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カンボジア立ち退き問題>プノンペン洪水対策事業でもJICAに要望書

メコン河開発メールニュース 2006年7月23日

引き続きカンボジアで日本のODA事業に伴う住民移転が引き起こしている問題のニュースです。プノンペン市の洪水対策事業で移転した住民たちがJICA現地事務所長宛に要望書を提出しました。

以下、メコン・ウォッチの後藤歩による解説と、土井利幸による要望書の邦訳版です。


JICAが調査をおこない、外務省が無償資金協力をおこなっているカンボジア国道一号線の改修事業においては、住民移転に対する補償方針が妥当である理由の一つとして、過去に移転がおこなわれたプノンペン市洪水防御・排水改善事業で問題がなかったことが引き合いに出されています。しかし、その事業で移転した住民から、今年の6月、JICA宛てに移転後の生活苦の問題解決を求める要請文が出されました。

トンレサップ川がメコン河と合流する地点に位置するカンボジア・プノンペン特別市では洪水が頻発します。この洪水を制御する目的で、2000年初頭からアジア開発銀行(ADB)などの資金協力で市内の堤防や水路の整備が進んでいます。
プノンペン市南部の堤防のかさ上げ、水路の整備、ポンプの設置には日本の無償資金協力(「プノンペン市洪水防御・排水改善計画」)も供給され、これに先立つ実施可能性調査などの技術協力(1998年〜1999年)はJICA(当時の国際協力事業団、現在の国際協力機構)が実施しました。

問題は工事地域の住民の移転です。プノンペン市は2003年(住民によれば2002年)200世帯を超える住民を約6キロ離れた再定住地(チュモコル第1村コックバンチアン集落)に移転させました。再定住計画はプノンペン市の責任で実施され、元居住していた土地の権利書の有無に関わらず再定住のための代替地が支給され、生活道路なども整備されました。

ところが、今年(2006年)4月にメコン・ウォッチがカンボジアNGOフォーラムの協力を得て行った現地聞き取り調査では、移転した住民は多くの問題に直面していました。とりわけ、遠くなった職場への交通運賃が大きな負担となっていたり、商売への集客が元通り望めず収入が激減していたり、生計回復をはばむ大きな問題が生じているとのことでした。あげくには、借金返済のためにせっかく支給された代替地や新築した家屋を売り払って、再定住地からすでに転居してしまったという家族も目立ちました。

一方、再定住地でがんばっている住民が直面している大きな問題は電気の供給です。民間会社から電力を購入する手はずにはなっているものの、実際に供給を受けるには引き込み電線やメーターなどの設置料を住民が負担しなければなりません。また公共の電力に比べて割高で、たとえ供給を受けられるようになっても月々の電力料金が将来的に大きな家計負担になります。そもそも住民は、かつて住んでいたところですでに設置料を支払って公共電力の供給を受けていたのだから、再定住地においても当然より安価な公共電力を使える状態になっているべきだと主張しています。

昨年(2005年)、住民はこの問題をカンボジア電力公社(EDC)に訴えましたが、未だに聞き届けてもらっていません。そこで、今年6月、住民はついに移転の原因となった計画を全面的に支援したJICAに対して問題解決のための協力を求めることにしました。電力供給のみならず無料診療所の建設は、洪水防御計画実施に際してJICAが約束した条件だと住民は理解しています。住民の要請に対するJICAの対応を注視したいと思います。

住民の移転・再定住は、現在カンボジアで実施されている多くの開発プロジェクトに共通する問題で、チュモコル第1村コックバンチアン集落もそれらのケースの一つです。しかも、こうした問題が十分に検証・教訓化されないまま、住民移転をともなうあらたな開発プロジェクトに対して日本の政府開発援助(ODA)をはじめとする開発資金がさらに使われようとしています。

以下は、チュモコル第1村コックバンチアン集落の住民がJICAに送付した要請書簡(原文クメール語を英語から翻訳)です。


JICAカンボジア事務所代表殿

プノンペン市ダンコー区チョムチャオ地区
チュモコル第1村コックバンチアン集落長

 

要請:集落への公共電力供給に関するカンボジア電力公社(EDC)との仲介
参照:集落への公共電力供給に関するカンボジア電力公社(EDC)への要請

(2005年6月16日)

標記の件につきまして、プノンペン市内の水路両岸に居住しておりましたブアンサラン、ストゥンメアンチュイ、トムナップトゥックの三つの集落からJICA代表に申上げます。プノンペン市は三つの集落の住民を市内ダンコー区チョムチャオ地区チュモコル第一村にあるコックバンチアン開発地に移転しました。現在217世帯が居住していますが、この者たちの氏名の一覧と捺印を添付いたします。

私は集落長として集落を代表して、JICA代表とカンボジアNGOフォーラムがプノンペン市当局ならびに関係部局に対して、集落が直面しながらも解決できない以下の重要な問題に対処するよう仲介していただきたく謹んでお願い申上げます。

1) 集落への公共料金による電力供給

2) 移転計画にある診療所の建設

また、三つの集落は2002年8月にコックバンチアン集落開発地に移転し、一世帯につき100キロの米を一度受給したことをお伝えしておきます。プノンペン市とJICAによって下水設備、ラテライト道路、清潔な水の供給といった基幹整備も行われています。

以上、JICA代表に対して、電力供給と診療所建設が実現するよう仲介していただきたく、謹んでお願い申上げます。

2006年6月12日
コックバンチアン集落長(署名)
チョムチャオ地区長承認(署名)


参照:カンボジア電力公社(EDC)宛電力供給の要請

私どもプノンペン市ダンコー区チョムチャオ地区チュモコル第一村の住民は、チョムチャオ地区長を通して、カンボジア電力公社総裁にチュモコル第一村への電力供給のお願いを謹んで提出させていただきます。

私どもは公共電力の供給を受けておらず、代わりにあるのは非常に割高な民間会社の電力供給だけで日々の利用に不都合を生じています。夜間に電灯もなく盗難の発生におびえています。

チョムチャオ地区チュモコル第一村に住む住民は全員、政府の計画にしたがったプノンペン市当局によって、水路両岸のブアンサラン、ストゥンメアンチュイ、トムナップトゥックから移転させられてきたことを申上げておきます。2002年8月に234世帯がチョムチャオ地区のチュモコル第一村に移転いたしました。
以上、カンボジア電力公社総裁に私どもの要請をお聞き届けいただきたく謹んでお願い申上げます。

末筆ながら、チュモコル第一村住民一同、総裁の御多幸をお祈りいたしております。

2005年6月16日
住民代表(署名・捺印)
集落長確認
地区長署名

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