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中国・ダム>水力発電をめぐる論争
メコン河開発メールニュース 2004年1月29日

昨年8月に中国雲南省の昆明で、ダム計画における社会影響調査についてのワークショップが開催されましたが、先ごろ北京でも、ダム会議が開かれました。

中国の経済成長(特に東部沿岸地域)に伴って、電力不足が強調され、信じられないほどのダム計画が急ピッチで実施に移されようとしています。下流国への影響を無視して進められる、雲南省の瀾滄江(メコン河上流の中国語名)や怒江(サルウィン川上流の中国語名)でのダム計画乱立もその1つです。

そうした中で、昆明や北京で行われたような、ダムの悪影響に関する比較的オープンな議論が、どの程度政策に影響を与えることができるのかが注目されます。

以下の記事は北京のダム会議に関するChina Dailyの英文記事を翻訳したものです。中国語表記への翻訳については、香港の李育成さんの協力を頂きました。

なお、昆明でのダムワークショップに関しては、メコン・ウォッチ発行「フォーラムMekong Vol.5 No.3 特集:中国・雲南現地調査報告」(500円)に詳報しています。ご関心があるかたは、メコン・ウォッチまでご連絡下さい。(E-mail:info@mekongwatch.org)。

水力発電が論争を産出

China Daily、2004年1月15日

Chen Hong記者

中国の多くの地域で昨年夏停電に見舞われた。全国的な電力不足は人々の生活に不便を及ぼしているだけでなく、水力発電所やダムを中国西部に建設しようという新たな波を呼び起こしている。

全てに共通ではあるが、水力発電所やダムにも賛否両論がある。公正な評価が可能になるのは、経済・社会・環境面での包括的な影響が算出されたときだけである。

それは、中国社会科学院のもとにある「環境・発展研究センター」が主催した最近のフォーラムで専門家たちが述べた提案だった。

研究によれば、年8〜9パーセントの国内総生産(GDP)の成長に見合うためには、中国のエネルギー需要は毎年5〜6パーセントの延びが必要である。

2002年の終わりまでに、水力発電設備能力は7885万キロワットに達した。これは国内の総発電能力の22.1パーセントに相当するが、中国国内の包蔵水力発電量の20パーセントに過ぎない。

中国政府は、2020年までに水力発電設備能力を2億7000万キロワットに増やし、包蔵水力の68パーセントを開発する計画である。

国家発展改革委員会のもとにあるマクロ経済研究院(宏観経済研究院)の丁元竹(Ding Yuanzhu)研究員は、エネルギー不足は中国が21世紀に経験するであろう危機の1つだと指摘した。

今や国内で必要な原油の37パーセントは輸入せざるをえず、中国の経済成長に伴ってこの割合は増え続けるであろう。中国西部で水力発電を開発することは、国のエネルギー安全保障と密接に関係している。

丁氏の見解に共鳴したのは東部の江蘇省の南京にある河海大学社会発展研究所の施国慶(Shi Guoquing)所長である。

水力発電所を建設しようという新しい波は、産業用と一般家庭用の双方の爆発的に増加する電力需要によってかき立てられている。こうした需要を満たすために、発電所を建設しなければならない。

火力発電所に比べて、水力発電所は温暖化ガスの排出が少なく燃料を必要としない。そのことが石炭、石油、原子力を使った他の発電よりも、水力をよい良い選択肢としている、と施所長は述べた。

施所長と一緒に働いている陳紹軍(Chen Shaojun)氏は、三峡ダムが発電する電力は年間で847億キロワット(訳者注:原文まま)で、同じ発電をするのに火力発電所なら240万キロワット(2400メガワット)の能力を備えた発電所7基、あるいは石炭火力発電ならば4000万〜5000万トンの石炭を必要とする、と主張する。

電力だけでなく貯水池やダムは洪水を防ぎ、灌漑用水を供給し、船舶交通に必要な河川状況を改善する。水力発電所やダムの建設はまた、雇用の創出、税収増加、地域社会の近代化を通じて貧困削減にも重要な役割を果たすことができる。

「経済的な進歩やこの国の人々の生活改善の必要性は十分理解する。しかし、長期的にみたときの維持可能な成長を期待している」、そう語るのは張曉(ZhangXiao)氏である。「我々は将来世代への影響を考えないまま、全ての資源を使い尽くしてしまうべきではない」。

中国社会科学院の研究員である張氏は、貯水池やダムはまた、河川の生物環境を変えたり、多種多様な動植物を絶滅させたりするなど、多くのマイナスの結果をもたらすと言う。

生物多様性への脅威以外にも、貯水池やダムはまた河川固有の地理的な特徴を変え、地震・土砂崩れ・岩の混ざった泥流のリスクを劇的に増加させる。貯水池に水をためるため、河川の下流地域では地下水レベルの低下が起き、砂漠化のような現象が生じる。

雲南大学や河海大学の研究者が行った独自の調査によると、水力発電所建設後に立ち退かされた人々は、長期にわたって収入が減少している。注意する必要があるのは、こうしたマイナスの影響、特に社会面や生物学の分野の影響は、ゆっくりとしか顕在化しないという点である、と専門家は指摘している。

中国社会科学院の都市発展・環境研究センターの侯京林(Hou Jinglin)研究員は、旧ソビエト連邦では、主要な建設プロジェクトは、通常30年から50年、場合によっては100年の単位で評価されることになっていたと言う。

それに比べると、中国の同様のプロジェクトの評価は、1年、3年、あるいは5年くらいでしか影響が計られていないと侯氏は指摘する。このような短期間では、経済効果ははっきるするが、社会面や生物・環境面での影響を見出し評価することは極めて困難である。

その結果として、水力発電所やダムの建設決定は、しばしば誤った、あるいは不完全な評価に基づいて行われる。それによって即時的な経済面での収入は増加するが、将来的なマイナスの影響、特に環境や生物システムへの影響が無視されている。

国内に緊急な電力需要があるのならば、水力発電プロジェクトを中止することは賢明ではないし現実的でもない。しかし、こうしたマイナスの影響を客観的に計測し考慮するまでプロジェクトを遅らせるべきである。

現在の状況を見れば、こうしたプロジェクトを司る現行の法令やそれを実施する仕組みを改革・革新することが求められている、そう強調するのは、清華大学の現代中国研究センターの李楯(Li Dun)教授である。

例えば、プロジェクトの影響評価は、独立した専門家が実施すべきであり、その専門家の名前は公表しなければならない。建設計画もまた、一般公衆の監視のもとに置かれるべきである。そして、誤まりと判断される意思決定を行う役人は、アカウンタビリティ(説明責任)を果たさなければならない、と李教授は提唱する。

中国社会科学院の環境・発展研究センターの鄭玉(Zheng Yuxin)所長が述べるように、中国は市場経済における法令がいまだ未整備の段階で、経済の拡大に遭遇しているのである。

人々が経済成長推進の名のもとでしばしば過ちを犯す時だからこそ、慎重さが重要なのだ、鄭所長はそう述べた。

○英文記事は以下で読むことができます。

http://www1.chinadaily.com.cn/en/doc/2004-01/15/content_298984.htm

○以下に中国語の短信があります。

http://www.cenews.com.cn/news/2004-01-14/31082.php

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