウォッチとの会合で直接語ったものです。JBICの説明によりますと、1月15日に実施機関であるベトナム電力公社(EVN)から融資の依頼を取り下げる旨、連絡があったということです。

JBICによれば、昨年12月18日のニュース23(TBS系)で、このダムに伴う移転地の地すべり、生計回復の困難さ、自然環境への影響について報道されたことを受けて、1月10日から3日間現地に調査団を派遣しました。その結果、ニュース23で報じられた地すべり箇所は概ね修復が終了し、生計回復に関しても問題はあるものの実施機関や地元人民委員会は危機感を持って対応を検討しているとの評価をしていました。その直後に、EVNから融資の取り下げがあったということです。

しかし、複数の関係者の話では、EVNからの連絡に先立って、JBIC自身が自然・社会環境面でのリスクの高さから手を引くことを事実上決めていたのではないかということです。EVNからの融資取り下げというのは表向きの理由と言えるかもしれません。

ではなぜJBICは「環境ガイドラインに照らし合わせて審査した結果、融資をしないと決定しました」と言わないのでしょうか。考えられる理由は、第一に、そう言ってしまうとEVNなど実施機関との関係を悪くする恐れがあること、第二に、融資をしない判断基準を具体的に明示せざるをえなくなることへの危惧があるのではないかと考えます。しかし、もし環境ガイドラインを適切に運用した結果、融資できないと判断したのであれば、胸を張ってそう言って欲しいですし、そのことは公的金融機関としてのJBICの信頼を高めることにつながるはずです。また、JBICの適切な融資審査の結果としてではなくベトナム側から断ってきたことを強調することで、途上国政府が『日本離れ』をしていて、それが中国などの影響を強めることになるという主張にすりかえられる恐れがあります。

一方で、メコン・ウォッチとの会合で、JBICは問題はほぼクリアしていたと説明しましたが、つい最近現地を訪れたベトナム人研究者らの調査チームによると、以下に述べるように移転地はとてもそんな状況ではないようです。

与えられた農地では満足な収穫ができず、住民の不満は極限に達しています。3箇所の移転地のうち、最も状況が深刻なアルア再定住区では、水田が与えられていませんし、他の2箇所の再定住区も水田用地に水が来ておらず、アカシアが植えられています。重要な生計手段のもとであった家畜の数も半減し、住民は補償金や政府の補助金で食いつないでいるという有様です。

「生計手段がない現在、我々は政府に飼われているようなものだ」
「この村は電気と道路と診療所と学校しかないんだ、水も農地も無いんだ」
「与えられた家は夏は暑くてすめず、冬も寒くて住めない」

と住民は言います。まだ土砂崩れの跡が生々しく残る移転地では、更なる崩壊の危険性も高く、問題がクリアされたとはとても言えない状況です。アルア再定住区における生計回復計画は住民の反対で撤回され、次の雨季に不安を抱えている住民たちは、移転地を放棄して新しい土地に移り住む計画を立てているほどです。地元の人民委員会はこうした問題を把握しているものの、抜本的な解決策は見出せていない状況だということです。

 

移転住民への対応を後回しにして建設優先で進められているダムが引き起こす問題を事後的に解決することは、日本の政府機関が入ったところで容易なことではありません。JBICが融資を断念したものの、発電機を受注した住友商事が撤退したという話は聞いていません。もし住友商事がこのダムでビジネスを続けていくのであれば、企業の利益を還元するなどして、移転住民の生活と生計の安定に協力する責任があるのではないでしょうか。

なお、この事業の概要と問題点については、以下のウェブページを参照下さい。
アーヴォン水力発電ダム

 

参考資料:「アーヴォンダム再定住区フォトレポート」

 

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