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ベトナムのダムでカンボジアに被害・続報

メコン河開発メールサービス 2000年6月22日


ベトナムで部分的運転を始めたセサン川(メコン河の支流)のヤリ滝ダムが、下流のカンボジアのラタナキリ県で大きな影響を及ぼしています。以下は、日付は不詳ですが、最近のプノンペンポストの記事です。この問題については、メコンウォッチのホームページに掲載されています(http://www.mekongwatch.org/)。カンボジアのNGOは、セサン川の生態系の回復や新たなダム建設反対などの要請をし始めています。後藤歩さんの翻訳です。


ベトナムの巨大ダムがセサン谷と人々を破壊する

プノンペンポスト

この7年の間建設中である、10億円規模のヤリ滝ダムは、カンボジアを通りメコン河へと流れるセサン川へ排水する。このダムが建設される前の、カンボジアにおける環境影響調査は全くなかった。現在、BouSaroeunが報告するように、調査は終了したが、ダムが完全に運転する前にすでに溺死や病気、環境破壊の被害が起きている。

今年初旬、カンボジアのラタナキリ県から「セサン川で多くの問題が起きており、これらの原因は上流のベトナムにおける新しいヤリ滝ダムである」という最初のレポートが出た。

セサン川沿岸に住むカンボジア人は、突然の荒波によって5人が溺れたと告げた。最も被害の大きい例で、10代の女性3人が、川を渡ろうとして溺死した事実がある。また、住民は漁業用の網や舟が流され、食糧備蓄や穀物も水浸しになってしまったと語った。

ベトナムとカンボジアの政府関係者の間で会合がもたれ、「事前通告のない放水はこれ以上起こさない」という保障がなされた。この時点で、両者ともこの問題は解決し、終了したと述べた。

しかし、今週出された報告によれば、突然の放水は、他の多数の問題の中のひとつに過ぎないということであった。

ダムの影響に関するコミュニティー・ベース調査

ラタナキリ県漁業事務所とNGOのNon-Timber Forest Products (NTFP) の共同で行われ、OXFAMにより資金を受けた「ダムの影響に関するコミュニティー・ベース調査」は、ダムは、深刻な環境・社会経済問題をセサン川下流のカンボジア、ラタナキリ県ストゥントレン県で起こしていると報告した。報告書は、現地の人々へのインタビューから、「洪水の被害を受けた死者数は5人ではなく32人であることが明らかになり、そのほとんどが子どもであった」、と述べた。

加えて現地の人々は、水質が悪化したことに気付いてからの、過去4年の間の病気による死者数は952人である、と報告した。

ワークショップの開催

5月下旬にには、ダムの影響を話し合うために、TonleSanに住む少数民族グループの代表者と現地・国際NGO、県関係者が参加して2日間のワークショップが開かれた。

セサン川沿いで影響を受けた場所に住む人々の大部分は、少数民族である。ワークショップに参加した彼らの代表は、川を元通りにしてくれるよう要求した。

「私は、セサン川が自然の状態に戻ってもたいたい」、とダムからもっとも近い、O'Yadao区・SeSanコミューン・Phi村のLamas Voenは語った。

「私たちは4年間も洪水に苦しんできたのです。もうどうしたらいいのか分かりません。次に何が起こるのか、ただ座って待つのみです。(ダム建設者は)私たちの生活がいかに大変か考えるべきです」。彼女は、川の水は昔は乾期でさえも透明であったのに、今は常に汚く人間と動物にとっては健康に悪すぎて飲めないと、文句を言った。川を元に戻すようにという要望は、現金補償などの要求よりもずっと強かった。

「もしも彼らが補償をするのなら、一生を通して補償できるというのですか?それは不可能に見えるし、私たちの孫子はどうなるのです?彼らはどうやって生きていくのです?私たちは昔のセサン川が戻ってきてほしい。そうすれば魚を獲れるし、昔のように活動ができる」。

調査によれば、水質は1996年以来非常に悪化している。下流に流れてくる川は赤い色をしており、ドロドロでよどんでおり、悪臭を漂わせている。

健康への被害

報告書は水質による健康への影響を量ることはできなかったが、川沿いに住む人々は変化が明らかになると健康状態の急速な悪化を訴えた、と記している。

現地の人々は激しいかゆみと皮膚の腫れと感染、そして目の刺激を訴えた。その他にも、水位の突然の上昇と時期を同じくして起きた健康上の諸問題を訴えた。これらには、腹痛、下痢、呼吸障害、喉と鼻の刺激、めまい、嘔吐と咳が含まれる。多くの人々は、家族が病気になってから1−5日で死んでいると報告した。

会議でVenSay地区のKachot村を代表した、少数民族Kachok族のBouOn(58歳)は、水質悪化の結果、健康状態の悪化に苦しんだと述べた。彼女はかゆみ、下痢、嘔吐と恒常的な咳を訴えた。「私は水質について嘘は言っていません。本当です」と彼女は体の症状を見せながら言った。「以前に比べて水質は大きく変化したことは確かです」。村人はさらに、水が彼らの家畜に及ぼした影響についても主張した。

家畜への被害

AndongMeas地区・Nhangコミューン・Kachot村の少数民族Kachok族のSala Kwekは、ダム建設が始まってから彼の村は何百もの水牛と牛を失い、時々一日に20から30頭死んだと言った。

調査によれば、村人は水質問題が始まった1996年以来、4900頭以上の水牛と牛が異常な病気で死んだと訴えた。同じ様な突然の家畜の病気がセサン川から離れた場所で記録され、そして、それはセサン川で水質が悪化し始めたのと同時期に起こっていた。

CARERE関係者は、家畜への健康悪化とダムとの関連を明確にするのは難しいと述べた。

村人は今でも、セサン川の水質が家畜へ被害を及ぼしたと確信している。スウェーデンのランド大学の、湖・沼・流水の専門家Dr.Lena Voughtは、諸問題は、ヤリ貯水池からの毒性の青緑の藻がセサン川を汚染していることと関係があるのではないかと提起した。

ラタナキリにおいて、セサン川の水に関する詳しい調査がまったくなされなかったことから、この仮説を証明するのは難しい。しかし、もし青緑の藻がこれらの問題を起こしているのなら、諸問題は、草木の腐敗から過剰に栄養分を出して藻の大発生を起こしているヤリ貯水池で発生し始めているのだろう。

Dr. Voughtは調査の中で、「青緑の藻により汚染された水が家畜に死をもたらす例は他にもいくつかある」」と述べている。

動物への被害

ラタナキリ県は、カンボジアの中でも野生動物の多くいる場所のうちの一つである。しかし、ここの動物も、セサン川の水質や水生態系の変化で深刻な打撃を受けている。

セサン川北部のTaVengとVenSay地区のVirachey国立公園では、は虫類、ほ乳類、鳥類が通常より高い確率で死に、病気にかかっている。セサン川沿いの多くのコミュニティーは、ここ何年かの間に村の近くで野生動物が死んでいたということを報告した。村人の多くは、野生動物はセサン川へ水を飲みに降りていき、その直後に死んだと信じている。最も被害を受けている種類はイノシシ、バーキング・ディアー、サンバー・ディアーである。加えて、ジャコウネコ、ヤマアラシ、そしてねずみ、りすなどのげっし動物が森で死んでいるのが発見された。ベトナム国境近くのO'Yadao地区の人々は、過去数年にセサン川の近くで10頭のガウル(インド野牛)の死体を発見したと報告した。

魚・食料不足

水質の変化は、さらに、魚の生息地や個数にも打撃を与えていると信じられている。魚の数は明らかに激減した。村人は、30%にまで落ち込んだと見ている。また、その地区では4年間の不定期の洪水が深刻な食糧不足をもたらしている。セサン川沿いに植えられていた乾期の作物は、ダムの放水により起こる波によって流されてしまった。現地の人々は、生きるためには野生のイモや塊茎類に頼らざるを得なくなっている。

「私たちには食べるお米がありません。どうにかイモとたけのこ、バナナを混ぜたお粥でしのいでいます」とBou Onは言った。彼女は、prahokのような、採取して保存しておくような食物は、魚数の減少からすでに困難だと言った。SeSanコミューンの副代表のSal Kwayは、乾期の予想外の水位上昇に左右されるため、また種を無くしている余裕などないため、村人が作物を植える計画をたてたれなくなっている状況を説明した。

Tavengコミューン委員会のTo Peav50歳はKwayのコメントに加えて、人々が食料を探し回るために長い距離を歩くことを余儀なくされていると述べ、雨期に米が無くなった時に頼っていた塊茎類とキャッサバが、過度の洪水でダメにされてしまったと語った。Peavは、政府が「国の発展」のために、山岳民族を山から降ろしてセサン川沿いに移住するよう、無駄なアイデアで説得したことに失望している。「食糧が無い状態でどうやって国の発展を望めるのですか?」「私たちは国が発展してほしいと思っています。ただ、米が作れない、畑を耕せない状態でどうやってできるというのですか?」。彼は、人々は発展を考える前に毎日の食糧が必要であると語った。

セサン川沿いの村の食糧不足は、今年特に深刻であった。低地は洪水による被害を受け、高地の焼き畑は1999年の早い時期の雨量による悪影響を受けた。よって、去年以来ほんの少しの米が備蓄されたのみだった。

VenSay地区のKoPiak村やPakKalan村など、これまで米の余剰分があった村でも、現在生存ラインより下のレベルにある。

加えて、調査は、村人が従来集めて食べていた約14種類の植物は過去数年間で非常にたくさん減った、と述べている。

タバコ栽培への被害

川岸沿いに村人がもっともよく植えていたタバコは、今では育てることはできない。

Tom Pong Roeung Thom村のVat Chrang30歳は、タバコ栽培を諦めなければならなく、非常にガッカリしていると述べた。「私は米よりもタバコを重要に思っています。もしタバコがないのなら、畑仕事をするエネルギーがありません。タバコは私の最初のエネルギーです」と述べた。

砂金の選り分けが不可能に

セサン川沿いに住んでいる人々の、最も重要な乾期の職業の一つは砂金の選り分けである。それは、川岸に金がふんだんにあるAndong Meas地区とO'Yadao地区で特に重要であった。

現地の人々は、数年の米の不足から、金の選別で得た資金で米を買っており、また水牛や牛を買いたいときは、金がその主な資金源であった。

59人の調査のうち47人は、ダムの水位の変動が起こるまでは砂金の選別を行っていたと述べた。流域の上流では、川の氾濫への恐れられ、人々は選別を行わなくなった。下流では、金を見つけるために掘っていた川底の穴が、水位が上がると沈泥でふさがってしまうことから、選別を行わなくなった。

焼き畑農業へ

セサン川の不規則な水流パターンは、山岳民族を彼らの伝統的な焼き畑農業へと舞い戻らせている。Sal Kwayは、セサン川沿いでの生活は、ここ数年困難なものになっていると、述べた。彼らは(セサン川沿いの)村を見捨てたいが、政府の方針に反するだろうと慎重になっている。「セサン川沿いに住めば洪水の被害にあい、もし山へ住めば政府の政策に反することになる。どうやってこの問題を解決すればいいのか分かりません」と彼は言った。

Vat Chrangの答えは、2つの人生を生きようとしていることを表す。彼は山で米を作るために木々を伐採し、しかしセサン川沿いの村に住む。彼は、畑が市場から遠く、片道2時間もかけなければならないため、今の状況は望ましいものではないと述べた。

調査によれば、セサン川沿いに住む他の村人も同じ様な方法を取っている。例えば、Hat Pok村からの20のラオス人家族は、彼らの村を遠く離れた高地で焼き畑農業を始めている。Ven Say地区の、他の2つのラオス人コミュニティーのPong村とFang村では、ほとんどの人々が村の後ろの土地で焼き畑農業を始めている。ただ、彼らは焼き畑農業の経験はほとんどない。

Pong村の人々によれば、その結果村の後ろの土地はすべて平らになってしまい、また彼らは自分たちは高地の農民のように(焼き畑農業の)手法については精通していない、と認めている。

しかし、調査チームにより質問を受けた多くの村長は、「村を見捨てて山へ帰り、森林を焼き、土地が痩せるまで耕作し、移動するという、先祖代々の農業を営む以外に選択肢はないと感じている」と述べた。

精霊の怒り

調査は、ラタナキリ県のセサン川沿いに住む人々は、多様なエスニック・グループに属し、文化的相違点が多くある、と述べている。

しかし、大部分が仏教徒のラオス人と中国人以外は、ラタナキリ県のセサン川沿いに住む土着の人々は、自然と精霊への精神的つながりの強い精霊信仰者である。彼らは、洪水と水質汚染は森林の霊が怒っているからだと理由づけている。

プノンペン・ポストのインタビューを受けたBouOnと他のワークショップ参加者は、「ベトナムのヤリ滝ダムの建設について知るまでは、精霊が怒っていると思っていたが、その理由が分からなかった」、と述べた。

「精霊の怒りを鎮め、私たちを救ってくれるように私はニワトリを生け贄にし、時々村人は水牛や牛を生け贄に捧げていたが、何も変わらなかった」と彼女は語った。

インタビューを受けた多くの人々は川が突飛に流れを変え始めるまでヤリ滝ダムの事を知らず、川の状態を精霊のせいだとしていた。今、ダムの存在を知ったが、それでも精霊がすこしは絡んでいると考える傾向にある。

Ven Say地区Kachon Kroam村のTampuan族の女性の一人は、セサン川沿いに住んでいる人々がダムによってこれほどまでに苦しんでいる理由について、霊的な説明をした。「水の霊と木の霊が人間に対して怒っているのだと思います。ベトナム人が、水の霊の通り道を遮り、ダムが貯水池付近にある巨木を水浸しにしたのです。よって、水の霊と木の霊の両方が怒っているのです。ベトナム人が貯水池から下流へ放水した時、それはまるで怒りの精霊を私たちに向かって放ち、精霊が病気や死を私たちにもたらしたかのようなのです」。

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