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メコン電力網>タイ産業界は反対

メコン河開発メールニュース 2004年11月11日

メコン河流域国では、アジア開発銀行(ADB)が中心となって、電力と道路のネットワーク作りが進められています。電力網の整備では、通常はADBが支援できない軍事政権下でのビルマ(ミャンマー)や、中国雲南省のメコン河本流ダムも含まれます。

メコン地域や国際的なNGOは、電力網整備が前提としている各国のダムによる環境社会被害ついて、ADBが全く頓着していないことを批判してきました。

一方で経済的な面からの批判もあります。以下はFT誌の今年初めの記事ですが、重要な問題提起をしていると思います。

メコン・ウォッチボランティアの栗林健太さんの翻訳です。

国際経済:アジアのエネルギー共有案はコストにつぶされる

ファイナンシャル・タイムズ誌

2004年2月5日

ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟する10か国すべてを結ぶ電力供給網を作るという壮大な計画は、少なくとも今後10−20年間は、物理的にもまた象徴としても事実上無くなった。

この地域でのエネルギー供給量を増やす必要があることについて疑うものは誰もいない。しかし、地域の専門家は長距離の電力輸送は工業化がさらに進まない限り財政的に実現できないと言う。

地元の計画者たちは、西洋式の広い地域を結ぶ供給網でのエネルギー売買を支持している。そのための2020年に向けての基本計画は昨年完成した。しかし今年は断片的ないくつかのプロジェクトが進められるにすぎない。

このゆっくりとした進展状況は強い希望的な見通しを表している、そう述べるのはジャカルタに本拠地を置くASEANエネルギーセンターのコーディネーターのTjarinto S. Tjaroko氏である。

「2020年、いやたぶん2050年にはASEANは『ヨーロッパ的なネットワーク』のようになり始めるだろう。残念ながら私はそれまで生きてはいないだろうが」とTjaroko氏は語った。

もし書類や会議、それに政府側の発表で計るならば、ASEAN電力網建設の趨勢は過去10年間に強まったといえる。この構想の支持者たちは、各国が発電力を共有できれば、発電所建設はより少ない数になり、電力供給はよりしっかりと保証され、そして各国におけるエネルギーの潜在性をより容易に開発することができると言う。

公式な見通しに関しては定期的に概要が説明され、たとえば、ラオスやミャンマー(ビルマ)の水力発電がマレーシアに売却される一方で、ベトナムがタイの電力消費のピーク時電力を補充することを示している。

マレーシアのDatuk Amar Leo Moggieエネルギー大臣は、昨年のASEANエネルギー担当大臣会合において、ASEANグループがこの計画に向けて「一つにまとまっており(United)そして焦点を絞っている(Focused)」ことを示すために、電力網ネットワーク作りを加速しなければならない、と述べた。

しかし、長距離の電力輸送はコストが高くなる。「発電所を新たに1つ建設するほうがはるかに安価なのに、どうして500メガワット(原文まま)の送電線をクアラルンプールからバンコクに通す必要があるのか?」とMullis Capitalのエネルギー専門家Mark Hutchison氏は疑問を投げかけた。

電力網は先進諸国でも徐々に進められていく傾向がある。より大きい規模の経済を持つアメリカでさえ、長距離送電に伴う電力ロスと輸送コストによって、たとえばコロラドの水力発電の電力をボストンには送り込めない、とHutchison氏は言う。

電力網推進者の一人タイ発電公社のSitthiporn Ratanopas総裁は ASEAN各国は異なった発展段階にあるので、互いのキャパシティを分かち合うべきだと主張する。

「タイの電力需要のピークは、工場やオフィスがフル稼働する午後2時、一方ベトナムのピークは人々が家で夕飯の支度をする午後8時である。お互いに助け合って、お金を節約できる」とSitthiporn総裁は最近の講演の中で言及した。

この種の議論がタイの製造業者を不安にするとタイ産業連合エネルギー委員会のChen Namchaisiri会長は話す。

「我々には信頼できる電力システムがある。タイ産業連合のメンバーにとっては、なぜ高価な送電網を、信頼性の低い電力システムを持つ国々と作らねばならないのか理解できない」と語った。

「産業連合のメンバーは、電力共有論に納得していない。なぜなら、ベトナムのような国々もいずれ工業化すれば、我々と同じような電力利用(時間帯の)傾向を示すだろう」と続けた。直接売り手と買い手が契約する場合を除いては、電力網建設に向けての政治的な情熱だけで、目下経済的な現実を打ち破ることはできない、とタイで活動するエネルギー専門家Neil Semple氏は言う。

「莫大な資金のかかる巨大な送電網と、タイによる隣国ラオスからの水力発電電力の輸入のような純粋に商業的観点から行われているプロジェクトは区別して考えている」とSemple氏は話す。

そのほかで現在行われている「商業的」な送電網は、マレーシアとシンガポール間、マレーシアとタイ間がある。ただし、後者はわずかにタイの電力の3パーセントを補うに過ぎない。このような送電網は更に形成されるだろう。しかし、それは、国営の垂直統合された巨大エネルギー公社間でのことだ。こうした巨大公社は、生来本国市場を守っているのである。あるシンガポール人電力会社マネージャーはそう述べた。

「この類いの大冒険を考え付くのは、壮大な計画を愛し、そして厳しい商業的な責任にさらされる必要がない技術者たちなのだ」と彼は述べた。

「ヨーロッパにはもっと自由で、透明性が高く、そしてもっと商業的なエネルギー市場がある。ASEANはそこからは程遠い」と先のシンガポール人マネージャーはそう付け加えた。

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