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パクムンダム>現地緊迫!座り込みの立ち退き期限迫る
メコン河開発メールニュース 2003年1月28日

タイのパクムンダム問題に関する現地からの報告です。

首相府前で抗議行動を続ける影響住民に対して、バンコク首都政府が1月29日を事実上の立ち退き期限としています。それを前に妥協点を探る動きがありましたが、失敗に終わった模様です。

武力による強制排除への懸念など、現地の緊張が再び高まっています。以下、メコン・ウォッチの木口由香の報告及び翻訳です。


タイ政府は14日に、水門開放を4ヵ月のみにすると公式に発表しました。それに対して住民側は首相府前で抗議を続けています。

ところが、政府の指示によりバンコク首都政府は、首相府前に座り込みをする人々への水の供給とトイレ車の提供を明日の29日に打ち切ると発表しました。また、公共地である道路に建造物を建てた容疑で住民を逮捕すると主張しています。一方住民側は、デモサイトの移動などには応じず、あくまで首相府前で平和的に座り込みを続けることを表明、現地は緊張が続いていました。

先ほど(タイ時間28日午前10時ごろ)チャワリット副首相が使者を送り、住民参加による問題解決委員会の早急な設置をもって本日中の帰宅を促しましたが、住民側は拒否した模様です。昨日、パクムン住民に加えてラーシーサライ・ダム(注:ムン川中流域に作られた灌漑堰。事前の住民説明では上下式のゴムの堰であったものが、実際は10数メートルのコンクリートダムが建設され、住民が湿地帯で行っていた乾季稲作地を水没させた)の影響住民約500名が首相府前に合流しています。

<これまでの動き>

1月14日

政府は閣議で水門解放4ヶ月閉鎖8ヶ月の決定に変更がないことを確認、住民側に「多数派は決定に満足している」としてこれ以上の交渉に応じないことを一方的に宣言(*1 後段に新聞記事を添付)。

ダムを管轄するエネルギー省のポンテープ大臣は、発電は初期投資が高いので放棄できない、農業面で影響を受けた農民に対して用水路を建設するほか、様々な農業支援を行うことで少数派に配慮すると述べた。

1月16日

住民側は「なぜ閣議決定を受け入れないか」という声明を発表(*2 後段に全文の日本語訳を添付)。政府が発表した影響緩和策は今まで既に行われ、失敗しているものばかりであると指摘。灌漑も既存の用水路を使用しているのは現地の15%の住民でしかなく、新たに建設する必要はないと主張した。

1月21日

住民、問題解決までの滞在場所として、首相府前に「村」の建設を表明。レジャーシートで作られたテント村を修繕し、一部に竹で組んだ小屋を建設した。これに対し、首相は「公共地に建造物を建てるのは違法」として直ちに撤去すると発言。

1月23日

住民代表が国家人権委員会を訪問、集会の自由の擁護を要請。住民側は、テント村が撤去されれば集会の自由を認める憲法44条に抵触すると主張。国家人権委員会は水の配給を止めるというバンコク都に対し、人権に配慮して対処するよう書簡で要請。

1月26日

サマック都知事は首相府前で座り込みを続けるパクムンダム影響住民に対し、トイレや水のサービスを29日で打ち切り、公共地を占拠した罪で住民を検挙すると発表。26日には水のタンクの半分が引き上げられ、給水も一回のみとなった。住民は首相府前の噴水で水浴してしのいでいる。

1月27日

住民側はダム建設事業とその影響緩和策に不正がある、として汚職制圧委員会にパクムンダム事業を提訴。

といった点を指摘し、これら全てに汚職の疑いがあると主張している。


内務相「パクムン」は多数の声を聞け

マネージャー紙(タイ字紙、オンライン)

2003年1月16日

内務相は、パクムン住民に対して多数派の声を聞けと強調。しかし、少数派を救済する道は模索するという。また、首相の指示を堅持しなくてはならない、という。一方のパクムン抗議住民は強硬な態度で怒り心頭である。政府決定のダム水門開放4ヶ月と閉鎖8ヶ月を絶対に受け入れないとし、不透明な決定に抗議し今後も首相府前から動かないと声明を発表した。

ワンヌハマットノー・マター内務大臣は、総合的に多数の人に対して問題解決を行うことが肝要で、少数派の思い通りにパクムンダムを開放することは出来ない、との考えを明らかにした。「だが、少数派を切り捨てるのではない。大多数はダムの水門開放4ヶ月閉鎖8ヶ月を望んでおり、少数派は政府が職業・放流事業などでケアする。民主主義は多数派の意見を聞くことが基本だ」という。

1月21日に貧民フォーラムが抗議集会を開くとしたらどう解決するか、という質問に対し、内相はそれについては現地視察で状況分析をした首相の指示を仰ぐ、とした。

一方の国家人権委員会が、統計局の調査結果は総括的なものではない、との情報を明らかにしたことについては、「様々な情報を必要としていた首相のため、現地入りしたのは統計局だけではなく国境警備警察、3郡の行政担当官も含まれている。結果、どの機関の調査も格差が無かった。他の機関が調査を行うのは一向に構わないが、統計的な手法を使わなくてはならない」、と述べた。

政府がパクムン問題について昨日、4ヵ月開放と8ヶ月閉鎖を発表した後、国民行政委員会前(注:首相府近く)のパクムン影響住民はまだ座り込みを続けていたが、現場には静けさが漂い残っている住民もそれほど多くはなかった。住民代表のソムキアット・ポンパイ氏は「長い座り込みにでは普通のこと。住民は行ったり来たりを繰り返すから。いずれにしても、政府がダムを通年で開放し住民生活を回復させるまで、平和的に座り込みを続ける。今、長い座り込みに供え住居を改良している。他の道はない。なぜなら、メームンマンユン村(注:ウボンラチャタニのダムサイトにあった抗議村)は焼き討ちにあったからだ。他の場所に移らされるという噂があるが、政府からは具体的な指示を受けていない。しかし、移れといわれても他の場所にはいかないだろう。今日の午後の行事は今日の先生の日(注:教師に年に一度感謝を表す日)に合わせて生業を教えてくれる老人たちに感謝を示す儀式をする」と語った。

<不透明な2点を指摘>

今朝、貧民フォーラムは「なぜ閣議決定を受け入れないか」という声明を発表した。それによると、パクムン問題の1月14日閣議決定が示す、4ヵ月開放8ヶ月閉鎖の上での灌漑用水路整備や、深い水深で使用する漁具への変更奨励、タイ発電公社(EGAT)による漁業振興と多種の稚魚育成とムン川への放流について、フォーラム側は検討を加えた結果、決定の過程に2つの不透明な部分があるという。

まず、1.今回の閣議決定は、自己都合に満ちている。学術的な裏づけがない。大きな過ちは、パクムンダムプロジェクトの目的を検討の中心に据えたことである。プロジェクトの目的は多くの場合美辞麗句で飾られる。パクムンダムで例をあげると、ダムは多目的であり、発電・灌漑・漁業のメリットがある、といったことである。しかし、ウボンラチャタニ大学の調査が明らかにした真実は、パクムンダムの発電が予測したとおりのメリットがないことである。

2.虚偽の証拠を作りだし、決定を保証させた。政府は、統計局にパクムンダム影響地で住民見解の調査を委託し、住民が4ヶ月の開放と8ヶ月の閉鎖を望んでいる、という結果を得て、その情報を元に決断の正当性を作り上げた。しかし、統計局の調査内容を検討してみると、調査地はほとんどパクムンダムの影響地と関連がないのである。たとえば、シリントンダムの影響住民、パーテム国立公園内に生活する住民、メコン河沿いのナーポーグラーン郡など、いずれも全くムン川に関係のない地域である。

そのため、貧民フォーラムは政府決定に異議を唱え、今後も平和的に抗議活動を続ける、としている。

<住民リーダーは不名誉な決定と指摘>

住民リーダー、ナッタチョート・チャイラット氏(注:実際はNGOスタッフで貧民フォーラム顧問)は、首相が4ヶ月開放8ヶ月閉鎖を決断してから、住民は非常に不満を感じ、決定は不名誉かつ住民を見下したものと見ているという。彼によると、この決定には1.住民参画のない決定、2.学術的調査の軽視、3.真実に基づかない住民投票という行為を通して、パクムンダムの影響を受けていない無関係の住民を多数派としダムの影響住民である少数派を軽視した、という3つの弱点がある。

ナッタチョート氏は今後の運動の方向性について、「貧民フォーラムの顧問と住民の間で協議した結果、首相府前に9部からなるそれぞれの代表を置く貧民の村を建設し、問題解決までそこに住居を定める」と語った。

<ポンテープ、決定は正しいと主張>

ポンテープ・テープカンチャナー、エネルギー省大臣は、ウボンラチャタニ県のパクムンダムの水門開放を4ヶ月閉鎖8ヶ月としたとことは正しく、集めた情報と住民の被害、そして3郡を調査した統計局の結果の全てが、政府に通年でダムを開けろという少数派の声を聞くことは出来ないと示した、と述べた。発電は初期投資が高く、また多数派の漁民が悪影響を受けるからだ、という。

エネルギー省大臣は、農業面で影響を受けた農民に対して用水路を建設するほか、様々な農業支援を行うとしている。


なぜ私たちはパクムンダムについての閣議決定を受け入れないか

貧民フォーラム・プレスリリース

2003年1月16日首相府にて

2003年1月14日付けの閣議決定は、パクムンダム水門の4ヵ月開放と8ヶ月閉鎖を堅持するとしている。そして、灌漑局に用水路の建設、漁業局に対し深い水深に適した漁具への変更奨励を委任した。漁業局に対する予算と様々な魚の稚魚の放流の予算はタイ発電公社が支援することになっている。貧民フォーラムで閣議決定を検討したところ、決定にまつわる以下のような不透明な点が明らかとなった。

1.今回の閣議決定は、自己都合に満ちている。学術的な裏づけがない。大きな過ちは、パクムンダムプロジェクトの目的を検討の中心に据えたことである。プロジェクトの目的は多くの場合美辞麗句で飾られる。パクムンダムで例をあげると、ダムは多目的であり、発電・灌漑・漁業のメリットがある、といったことである。しかし、ウボンラチャタニ大学の調査が明らかにした真実は、パクムンダムの発電が予測したとおりのメリットがないこと、灌漑の実益がないこと、天然資源と漁業に影響を与えたことで、これが過去から現在まで続いている問題の根本である、ということである。

2.虚偽の証拠を作りだし、決定を保証させた。パクムンダム問題の解決策を追跡してみると、2002年10月1日の閣議決定の際、4ヵ月間の水門開放はウボンラチャタニ大学の調査結果に従ったと政府は言っている。しかし、貧民フォーラムが反対すると、首相は公開討論会の開催を容認した。その中でウボンラチャタニ大学の調査チームは、水門の通年解放が結論であると明言した。それ以降、政府は大学の調査結果を批判し続けた。そして最終的に、統計局にパクムンダム影響地での住民見解の調査を委託した。住民が4ヶ月の開放と8ヶ月の閉鎖を望んでいるという結果を得て、その情報をもとに決断の正当性を作り上げたのである。しかし、統計局の調査内容を検討してみると、調査地はほとんどパクムンダムの影響地と関連がない。たとえば、シリントンダムの影響住民、パーテム国立公園内に生活する住民、メコン河沿いのナーポーグラーン郡など、いずれも全くムン川に関係のない地域である。

重要なのは、今回の閣議決定が過去の失敗と同じ道筋を歩くものだ、ということだ。なぜなら、今までの政権もフアヘゥ村にある淡水魚センターにおいて莫大な金額を稚魚の育成に投入し、住民を雇用してムン川放流用の天然魚の稚魚育成を行った。しかし、ムン川の魚は増加しなかったのである。灌漑で言うと、既存の用水路を使用しているのは現地の15%の住民でしかない。このことからも、新たに建設する必要はみえない。

貧民フォーラムは、住民の苦しみに配慮しない自己都合的な解決法である閣議決定に反対する。私たちは市民社会に対して真実を説明するため、平和的に要求を続けてゆく。

国民の力を信じて

貧民フォーラム

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