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中国上流開発>雲南省のNGO代表が問題提起

メコン河開発メールニュース 2002年11月26日


中国によるメコン河本流ダム開発や、上流の航路拡張のための岩礁爆破については、このメールニュースで様々な批判的な見方を紹介していますが、これまで中国人による批評はほとんどありませんでした。

そうした中、雲南省のNGOであるGreen WatershedのYu所長が、タイの英字新聞バンコクポストに、自らの考えを投稿しましたので紹介します。

以下、メコン・ウォッチでボランティアをしている山口健介さん(東京大学学生)の翻訳です。


FOCUS / 自然の恵みの共有
メコンの流れの変化

2002年11月13日

バンコクポスト紙

メコンの流れに影響するような中国での事業は、より下流域の国々にのしかかってくる。事前の入念な調査なしには何もすべきでないのは当たり前のことだ。

YU XIAOGANG

2週間前、中国の中央政府(以下”中央政府”)は建国以来はじめて、環境影響評価に関する法律を批准した。この法律では全ての大型インフラ建設事業において、計画・意思決定段階において環境影響評価の実行が事業主に求められる。今年8月、中央政府は雲南省(中国南西部)地方政府に対し、瀾滄河(メコン河の中国名。以下”メコン河”)に建設された漫湾水力発電ダムによる立ち退き住民に及ぼされる社会・生態的影響の軽減を目的とする計画の実行を指示した。

こういった中国の取り組みは、6つのメコン河流域国政府及びそこに暮らす何千万もの人々にとって大きな意味を持つ。最近になって下流の国々では、中国政府指導者のなかに大型建設事業の利点ばかりでなく社会的、環境的な面での悪影響が認識され始めていることも指摘されている。

同時に最近になって中央政府は、自分たちがメコン地域の良き隣人として、また、人々や経済や社会がメコン河本流やその支流から享受している数多くの便益を管理・保全するパートナーとして、受けとめてもらう必要を認識している。

だからと言って、中国政府の取り組みが、今のままで十分だと言っているのではない。同様に、ラオス、タイ、カンボジア、ビルマ、そしてベトナムといった他のメコン河流域国もまた、メコン河から受けている生態面や社会面の便益を維持できるように一層の努力が必要であることは明らかだ。

メコン河は東南アジア最大の河川であり、その流域80万平方キロに住む6500万人の人々にとってはまさに生命線といえる。メコン河で採れる魚は流域の人々のタンパク源の実に約80%をも満たしている。農村部に住む何百万もの人々にとっては、生計や食料の安全保障はメコン河の自然の流れとそこから採れる豊富な魚に直接的に頼ってきたのである。

なるほどメコン河の恵みは際立ったものだ。しかしここ十年間のメコン河流域開発事業は、重大な予期せぬ社会・経済そして生態面での犠牲を、流域の河川や人々に及ぼし続けてきた。そしてこれらの犠牲の原因のなかでも最も目につくのはメコン河支流及び本流における大型の水力発電ダムである。

タイ、ラオス、およびベトナムは、主要なメコン河支流に大型の水力発電ダムを建設してきた。タイによるパクムンダムは、今では粗い計画によって社会・環境的に深刻な影響を与えるダムの代名詞にさえなっている。またパクムンダムほどはよく知られていないが、ラオスのトゥンヒンブンダムやベトナムのヤリ滝ダムも、ナムトゥン川、ヒンブン川、セサン川流域の集落に住む何万もの人々の食料と生計の保障を危ういものにしている。

雲南省では、漫湾と大朝山の2つの巨大な水力発電ダムがメコン河本流に建設されている。さらに昨年290mの高さを誇る雲南省メコン流域第3のダムとなる小湾水力発電事業の建設が着工された。

水力発電事業は雲南省の開発計画の軸である。漫湾ダムや大朝山ダムで発電された電力は、中国国内の配電網に組み入れられ、その大部分は東海岸の広州市など産業の発達している地域で消費されている。しかし将来的には、そのうちの一部分とメコン河に現在提案されているその他のダムによる電力とがタイに売られることになるであろう。

これらの事業はすべて電力供給面で貢献している。しかし最近になって政府が気づき始めたように、こうした事業は同時に深刻な負担も作り出している。すなわち、事業による社会・環境面での影響であり、その中には、肥沃な土地、森林、そして漁業の永久的な喪失、および立ち退きに供なう集落や文化の崩壊などが含まれる。これらが全て、直接事業に関わる経済的負担になることは避けられない。

大型の事業においては、これらの負担は十分把握され、意思決定過程に組み入れられる必要がある。しかし、これらの事業による損失はそれだけではない。

雲南省における大型ダム建設の影響については未だ調査されていない。しかし、その負担がラオスやタイのメコン河沿いに暮らす漁民集落にもたらされるものであるとしても、それは中国での事業における負担としてみなされなければならない。

メコン河流域において大型ダムの計画・資金捻出・建設を行なう政府および国際金融機関は、建設開始前に事業の潜在的影響及び負担についてより詳細に調査すべきである。

開発事業の潜在的なコストを評価するという意味で、地方政府や地元の集落は重要な役割を果たす。提案された事業の建設理由や方法、また運営方法が知らされることによって、集落自身が、事業によって生計・自然環境・経済および文化面での影響を予測することができる。

したがって、最終的には地元集落が、事業の潜在的損失及び便益を受け入れるかどうかの決定権を持つべきである。

この点について教訓となるのは、メコン河上流ラオスービルマおよびラオスータイ間の国境に沿った航行路建設に伴う費用便益をめぐる様々な申立である。この事業では、大規模貨物船が通過できるよう航行路を拡張するために、21の早瀬と浅瀬の爆破と浚渫が必要とされる。その環境影響評価はかなりしっかりと批判されている。批判のポイントは、メコン河における漁業やメコン流域に暮らす何百もの漁民集落への食料供給、それに経済面での事業の潜在的な影響を評価していない点である。地元の集落、なかんずくタイにおいて、特に危惧されているのはもっともなことである。

それと同時に、航行路開設事業に批判的な人たちの中には、事業による利益はタイにはもたらされず、雲南省をベースに活動する中国企業にすべての利益が行くだけだと暗に述べる人もいる。「ラオスとタイには何ら影響はない」と結論付けた環境影響評価をもじって、反対論者の中には、「ラオスとタイには何ら便益はない」と主張する者もいる。

こうした典型的な「白か黒か」「連中と我々」といった考え方は、環境影響評価や批判論者が出す声明のいくつかに明らかに見られるが、こうした考え方は、メコン河流域の人々に大きな問題を引き起こしている。

先週、メコン地域の河川流域開発と市民社会について対話するため、メコン流域国の地元集落、NGO、研究者それに政府関係者が、(タイ東北部の)ウボンラチャタニ大学に集まった。参加者たちは、「メコン河はこの地域の全ての人々が共有している共同資源である」という理解に基づいて、異なる考え方を議論した。

30〜40年前に、中国指導者第一世代にあたる周恩来と賀龍は、メコン地域のカウンターパートたちと会合を持ったことがある。その際にしばしば口にしたのは、「我々は上流に住んでいる。あなた方は下流に住んでいる。同じ水を飲んでいるのだ,親しい家族のようなものではないか」ということばだった。今日でも、このことばは、人々に非常に受け入れられる考え方であり、良好な国際関係の基盤なのである。

提案された事業の潜在的なコストと便益に対する信頼できる独立した評価、政府間や政府と人々の間での十分な情報交換、それに、対話や協同的な意思決定は、既存の問題の解決や将来起こりうる問題の防止に、大いに役立つであろう。メコン河流域の政府とそこに暮らす人々にとって、それは最低限必要である。

【執筆者のYu Xiaogang氏は、中国雲南省の環境保護NGOであるGreenWatershedの所長である】

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