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ベトナムとカンボジアを流れ、ベトナム政府やアジア開発銀行などが大きな水力発電ポテンシャルを持つとしているセサン川には、24のダム建設に関する調査が終了しています。すでにベトナム側でヤリ滝ダムが建設中ですが、このダムの貯水池の閉門と放水は川の水量に大きな変動をもたらしており、下流のカンボジアで深刻な環境・社会経済上の被害を招いています。それにも関わらず、セサン川には現在アジア開発銀行主導のもと、セサン3水力発電ダムを始めセサン 4A, Plei Krong Low、Upper Kontumなどの水力発電プロジェクトが 次々と計画されています。
ベトナム中部高地から発してカンボジア北東部まで流れるセサン川に、1993年11月、ロシアとウクライナの援助によってヤリ滝ダムの建設が始まりました。建設地はカンボジアの国境から70 km離れた場所で、720MWの発電能力を見込まれています。しかし、現在まだ完成していないにも関わらず、一部運転し始めており、ヤリ滝ダムからの放水がセサン川の水資源と生態系に影響を与え、カンボジアにも被害を及ぼしています。2000年3月にはこのヤリ滝ダムの貯水池から突然の放水があり、6人が溺死しました。ベトナム政府は、これまでカンボジア政府とセサン川開発について対話を持っておらず、このように十分な警告をされない放水が下流域住民の恐怖となっています。
また、ラタナキリ県漁業事務所とNGOのNon-Timber Forest Product(NTFP)の共同で調査された「ダムの影響に関するコミュニティーベース調査」は、川沿いに住む人々は健康の急速な悪化を訴えたと報告しています。現地の人々は激しいかゆみと皮膚の腫れと感染、そして目の刺激を訴えました。その他にも腹痛、下痢、呼吸障害、喉と鼻の刺激、めまい、嘔吐と咳などが確認されています。これらはヤリ滝ダムにより引き起こされたと考えられている水位の急激な上昇と時期を同じくして起こっているのです。
ヤリ滝ダムは電力需要のピーク時に発電される仕組みになっているため、下流へ波状的に放水します。この水の流れは、これまでの流れから保たれていたセサン川の生態系や、栄養分の濃度を大幅に変化させています。さらに、この放水によって広大な範囲で畑・水田への被害が出ていたり、森が死滅したり、水質の悪化、魚介類・漁業への害がおこっているなど、カンボジア側のセサン川沿岸に住む人々の生活が脅かされています。これらの被害に対する補償も十分になされていません。
ヤリ滝ダムによる被害が次々と出ているにも関わらず、ベトナム政府とアジア開発銀行はセサン3ダムの計画を押し進め、1999年7月、アジア開発銀行が260MWの発電能力を持つセサン3ダムの建設へ技術支援の贈与を行うことを決めました。アジア開発銀行によると、セサン3ダムは「環境・社会的インパクトが低いプロジェクト」とされています。しかし、環境影響調査(EIA)はベトナム側でのみ行われ、カンボジアでの影響は全く考慮されていません。もしも、セサン川にヤリ滝ダムの他にもう一つダムを建設する場合、水中の堆積物が大部分流されてしまいます。ここに波状的な放水が重なると、ダム下流の侵食を増加させ、侵食の度合いでは氾濫原・湿地原の水環境を大幅に変えてしまうことが懸念されています。
また計画では、ヤリ滝ダムの放水に対応するかたちでセサン3ダムも放水量を調節することになっています。しかし、電力の需要ピーク時にはヤリ滝ダム同様、波状的に放水するのではないかという懸念がなされています。さらに、既に建設中のヤリ滝ダムの引き起こしている被害の増幅も引き起こすでしょう。地域の自然資源に大きく依存して暮らしている人々は、これらのダムの建設で生活基盤を壊されています。
アジア開発銀行によるセサン3ダム建設への融資はまだ承認されていません。アジア開発銀行はセサン3ダムの建設の承認はしていません。ADBの融資プロセスにも多くの矛盾点があり、影響を受けるカンボジアの住民、NGOがヤリ滝ダムを撤去し、これまでの被害への補償をし、セサン3ダムも建設を中止するよう異議を申し立てています。