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雲南・森林>違法伐採とユーカリ植林   

東南アジアで大きな問題を引き起こしてきたユーカリ植林が、中国・雲南省でも原生林の破壊の隠れ蓑として進められているようです。さらにその問題が、中国の中央政府と地方政府の対立や、中国での不買運動などにつながっています。

以下、雲南省のユーカリ植林と違法伐採をめぐる動きについて、メコン・ウォッチの大澤香織(雲南省・昆明)の報告と翻訳記事です。


昨年11月、グリーンピース・中国によってAPP社の中国雲南省での違法伐採が暴露されたことは日本でも一部伝えられました。これを受けて今年3月に中国国家森林局による通達が出されましたが、それにもかかわらず先月下旬現在、依然として違法伐採が継続していることが明らかになりました。

以下の記事からは、原生林の伐採を禁じて保護を推進しようとする中国北京政府の意図と、それに反する雲南省政府の行動や、東南アジアの他の国々同様、ユーカリ植林が原生林破壊の隠れ蓑になる現象が雲南省でも起きていること、さらに中国で消費者運動としてボイコットが起きたことなどが読み取れます。

非難の対象となっているAPP社については、インドネシアやカンボジアでの違法伐採が過去に問題を引き起こしており、短期間で大量の搾取を行った後にすぐに現地から引き上げる手法が知られています。8月12日づけの別のアジア・タイムズ記事では、APPの中国における事業拡大の背景には、この企業の過去の環境面での悪質な実績にもかかわらず、信用貸付を続ける中国の銀行の存在があると報じています。

http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/GA06Ae01.html

雲南における天然林の違法伐採、さらに継続

アジア・タイムズ、2005年8月9日、Rui Xia

昆明―

シンガポールに拠点をもつアジア・パルプ製紙(APP)インドネシアのSinar Masグループの一部、は中国の西南部、雲南省における天然林の違法伐採で糾弾さている。伝えられるところによるとこの森林伐採は、APPと雲南省政府が協力して行っている大規模なWood- for- Paper(紙のための木材を)プロジェクトによって引き起こされているという。グリーピースのHuang Xu氏は、プロジェクトは雲南の約200万ヘクタールの地域にわたっており、大部分は現在も原生の熱帯雨林である、とアジア・タイムズに対して語った。中国の国家森林局(SFA)による今年3月の通達にもかかわらず、APPによる違法伐採は止まっていなかった。これは今月、雲南省の情報筋が伐採が中止されていないことを確認したものだ。抗議の一環として、環境団体や学生グループらがAPP製品のボイコットを始めている。

ニューズウィーク誌によって暴露されたこのスキャンダルは、グリーン・ピースにより2004年末に取り上げられた。グリーン・ピース中国の調査では、2002年にAPPと雲南の省政府によって結ばれた契約を参照し生長速度の速いユーカリのプランテーション植林が、雲南省の南西部分の広大な地域で行われていると述べられている。プロジェクトはまったくの不毛な土地で行われる、というAPPと現地政府の主張とは対照的にいくつかの環境団体は調査の結果、大部分の地域は実際は原生林である、と主張している。1998年以来、中国は原生林の伐採を禁止しており、「Great Green Wall」政策の一環として植林プログラムを進めている。これは政府が中国の経済と環境にとって、森林の重要性を認めたためだ。しかし省政府はしばしばこれらの規制に従わず、急速な開発と税収入を求め、どのようなコストを払ってでも外国投資を促進しようとしている。

グリーン・ピースと世界自然保護基金(WWF)の報告書およびメディアのレポートによって国家森林局は調査を開始し、その結果を3月末に公表した。新華社の公式ニュースによれば森林資源管理局の副代表であるWang Zhuxiong氏はAPPが雲南省の思茅(スーマオ)地区において違法伐採を行っている容疑を確認した。「われわれはAPPにも省政府にもどちらにも責任があると信じている」とWang氏は言う。しかし同時に雲南における主要な新聞社である雲南日報と春城晩報は独自のレポートを出し、現地政府は何の間違ったこともしていないと言明した。もしAPPがこの件で有罪だと確定されれば、この企業は中国での環境の侵害で、初の有罪判決を受けることになる。個人の場合、この罪は7年間の禁固刑となる。


中国の環境保護団体、アクションをとる

グリーン・ピースのキャンペイナーはアジア・タイムズに対して以下のように語った。SFAの報告に勇気付けられ、環境団体と学生グループはAPP製品のボイコットを始めた。抗議行動は北京や広州を含む中国の主要六都市で、2005年5月から6月 にかけて行われた。学生らは大型ショッピングセンターの前でデモを行い、この企業の製品を買わないよう呼びかけた。こうしたボイコットは中国では目新しいことで、急激に発展している市場経済における消費者意識の新段階を示している。しかし彼らの明確な利害関係にもかかわらず、雲南の学生グループは現地政府からの圧力を恐れてデモには参加しなかった。

筆者が7月末に違法伐採が行われているという思茅(スーマオ)県を訪れると、地元の住民は、今年3月のSFAの通達後にも天然林の伐採は続いている、と言う。思茅(スーマオ)森林保護局はこれを否定し「すべての植林事業は国家の規制に従って荒地で行われている」と言う。局のZhang氏はいくつかの例外的なケースでは、違法伐採は地元の農民によって行われており、地元政府はすぐにこれを止めさせる、と約束した。しかしグリーン・ピースとWWFの研究者は、APPこそが伐採者だという主張を堅持しており、少なくとも1万畝(660ヘクタール)の面積の熱帯雨林が今年、伐採されたと報告している。プロジェクト全体の規模はこれよりさらに大きく、2002年のAPP中国と雲南省政府の協定によれば2750万畝の雲南省西南部がユーカリの植林地になろうとしている。Huang Xu氏はこれらの大部分が天然林だという。

商業森林伐採は思茅(スーマオ)および瀾滄(ランツァン)付近で7月末に確認された。しかし現地政府はそうした活動の存在について積極的に語ろうとはしない。木材を積んだ何台ものトラック――時折、古い常緑樹や松の木などの大木を含むが、その多くはユーカリの木である――が、思茅と瀾滄のあいだの狭い道を通って行くのが見られる。思茅の山がちな景観は変化しつつある。それは薄緑のオーストラリア産ユーカリの果てしない列が、かつて深い松の森であり、豊富な熱帯林であったところに現れたからだ。私が瀾滄を訪れた際、地元の農民たちは話すのをいやがった。しかし何人からの村人たちは、大規模な伐採が行われていることを確認しており、プジェクトが多くの地域でキノコの採取や松の木からの松脂採りに依存する人々の生計を脅かしている、と主張している。瀾滄はビルマ国境からさほど遠くないにぎやかな市場の町だ。ここは雲南の多くの少数民族のひとつであるアニ族の人々が集まる地域の中心地である。しかし、売り手たちはこうしたキノコをとるのはますます難しくなっているという。「森は小さくなってきている」。ある年配の女性は私に茶色のキノコのはいったビニール袋を手渡しながら言った。

雲南の科学者もこれに同意している。そして継続中の森林伐採について懸念を示 している。彼らはこうした大型森林伐採と商業プランテーションの環境への影響は重大だろうと懸念している。それには浸食、洪水、生物多様性の喪失などが含まれる。中国国境内で姿を消しつつあるアジア象を含む、多くの絶滅危惧種が天然の生息地を失い、被害を受けるだろう。

省政府はプロジェクトを支援

7月16日、雲南共産党の副書記長、省の行政階級のなかで二番目に高い地位にある、がAPPのプロジェクト・エリアの中心である瀾滄で計画外の会議を開いた。副書記長は、省政府は「森と紙の循環する経済」を引き続き支援する、と雲南日報に報告した。この報告のなかでは特定のプロジェクトについての言及はなかったものの副書記長は、省政府のエコロジー的価値と雲南の森林への保護へのコミッ トメント及び現地の人々の権利を強調した。省政府は、植林が重工業に頼れない雲南の貧困地域を開発する方法であり、またさらに多くの木を植えることで洪水防止にもつながる、としている。

しかし森林を専門とする科学者は、モノカルチャー・プランテーションは生態系 に良い影響をもたらさないばかりでなく、生物多様性を害し、水資源や耕作地に深刻なダメージを与えると主張する。ユーカリの木は、生長が速く、すぐに現地に根付くため、特に製紙産業から人気がある。しかし国連食糧農業計画(FAO)の研究によって、この大規模な使用による負の影響が明らかになっており、大規模なユーカリ植林を止めるべきだとの勧告がでている。「集水域における伐採地でのユーカリ(植林)はどのような場合でも水産出量を減少させる」とこの機関の報告書は述べている。水資源を枯渇させ、土壌への化学的な反応はまた、農民らが生計を支えるための穀物を育てる能力に影響を与える。中国はいまやブラジルについで、世界第2位のユーカリ植林国である。

最近まで、中国でもっとも貧しく、もっとも後進的な省であった雲南は、現在、おそらくもっとも急速に発展する経済を有している。この山がちな南方の省はまた、中国の省のなかでも地形的にもっとも多様な省であり、気候は熱帯から高山性気候までをまたがる。揚子江の上流、メコン川、サルウィン河は雲南の高い山々や狭い峡谷をまがりくねって通りぬけ、多くの小さな気候帯を形成し、野生動物の豊かさを生み出してきた。この独特な位置が意味するのは、雲南における生態系の変化が、雲南省それ自体からは遠くなれた中国全土及び東南アジア大陸部にも、重大なものとして感じることができるだろうという事実だ。

APPのプロジェクト地の一部はメコン河(中国では瀾滄江として知られる)上流部の近くに位置している。森林の専門家は、この地域における大規模なユーカリ・プランテーションが河川生態系をも脅かすと信じている。そして水位の低下はメコンに多くを依存する下流のラオス、ベトナム、ビルマ、カンボジア、タイにも影響を与えるかも知れないという。雲南省政府が多国籍企業による投資からの大規模な税収入を求めている一方で、いくつかの草の根現地レベルの政府は省がその開発を依存すべき源は他にもあるはずだと主張する。雲南の茶、コーヒー、キノコは世界的にもみとめられている。また発展している観光業は、省内の資源を利用することで、より長期的かつ持続可能な発展と、雲南の人々の豊かさに役立つという。ある匿名希望の森林科学者は、プランテーション事業につい 「非常に懸念している」と言う。雲南エコネットワークのChen Yongsong氏は、問題の一部は、現地住民の情報や法的システムへのアクセスが欠如していることだという。「雲南での森林保護についてはまだまだ長い道のりがある」とChen氏は言う。

APPの海南製材所

APP、シンガポールに拠点をもつこの企業はSino-Indonesian Sina−Masグループによってコントロールされ、世界でも有数の製紙会社である。この企業は1996年 に中国でのビジネスを始め、中国の子会社チェーンを通じて営業している。近年 、このAPPの事業行為に関して多くの不満が提出されている;いくつかの国で調査が進行中である;10億ドルもの負債によってこの企業はニューヨーク証券市場のリストから外された。奇妙なことに、倒産の危機に直面しながらもAPPは中国において拡大を続け、2004年には海南島のGold Hai製材所の操業を始めた。これは中国で最大の製紙工場である。

環境保護グループと中国のメディアは製材所の規模が海南のプランテーションの生産能力を超えており、それゆえ生産需要を満たすために天然林を伐採している、 と警告している。

グリーン・ピースのキャンペイナーであるHuang Xu氏は製材所が深刻な汚染と南シナ海における海洋生物への害をあたえるという証拠があると言う。海南島でのプランテーションが製材所の需要を満たさないため、この企業はその目を中国の他の地域へと向け始めた。APPはインドネシアにおける過去の大規模違法伐採のかどで告訴されており、この6月、アジア・タイムズはこの企業のカンボジアにおける森林の違法活動について報告した。APPは現在、マレーシアとロシアにおいて同様のプロジェクトを計画している。

ボイコットの継続と現地住民が不満を表明しているため、SFAの調査は長引いている。多国籍企業及びあぶく銭のために動く辺境の省現地政府に対して、中国北京政府がその先進的な環境規制をうまく執行できるかどうかは、さらに今後見守ってゆかねばならない。


*Rui Xiaは中国在住の西洋人教師、フリーランス・ライターである。Rui Xiaは 非公式の中国名。


関連するグリーンピースの情報は以下の通り。

グリーンピース・中国によるレポート
「Investigative Report on APP's Forest Destruction in Yunnan(英文)」 http://www.greenpeace.org.hk/eng/document/APP-Report-English.pdf.

グリーンピース・中国 プレスリリース (2004/11/16)
「Greenpeace exposes APP's illegal logging operations in Yunnan」:
http://www.greenpeace.org/china_en/press/release?item_id=649802&campaign_id=

グリーンピース・中国 プレスリリース (2004/12/16)
「Greenpeace Exposes New Evidence of APP's Illegal Logging in Yunnan」 :
http://www.greenpeace.org/china_en/press/release?item_id=683882

APP社に関して掲載しているグリーンピース・日本の調査レポート (2002/3)
「原生林破壊の連鎖II」:
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/forests/diversity/reportII_html?mag

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