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パクムンダム>世界銀行の言い分

メコン河開発メールサービス 2000年9月6日


メコン・ウォッチの松本です。タイのパクムンダムに融資した世界銀行のタイ事務所長であるシバクマー(J.Shivakumar)氏が、9月1日のバンコクポストに投稿しました。パクムンダムの当事者の1つである世界銀行が、今の状況をどう考えているのかを知る上で、参考になります。環境影響調査で漁業への影響を調べなかったという致命的な過ちをしたことを認めつつ、多くの言い訳に満ちた文章と見ることもできるでしょう。ぜひご一読下さい。原文は英語で、以下はメコン・ウォッチの福田健治の翻訳です。


<コメント>パクムン問題の根本
互いを攻撃せず、貧困に立ち向かおう

Bangkok Post, September 1, 2000

By J. Shivakumar

人々の生活に大きな影響がでて、多くが悲しいことに貧困化し、賠償を求めているというのも、パクムンダムの計画時に漁業への影響が考慮されなかったからだ。

パクムンダムをめぐる騒動の中で、多くの責任追及がなされた。非難の応酬が関係者の間を駆け巡っている。

騒動は、多くの熱気と騒音を撒き散らしたが、このダムをめぐる問題は実は貧困から生じたという事実を十分に明らかにしたとは言えない。

抗議活動のさらに多くのグループへの広がり、より広い範囲の問題の議論によって、ただダムだけではない、より深刻な問題の存在が浮き彫りになってきている。それは東北地方の貧困である。

抗議に集まった人々の多くが、タイの田舎・東北地方からやってきたことは驚きではない。東北地方には、貧困ががっちりと根を下ろしている。タイの貧困人口の10人に9人は地方に居住している。この内10人に7人が、東北地方に住んでいる(この地方にはタイの全人口の34%しか住んでいない)。東北地方は、平均の2倍の貧困という重荷を抱えているといえる。

パクムンのプロジェクトは、発電を通じて電力の消費者や国全体の役に立つ一方、明らかに多くの貧しく無防備な人々を傷つけてきた。

これはほとんど全てのダムに起こりうる結果であり、それゆえどんなダムプロジェクトにおいても、影響を最小化するための手段がとられる。

この手段の最先端は、急速に進歩している。この進歩と東北タイの貧困を見れば、パクムンプロジェクトと一体の是正措置に関する活発な議論が行われていることは驚くに値しない。

いくつかの信用できる研究によれば、直接影響を受けた人々に対する補償と移住の問題は適切に対処されてきた。健康への影響も同様である。しかし、漁業の問題はそうではない。この問題は未解決のまま残されている。

プロジェクト(の調査)では、我々がプロジェクトの影響とそれ以外の要因(例えば人口圧力、都市の公害、貧困の広がり)を区別するのに必要な、また漁民がプロジェクトによってどのように、どれだけ影響を受けたかを決定するのに必要な、漁業と漁民に関する一連のベースラインデータを用意しなかった。さらに、漁民たちが地域における漁業資源の管理について発言するための十分な機会も提供されなかった。

漁業開発の対策を作成するとき、このプロジェクトが地域の貧しく脆弱な漁民に何ができるかと、プロジェクトとは関係ない国家の当然の責務とは何かとの間に線を引くことを期待されていなかったし、また実際に線を引かなかった。

現在プロジェクトの問題点とされているもののせいで、漁業への影響は何もかもプロジェクトが原因だと非難されている。例えば、都市部の汚染が川に流れ込み川の生態の多様性を引き起こしているとか、不適切な漁業習慣が漁獲高の減少につながっているというデータもある。しかし、こうした指摘を人々に納得させるのは容易ではない。ダムはより見えやすい標的であり、論争の中心となっている。

このプロジェクトの漁業への影響に適用されたのは、10年前の環境基準である。技術は進化し、貧困に対する世界中の見解も発展した。

以前は、貧困は収入という観点からのみとらえられていた。

しかし貧困の定義は、収入の欠如だけでなく、保障・機会・コミュニティの欠如といったより測定することが困難な要因を含む方向に発展してきた。

今まさに、関係者全員が互いに攻撃しあうのをやめ、広くは東北地方の貧困に取り組み、具体的には東北地方の漁業分野を再生するという試みに参加する時である。そして、貧民が必ずこの努力に完全に参加しなければならない。

トレードオフは存在する。土地に木を植えれば、知らぬ内に隣の庭の菜園に影を落としてしまうかもしれない。しかし、全ての関係者がテーブルにつくことで、全ての人が関わる最良の解決策が見つかるチャンスが増える。

パクムン問題の関係者は、以下を目標に協同するべきである。

このグループは行動のためのグループであり、問題に対処するための専門家と資金を取り入れることができるべきである。この努力に重要なのは、人々自身の関与、透明性と定期的な進行状況報告を確実にするシステム、そして明確な行動計画である。

1980年代後半から90年代初めにパクムンプロジェクトが検討されていたとき、多くの問題が浮かび上がった。ダムの便益は負の影響とどのように相殺するのか。負の影響はどのように緩和できるのか。ダムプロジェクトを進めるかどうかを決定するどの基準を用いるべきなのか。

これらは、未だに強い感情を引き起こす難しい問題である。世界銀行と国際自然保護連合(IUCN)によって設立された世界ダム委員会は、未来に向けてこれらの問題に世界的な合意をもたらそうと現在試みている。委員会は、そのマンデートを果たそうと必死に努力している。

あらゆる関係者は、私が提案した東北地方の貧困に対処する戦略とプログラムを勧告するためのハイ・レベル委員会に完全に参加するのみならず、ダムの将来に関するより広い問題を扱っている世界ダム委員会に、支援の手を広げるべきである。

この2つのイニシアティブが、よりよい将来を我々に約束するであろう。ダムの撤去や抗議者の退去ではなく、貧困の撲滅に焦点を当てなければならない。

我々は、互いを攻撃するのではなく、貧困に立ち向かうべきである。

(J. Shivakumarは、世界銀行のタイ事務所長(Country Director of Thailand))

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