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大メコン圏>河川交通の再評価
メコン河開発メールニュース 2004年1月22日

メコン河流域の水利用を調整する国際機関のメコン河委員会(MRC)で、2003年9月まで事務局長(CEO)を務めたJoern Kristensen氏の投稿記事です。彼は、流域国の河川交通を再評価して、もっと活用すべきだという論調ですが、必ずしも現在中国を中心に進めている河床浚渫をした大規模な商業航行を前提にしたものではなく、農村の適正交通手段として見直すことも主張しています。

中国によるメコン河上流浚渫や早瀬の爆破といった破壊的な河川交通網の整備ではなく、はしけなどを利用した農村の交通手段としての意義付けは重要です。ODAなどで次々と道路建設が行われ、はしけを中心にした地域経済が消失している現状を、改めて考え直すことも重要ではないでしょうか。

以下、メコン・ウォッチボランティアの栗林健太さんの翻訳です。

巨大なメコンの利用

JOERN KRISTENSEN

South China Morning Post、2003年12月16日

昨年プノンペンで行われた大メコン圏(GMS)の初めての首脳会談で、カンボジアのフンセン首相は、この地域の河川交通が大きな可能性を秘めているということを強調した。そして、船の航行やその他の点に関しての課題に対してメコン河流域の諸国が一つになって取り組んでいくことが早急に求められていると述べ、全ての地域的な開発機関がうまく調整し合い、強化されるべきであるということを強調した。その後、共同発表の席では、カンボジア、中国、ラオス、ミャンマー(ビルマ)、タイ、ベトナムの首相らは、各国の発展に伴い、農業、工業、そして雇用を促進するために、地域交通の大動脈が必要だということで一致した。

2003年11月30日、メコン河委員会の閣僚会議では、2200万ドルにおよぶメコン河の地域航行開発計画を承認した。この計画により将来的には、(1)船荷コストを下げ、(2)国境での煩わしい手続きを減らし、(3)船の安全性と危険貨物運搬の際の環境対策を向上し、(4)船長に河川の状況に関する的確な情報を提供し、(5)増加が期待される河川交通量を管理する港湾労働者への訓練をすること、などが見込まれていた。

ベトナムとカンボジアの両国は、今後増加するであろう、香港やシンガポールといった地域の主要な港への輸出入の輸送に、メコン河ーバサック川の河川交通が利用されるだろうという見通しを持っている。

メコン河航行部門への投資の促進は、ASEAN(東南アジア諸国連合)のより一般的な目標である、貿易の自由化や古参の加盟国と未だ世界のもっとも貧しい国々とされるカンボジア・ラオス・ミャンマー(ビルマ)・ベトナムの新加盟国との間にある発展度合いの違いの橋渡し、とも整合性の取れたものといえる。さらに、世界銀行が近年謳っている国際間交通の効率性の向上や、関税制度・港と水路施設・物流管理を改善する必要性とも歩調を合わせている。

過去10年以上に渡り、地域交通網の開発は、新しい道路作りに焦点が当てられてきた。東南アジアと中国を結ぶ鉄道網という野心的な計画があったにもかかわらず、道路建設はまた、1992年にアジア開発銀行(ADB)が始めたGMSのもと、交通部門への投資の中で、もっともうまみのある部分を引き寄せてきた。

なぜ、これほど水上交通が忘れ去られてきただろうか。船の航行というものは間違いなく道路や橋に比べて政治的なアピール度が少ない。それに加え、海外からの援助は直接的で目に見えるものに向かい易いといえる。たとえば、学校や病院などがそうである。水上交通が、特に僻地において非常に必要とされる教育や医療施設へのアクセスを提供するにもかかわらず、である。

たとえば、カンボジアやラオスでは160万人以上の人々が移動手段として内陸の水路に頼っている。ベトナム南部の12省では、荷物の73パーセント、通行人の27パーセントは、内陸水路を定期的に往来する何万隻ものはしけやその他の船によって運ばれている。

現状では、河川航行のための共通の基準や手続きや規制を定めた法的枠組みが整備されていないことが、貿易や投資の障害となっている。このような環境だと、政府は長期的な地域の発展よりも短期的な自国の発展に注目しがちになる。内陸水上交通網は他の交通手段とはほとんど統合されていない。全船舶を近代化し、船の登録をして安全性を向上する必要がある。増加する水路網の利用に対応するためには、航路標識、正確な地図、それにリアルタイムの情報が必要となる。

内陸水上交通はこれまで必要とされていた投資を受ける機会を逃してきた。その理由の一つとして、政府が交通網への出資の優先順位付けを、必ずしも異なる交通手段がもたらす相対的な社会経済的な利益についての現実的な評価に基づいて行わなかったことが挙げられる。

この点からいえば、複合的な多方式の交通輸送システムの見通しについて、損益分析を行うことは時宜を得ている。これにより、地域の交通開発がより調和の取れたアプローチとなり、また投資をもっとも生産性の高い地域に呼び寄せることができるはずである。

環境面から見ても、船舶やサービスが河川水路に適応できないと考えるよりも、むしろ相応しいものとなる余地は大きい。それは環境面だけでなく経済面からも好ましいものだ。たとえば、ブイや航路標識を川の一番深い場所を知らせるために設置する方法である。これは船舶が通れるように川底を掘り下げるよりも安く、また環境にもやさしい。

メコン河の航行が直面している最も緊急の環境問題の1つは、燃料のような危険で有害な物質の運搬のための調和化された規則と、そうした規則の遵守の必要性である。近年メコン河水路で燃料流出の大きな事故は報告されていないが、このまま船体が一重構造の船で燃料を運び続ければ、事故が起こるのは目に見えている。また、環境に関してもう一点気になることは、船や港湾技師たちが出すゴミの問題が挙げられる。ヨーロッパにおける近年の内陸水路に関する経験は、多くの点で実践的なモデルとしてメコン河を共有する国々にとって役立つはずだ。

益々過密化する道路を行きかうトラックからの有害物質の排出への懸念が高まる中で、ヨーロッパの人々はやっと最近になって広大な内陸水路網の利点に気づき始めたのである。

2000年、欧州連合(EU)は内陸水路部門の完全自由化をし、自由な交渉価格や競争の拡大、技術革新の加速化に道を開いた。

ヨーロッパでは19世紀の石炭をはしけで運ぶイメージは消え去り、内陸航行は益々道路や鉄道に代わる清潔で環境にやさしい代替手段とみなされるようになった。

欧州連合(EU)は現在、低燃料消費で社会経済に与える影響が小さい内陸水路を持続可能な交通手段と考えている。

この数世紀の間に、メコン河地域に住む人々は、中国、ポルトガル、日本、オランダ、そして最も最近ではフランスの代々の船乗りたちと触れ合ってきた。理由はともあれ、20世紀は内陸水路が下降線をたどってきた時代として突出している。

国境を越えての貿易や観光が増加するに伴って、21世紀には、メコン河地域の国々が最後には広大で未開発な内陸航路の可能性を現実のものとする準備をするかもしれない。

Joern Kristensen氏は、1999年から2003年9月まで、メコン河委員会事務局長(CEO)を務めた。

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