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メコン河委員会>中国のダム開発を擁護

メコン河開発メールニュース 2004年3月30日

メコン河流域の開発を調整する役割を持つ国際機関メコン河委員会(MRC)に関する興味深い3つの記事・投書を、メコン・ウォッチ(バンコク)の土井利幸が翻訳しました。土井による解説とともにお送りします。


■解説

メコン河上流浚開発・浚渫に関して腰砕けの対応が目立つメコン河委員会(MRC)ですが、以下の2つの記事ではMRCの関係者が中国のダム建設をむしろ擁護する発言をしています。

曰く、「中国からメコン河に流れ込む水は全水量の約20パーセントにすぎない。非常に懸念されている2つのダムにしても、乾季の増水に寄与して恩恵をもたらす可能性すらある」、「瀾滄江と呼ばれるメコン河上流部に中国が建設している巨大ダムも、乾季に下流の農地に水を供給することでこうした目的を達成できるかも知れない。あるいは中国がメコン河の上流を手中におさめたとしても、下流にとってはたいした違いは生じない可能性もある。メコン河がベトナムで吐き出す全水量に対して瀾滄江が寄与しているのはたった16パーセントにすぎないからだ」。

3番目の記事(投稿)では、こうしたMRCが上流のダム建設に反対できない本当の理由(もともと自分たちがもっていた計画だから)を暴き、組織として開発の主役である人々の声に耳を傾けていない致命的弱点を指摘しています。


■翻訳記事・投書

「メコン河は深刻な環境破壊に直面している。迅速な対応が必要だ」との科学者の声

AFP2004年3月10日

【バンコク(AFP)発】迅速な対応なしにはメコン河は深刻な環境破壊に直面してしまうだろう、と河川の持続可能な活用のための新計画を立ち上げた科学者たちが警告を発した。

メコン河委員会(MRC)のDao Trong Tu報道官によると、この「メコン流域の水と食物に関する課題計画」(The Challenge Programme on Water and Food in theMekong)では1000万米ドル(約11億円)を投じて、今よりも少ない水資源の活用で流域の生産性を高める手段を模索する。

「メコン河から取水される80〜90パーセントの水は農業に利用され、農業セクターはメコン河下流域総人口の75パーセント(推定)にとっての収入源となっている」、とDao報道官は記者会見で語った。

「現状が続けば、農業と漁業に依存している流域の人々の多くが影響を受けるだろう」。

全長4000キロメートル(2400マイル)に及ぶ大メコン河は中国、ミャンマー(ビルマ)、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムを貫流するが、今回の計画を実施するメコン河委員会に参加しているのは中国とミャンマーをのぞく4か国のみである。

メコン河委員会のKim Geheb調査コーディネーターによると、なんらかの方策なしでは、比較的開発されていないメコン河も中国の黄河と同じ道をたどるだろう。

「黄河の下流域では水が涸れてしまったところさえも少なくない。ほんとうにとても恐ろしいことだと思う」、とGeheb氏は語った。

「また毎年何百万ヘクタールもが塩害を受ける様子も見られる。これは海水の環流を防ぐメコン河の水圧が維持できなくなっているためで、かなりひどい状態にあると思われる」。

メコン河委員会の調査では、メコン河下流域の人口は過去30年間で2倍になり、2025年には50パーセントもの増加が見込まれている。調査ではまた、メコン河流域の土地のほぼ半分はすでに農業に利用されている。

メコン河流域は世界中の河川流域でも未開発で水力発電のポテンシャル(可能性)が最も高い地域の1つと考えられている。しかし流域住民の権利の擁護を主張する人々によると、大規模基盤整備はとりかえしのつかない環境・社会影響につながる恐れがある。

中国がメコン河流域に最大9つのダムを建設するという計画も環境保全団体から非難を浴びている。しかし、メコン河委員会によれば、これは主要課題ではない。

「中国からメコン河に流れ込む水は全水量の約20パーセントにすぎない。非常に懸念されている2つのダムにしても、乾季の増水に寄与して恩恵をもたらす可能性すらある」、とメコン河委員会のRobyn Johnston開発計画担当は述べた。

Johnston氏によれば、多くの国々がすでにメコン河の持続可能な開発に対して断固とした姿勢を表明している。

タイ環境省のSiripong Hungspreud事務次官によれば、タイはそうした国の1つである。氏はメコン河が人口も貧困層も多い東北部農業地帯にとって生命線である点を補足した。

「私たちタイ政府関係者も細切れのやり方をあらためて、水資源を管轄する様々な省庁間で連携を取る必要がある」、とHungspreud事務次官は述べた。


メコンの未来を協力して作る

Kim Geheb氏

タイ『ネイション』紙2004年3月9日

河川流域における社会・経済・生態系の連関を理解する必要がある。

想像してみてほしい。時は2020年。メコン河下流域の人口は2000年の5500万人から増加し、8000万人に達した。都市部も大幅に拡大し、今や人口の3分の1が都市に居住する。小規模農家は徐々に大規模な農産業に取って代わられる。

カンボジアとラオス人民共和国は21世紀初頭に作られた植物を使って灌漑農業で力を付けた。すでに50万ヘクタールもの土地に灌漑が普及し、ビエンチャンやサバナケートの低地、トンレサップ湖周辺、カンボジア南東部の氾濫源にまで及んだ。市場(しじょう)は新鮮な果物と野菜であふれる。しかし川で獲れた魚は豚肉よりも値段が高い。

2020年の都市の全家庭には水道設備が整う。しかし2月から5月には給水制限が実施され、給水はいずこでも選挙の争点となる。

こうした筋書きはそれほど荒唐無稽とは言えない。2001年までにメコン河下流域(LMB)にあたるラオス、タイ、カンボジア、ベトナムで400万ヘクタールをゆうに超える土地に灌漑が普及した。このうち48パーセントはベトナムのメコン・デルタ地帯で、同地帯は世界でも最も灌漑化が進んだ地域である。ここでは毎年1400万トン以上の米が生産され、ベトナム農業の発展に決定的な役割を果たしてきた。

東北タイの多くの地域でも灌漑化が進んでいる。しかし2国合わせるとメコン河下流域で最大面積を占めることになるラオスやカンボジアでは灌漑の普及しているところは比較的少なく、2001年で推定61万6342ヘクタールである。

ラオスとカンボジアが農業を国民の幸福と経済状態の向上に寄与させたいと考えていることは明らかである。ところが、この目的を阻害する大きな要因は、水、とりわけ乾季における水の確保である。

毎年メコン河によって推定47万5000立方キロメートルの水が南シナ海に流れ込んでいる。この驚くべき数字のたった4パーセントしか農業は活用していない。つまり、実のところカンボジアやラオスのようなところで農業をさらに拡大するに足る膨大な水資源が残されていることになるのである。

ところが、これだけではない。メコン河の水の利用は時と場所に左右されるのである。乾季のメコン河は雨季に比べてずっと細くなり、2月から5月といった乾季の真っ只中では上流に遡れば遡るほど活用できる水は少なくなる。

メコン河流域のほとんどの場所でこの時期でも取水が継続できるのは、灌漑の需要がそれほど高くないことに尽きる。しかしながらメコン・デルタではこの時期の取水量がきわめて多く大規模になる。これはこの時期に米を生産すれば雨季に比べて高価格で取引することができるからだ。この時期の取水量の多さのあまり、海に流れ込む淡水の水圧が低下し海水の還流を防ぎきれなくなる。その結果として海水が遡上し、デルタ地帯で毎年推定75万ヘクタールの農地に塩害をもたらす。

ベトナムのメコン・デルタでの生産に影響を及ぼすことなく、いかにして上流の国々が灌漑農業を拡大すればよいのか。これはメコン河の流域管理が直面する典型的な難題の1つである。

南東モンスーンの時期に貯水をして渇水の時期に放流をするといった解決策も可能である。瀾滄江と呼ばれるメコン河上流部に中国が建設している巨大ダムも、乾季に下流の農地に水を供給することでこうした目的を達成できるかも知れない。

あるいは中国がメコン河の上流を手中におさめたとしても、下流にとってはたいした違いは生じない可能性もある。メコン河がベトナムで吐き出す全水量に対して瀾滄江が寄与しているのはたった16パーセントにすぎないからだ。

しかし、水量の変化のパターンが年間推定で14億米ドル(約550億バーツ、1540億円)の価値を持つ豊かなメコン河の漁業に影響を与える可能性はある。季節による洪水のくり返しがメコン河に住む多くの魚の産卵と回遊の周期の決定要因になっているのである。2003年に洪水が少なかったことが、今年(2004年)になってカンボジアでの漁獲量の劇的減少という形であらわれている。タイでもダムが漁業に悪影響を及ぼした明白な経験がある。

要するに、メコン河の季節的周期に変化が起こった場合の影響について、私たちの理解が及んでいない部分は多いのだ。しかし、これまであげた例で、メコン河流域を六つの国の寄り合いとして見るだけでなく、一つの流域として管理することの重要性が分かっていただけると思う。メコン河を管理し、河が直面する問題への解決策を見つける作業は、流域国の協力を通してのみ達成できる。流域とは水の総和ではなく、そこに散在する人々、天然資源、経済活動の総和なのである。

このように見れば、上流の国に発する水はやがてその水がたどり着く下流の国々とその国との絆(きずな)である。上流の国々には自分たちの行動が下流の諸国にもたらす影響への責任がある。

経済と生態系、環境と社会が相互にいかに密接に結びついているかを理解することが河川流域を管理する際の鍵となる。こうした連関の中に流域が抱える問題やその解決の芽の多くが横たわっているのである。

Kim Geheb氏はメコン河委員会の調査コーディネーター。氏はまた同委員会で、「メコン流域の水と食物に関する課題計画」の流域コーディネーターもつとめている。この計画ではメコン流域の農業への水資源利用に関わる課題に対する解決策を検討する。


メコン河委員会は自らの計画で影響を受ける住民のことなど気にもかけていないようである。

Tom Sherman氏

タイ『ネイション』紙2004年3月12日

『ネイション』紙3月9日号のKim Geheb氏の見解(主張「メコンの未来を協力して作る」)はとても参考になった。

氏の記事のおかげで、メコン河委員会がいかに働きの悪い組織であるかが自分たちのことばを通して衆目に明らかになった。

Geheb氏は冒頭「私には夢がある」調で論を展開し、10年前の設立時以来メコン河委員会が宣伝してきた同じまやかしを呼び起こそうとする。メコン河本流でのカスケード式ダム建設である。

Geheb氏はそうしたダム建設による環境影響がもたらす「14億米ドル」(約550億バーツ、1540億円)の流域水産業への被害を正しく認識している。しかし同時に、生計手段、文化、食物安全保障を脅かされるかも知れない何千万人もの人々のことについては触れようとしない。また、こうした人々の多数が当初よりメコン河委員会に対してこうした懸念を伝えようとしてきたことにも触れないのである。

そればかりか、米国西部全域で現在明らかになっているように、そうした導水計画はおびただしい環境破壊をまねくばかりか、本当の意味での旱魃がおとずれた時に瞬時に破綻してしまう誤った水資源の安定確保の認識をつくりあげてしまうのである。こんなことはメコン河委員会の調査を待つまでもなく理解できてしまう。

メコン河流域に点在する地域社会に住む人々の話を聞けば、メコン河委員会が知らなければいけないことはすべて分かる。しかし、メコン河委員会は計画を練る際に下から積み上げるボトム・アップの参加的手法を取ることに一貫して失敗してきた。その結果として、無駄な努力をくり返しているだけなのだ。

これもまた当初から指摘されて明らかなように、メコン河委員会は中国が積極的に参加しない限り無用の長物である。そして、ご承知の通り、中国はいまやメコン河の流れを手中におさめ、船舶による貿易活動を活発化させる目的でメコン河をタイやラオスの国内にまで及んで爆破しようと技術者に準備を進めさせている。

ひょっとすると、これがメコン河委員会の当初からの計画だったりして。メコン河委員会に資金を提供している国々がメコン河委員会のダム建設計画にはじめから難色を示したもんで、中国のダム建設機械を下流に導き入れてみたとか。

メコン河委員会はメコン河やそこに住む人々の役に立っていない。それを教えてくれたメコン河委員会とネイション紙に感謝。

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